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「きぼう」船外の宇宙放射線環境を実測する「Free-Space PADLES」実験が、2015年6月1日よりはじまりました。
この実験は、我が国が独自に開発した受動型線量計「PADLES」を船外実験用に改修し、「きぼう」ロボットアームの先に取り付け、2週間程度、軌道上400㎞の宇宙放射線環境を計測するものです。この実験と同時並行で、「きぼう」船内実験室に設置された線量計(Area-PADLES)が船内の宇宙放射線の定点計測を行っており、その比較解析によって「きぼう」の船壁がどれくらいの遮蔽能力を持つのか、他のISS参加宇宙機関に先駆けて、より詳細に評価することになり、その解析結果は、宇宙放射線に対する遮蔽・防護技術を構築するうえで、非常に重要なものとなります。
PALDES線量計は、宇宙機関間でも信頼性が高く評価された線量計で、多くの国際共同実験に参加しています。この実験で得られる成果は、船外宇宙活動をする宇宙飛行士のリスク評価や有人宇宙船や居住モジュールの宇宙放射線に対する船壁厚の遮蔽評価や最適化検討にとって重要な基礎データを与えます。
PADLESは、JAXAが早稲田大学と日本大学を中心に考案された測定手法を宇宙用に改良し、その後、高エネルギー加速器研究機構と放射線医学総合研究所との協力を得て、測定・解析のシステム化・自動化を行った純日本製の線量計と高速高精度線量解析システムです。
PADLES線量計には、固体飛跡検出器(CR-39)と熱蛍光線量計(TLD)の2種類の素子から構成されており、アルミヒートシールバッグに封入されています。通常、酸素分圧の変化が生じる真空環境下では、PADLES線量計は正確な線量計測ができません。そこで、本実験では、曝露環境での正確な被ばく線量が測定できるように、長期間1気圧に保持可能なドーム型のアルミニウムケース(φ6.4cm)を開発しました。
このアルミニウムケースとその中に設置されたPADLES線量計や温度センサーを総称して、Free-Space PADLES線量計と呼んでいます。
アルミニウム製ケースは、厚さ0mm(ケース無し)、0.3mm、0.6mm、0.9mm、1.2mm、1.5mm、2.0mm、3.0mm、4.0mmの9種類を変えることによって、宇宙放射線の遮蔽厚に対する線量減衰データも取得することができます。
曝露環境に線量計を出すのは初めての試みです。PADLES線量計の素子の一部は、1気圧下でなければ正確な測定ができません。
1気圧に保つためにケースに入れなければいけませんが、曝露環境の真空環境に耐えられるように厚く頑丈なケースにいれてしまうと、船内と同じ遮蔽された環境になってしまいます。「曝露環境と同じ遮蔽環境になるように可能な限り薄く、薄く。真空環境に耐えられる強い構造に。」と矛盾する要求へのチャレンジが始まりました。可能な限りケースを薄くする加工技術の検討、真空に耐えられる構造の評価および多くの真空試験、想定される熱環境の変化にさらす試験を経て、Free-Space PADLES線量計ケースが完成しました。
Free-Space PADLES線量計は、2015年4月15日にドラゴン補給船運用6号機でケープカナベラル空軍基地から打ち上げられ、2015年5月14日にISS/「きぼう」船内でスコット・ケリー宇宙飛行士によって「きぼう」エアロックのスライドテーブル上の親アーム先端取付型実験プラットフォーム(Multi-Purpose Experiment Platform: MPEP)に取り付けられました。その後、スライドテーブルをエアロック内に収納し、減圧が完了しました。
2015年6月1日に「きぼう」船内から船外の曝露環境へ、Free-Space PADLESを搭載した親アーム先端取付型実験プラットフォーム(Multi-Purpose Experiment Platform: MPEP)が搬出されました。サマンサ・クリストフォレッティ宇宙飛行士がスライドテーブルを船外に伸展させた後、筑波宇宙センター管制室からの地上操作により、「きぼう」ロボットアーム(JEM Remote Manipulator System: JEMRMS)でMPEPを把持し、あらかじめ計算解析により評価した宇宙放射線計測に最適な姿勢場所に移動後、姿勢を保持したまま約2週間、船外環境の宇宙放射線計測が行われます。 宇宙放射線実験終了後、Free-Space PALDESは地上に回収されます。回収・帰還後、筑波宇宙センター内の実験室で線量解析が行われる予定です。
「きぼう」船内でもPADLES線量計を使った様々な実験が、「きぼう」モジュール打上げと同時に、2008年から始まっています。
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