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国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟で行われた第2回マウス長期飼育ミッションでは、30日間の飼育を行い、12匹全個体を帰還させました。マウスの動きや外観に異常は見られませんでした。これは第1回マウスミッションに続く快挙となります。
第2回ミッションでも世界でJAXAだけが所有する遠心機能付き飼育装置を使用して、6匹のマウスを飼育しました(人工重力群)。この群のマウスは地上と同じ重力がかかった状態ですが、対照となる6匹は微小重力で飼育を行いました(微小重力群)。人工重力群と微小重力群のマウスを比較して、重力の生体への影響を検証します。また、今回は両群とも半数3匹のマウスに腸内細菌叢に効果があるフラクトオリゴ糖(FOS)入りの餌を与え、その効果の検証も行っています。
宇宙で飼育したマウスが9月18日に地上に帰還して1か月が経過しました。今回はFOSを含まない餌を摂取したマウス6匹(人工重力群3匹、微小重力群3匹)の解析結果を速報でお伝えします。
(1) 微小重力において体重は減少する(理化学研究所チーム)
ISSに運ぶ直前に、地上でマウスの体重を測定し、ほぼ同じ体重の個体を選んで、ISSへ運びました。地上に帰還した後にマウスの体重を測定し、ISSへ運ぶ前と比較したところ、人工重力群では帰還時に体重が増加していましたが、微小重力群では帰還時に減少していることがわかりました。この結果はJAXAから最近論文として発表された、第1回マウスミッションの結果と一致しています。
マウス | 帰還時の体重 |
---|---|
人工重力群 | 打上げ時より4-8%増加 |
微小重力群 | 打上げ時より1-7%減少 |
(2) 微小重力においてヒラメ筋は萎縮し、タンパク質の発現が変化する
(横浜市立大学チーム、理化学研究所チーム)
ヒラメ筋はふくらはぎに存在する抗重力筋で、ISSに滞在した宇宙飛行士で細くなることが知られています。今回、マウスのヒラメ筋を調べたところ、微小重力群では人工重力群より細くなっており、重量は人工重力群の約90%に減少していることがわかりました。第1回マウスミッションでも同程度の筋萎縮が観察されました。
そこで、ヒラメ筋のタンパク質を網羅的に質量分析法で解析したところ、1,173種類のタンパク質の発現が確認されました。その中で、微小重力群において発現が2倍以上に上昇したタンパク質は87種類、1/2以下に低下したタンパク質は41種類あることが明らかになりました。現在、これらのタンパク質と微小重力との関係を検証しています。
微小重力群における発現量の変化 | タンパク質数 |
---|---|
2倍以上に増加 | 87 |
1/2以下に減少 | 41 |
今後は免疫系を中心としたFOSの効果を解析予定です。また、宇宙飛行士の血液等のサンプルの解析も進行中であり、マウスミッションの結果と統合して、宇宙環境が生体に及ぼす影響、人工重力の効果を検証する予定です。
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