細胞壁が「緩む」タイミングとそのメカニズムを解明
生育開始後4日目から5日目にかけて芽生えは急速に成長してほぼ2倍の長さになりましたが、人工重力条件と無重力条件では成長に差は見られませんでした。
細胞壁の力学的性質を調べた結果、無重力条件で育てたイネの細胞壁は、人工重力条件のものに比べて強度が下がり「緩んだ」状態であることが示されました。
細胞壁の構成成分は、各成分ともに4日目から5日目にかけて大幅に増加しました。4日目には、各成分とも人工重力条件と無重力条件の間で差は見られませんでした。5日目は、フェルラ酸は人工重力条件と無重力条件で差はありませんでしたが、ジフェルラ酸は無重力条件で低下していました。次に、酵素の活性を調べた結果、細胞壁中においてフェルラ酸の結合に関わる酵素(細胞壁ペルオキシダーゼ)の活性が、無重力条件で低下していることが示されました。
以上の結果から、無重力条件では、細胞壁ペルオキシダーゼの活性が低下してフェルラ酸の結合が減ることでジフェルラ酸を介した細胞壁内橋渡し構造の形成が抑制され、これが細胞壁を「緩んだ状態」として強度を低下させた一因になっていると考えられます。
このように、植物が生きていくのに必須の構造体である細胞壁が作られるメカニズムを解明するための重要な知見が得られました。
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