海から陸に進出する過程で、生物は1Gの重力に対してその体を支える必要が生まれました。
動物は骨や筋肉を発達させました。植物ではこの骨や筋肉にあたるものが「細胞壁」です。
また細胞壁は、病害虫や微生物の侵入を防ぐと共に、水や養分の吸収やその輸送にも関係しており、植物にとって非常に大事な構造体なのです。
では、微小重力の宇宙ステーションに行ったときに、この細胞壁はどう変化するのでしょうか。
この実験では、単子葉イネ科植物の代表であるイネを使います。
近年、多くの研究でシロイヌナズナが材料として使われていますが、シロイヌナズナは双子葉植物であり、単子葉イネ科植物と双子葉植物では、細胞壁の構造・成分が違っているのです。
シロイヌナズナなど双子葉植物の細胞壁中では、セルロースという鉄骨に相当する物質の間をキシログルカンと呼ばれる物質がつないでいます。
しかし、イネ、トウモロコシ、コムギなどの単子葉イネ科植物にはキシログルカンはほとんどありません。
イネ科植物の細胞壁中では、セルロースの間をつなぐ役割をするものは、β−グルカンやアラビノキシランという物質です。
この実験では、イネの細胞壁内に多く存在するアラビノキシランと、アラビノキシランに結合している「フェルラ酸」という物質に注目しています。
フェルラ酸は、2つ結合すると「ジフェルラ酸」というものになります。
このジフェルラ酸がアラビノキシラン分子の間を橋渡しすることで、セルロースの間をつなぐ力が強くなると考えられています。
この補強材のような「フェルラ酸」という物質が、宇宙で変化をするのではないかと考えているのです(図1)。
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図1 フェルラ酸とセルロース
イネの細胞壁では、鉄骨のようなセルロースの間をつなぐ役割をするのはβ-グルカンやアラビノキシランという物質。
さらに、そのつなぐ力を強める「フェルラ酸」「ジフェルラ酸」という物質が、宇宙で変化をするのではないかと考えている。
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