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「きぼう」での実験

「きぼう」日本実験棟において、カイコの卵を用いる宇宙放射線の生物影響実験が開始されました

最終更新日:2009年11月19日

※日付は日本時間

11月17日夜、「きぼう」日本実験棟の細胞培養装置(CBEF)を使用して実施する、宇宙放射線の生物影響実験(RadSilk)※1が開始されました。

※1 カイコ生体反応による長期宇宙放射線曝露の総合的影響評価
(代表研究者:古澤壽治 京都工業繊維大学名誉教授)


11月17日(火)21時18分、RadSilk実験が開始されました。

この実験の大きな目的は、カイコの卵を休眠状態で宇宙に持って行き、発生の初期段階での宇宙放射線の影響(体細胞突然変異や奇形の発生、宇宙放射線被曝による遺伝子の発現変化)をみることです。

このため、越冬状態(休眠という)のカイコ卵を国際宇宙ステーション(ISS)に搭載し、休眠から醒めた胚を宇宙で発生させます。
その理由は、これまで地上で行われた実験から、胚発生の初期段階(休眠覚醒後2~5日間)では、放射線の影響が大きいことが明らかになっているからです。

ISSでの実験後、地球に帰還した卵からふ化してきた幼虫を人工飼料で飼育します。そして、体細胞突然変異の発生頻度を、地上で保護してきた対照卵からのものと比較します。これは、宇宙放射線と突然変異の発生との関連を明らかにするとともに、次世代への影響についても検討するものです。

さらに、ISS内での胚発生に各種の遺伝子が発現しますが、特にp53遺伝子※2の発現と宇宙放射線との影響についても検討します。

ISS内での実験は、11月23日(月)まで実施する予定です。

※2 p53遺伝子...細胞の増殖を止めたり、アポトーシス(プログラム細胞死)を起こしたりする遺伝子。がん抑制遺伝子の一つである。細胞の守護神とも言われている。


【代表研究者 古澤名誉教授のコメント】

カイコ卵を用いた放射線被曝による突然変異検出法の確立、胚発育中の放射線感受性時期の探索など、地上実験予備実験を繰返してきた。これに加え、幾度かのシャトル打ち上げ延期があったが、その都度カイコを飼育し、サンプル卵を準備してきた。
ついに8月29日に卵が打ち上げられ、引き続き、本日(11月17日)ステーション内での実験が開始された。

これまで放射線医学総合研究所を初めとして数多くの先生方にお世話になり、この日を迎えることができた。心よりお礼申し上げます。

あと2週間すると卵が帰還するが、3カ月間の宇宙放射線影響、胚発生に与える微小重力影響などの解析が始まる。RadSilkメンバーの活躍にご期待下さい。


筑波宇宙センターの実験管制室で実験開始の様子をモニタする共同研究者の杉村順夫教授と長岡純治助教

筑波宇宙センターの実験管制室で実験開始の様子をモニタする
共同研究者の杉村順夫教授(京都工業繊維大)と長岡純治助教(同)


RadSilk実験紹介ページ:カイコ生体反応による長期宇宙放射線曝露の総合的影響評価

 
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