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実験の背景と目的


生物は重力の影響をあまり受けない水中で進化してきました。 ところが、これらの生物の中から植物がはじめて数億年前に陸上に進出しました。 植物が進化して陸上で生活できるようになった理由はいくつかあります。



一つの理由は、植物が情報として重力を利用するとともに重力環境に適応することができたからです。 すなわち、植物は根を地下に伸ばして水分と栄養分を吸収し、茎を上に伸ばして葉で光合成を行っています。 根や茎の伸びる方向を決めるために重力の情報が利用されています。 また茎の細胞壁を丈夫にすることによって自分の重みで茎が倒れないようにしています。



それでは重力のない宇宙で植物はどう成長するのでしょうか? 地上と同じように種子から芽が出て花が咲いて、次の世代の種子ができるでしょうか? 植物の生活環(ライフサイクル)に重力がどのような役割を果たしているかは、現在、各国が宇宙で競って実験を行っている状況です。



シロイヌナズナは種子から発芽し、次の世代の種子がとれるまでに約60日間と、そのライフサイクルが短いことが特徴です。 また、この植物は高等植物の中で最も早く全ゲノムが解読されました。 その結果、ライフサイクルに対する重力の影響を遺伝子レベルで解析することが可能になりました。



この宇宙実験では、シロイヌナズナのライフサイクル、つまり葉や茎の成長・受精・胚発生・種子形成、に対する重力の影響を形態変化とその背景にある遺伝子の働きの変化に注目して調べます。 また地上に持ち帰った‘宇宙種子’を発芽させて成長を観察します。

図1 シロイヌナズナの成長の様子
(地上実験)

0日から42日、植物実験ユニットで栽培したもの

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