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●研究成果
骨量減少の原因解明は、地上での老人性骨粗鬆症の予防や、長期の有人宇宙探査における重要な課題だ。その解明には、培養細胞のみならず生物個体としての機能を調べるべく観察・解析が重要で、この研究領域は世界的にも注目されている。
老人性骨粗鬆症では、寝たきりになった直後から急激に骨量が減少することが知られている。また宇宙飛行士の骨量は無重力にさらされた直後から1ヵ月以内に急激に減少することがわかってきており、無重力に対する生物体内の初期応答の解明が急がれている。
工藤教授の研究グループのメンバーである茶谷昌宏助教(現・昭和大学)らは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)等との共同研究で、osterix-DsRed/TRAP-GFP(注1、2)など、計4種類の骨関連遺伝子で改変したメダカを対象に国際宇宙ステーションの「きぼう」・日本実験棟で飼育を行った。今回は、容器のジェルの中に孵化直後のメダカを飼育し、8日間連続撮影を行った。このメダカは、改変した骨関連遺伝子のプロモーターが働くと蛍光発光する。実験データを解析した結果、骨を形成する細胞である骨芽細胞と骨を壊す細胞である破骨細胞で特異的に発現する蛍光のシグナルが、無重力にさらされた1日後から大きく上昇し、8日間その発現上昇が維持された。また、無重力にさらされた2日後の遺伝子発現を調べたところ、骨関連遺伝子の他に5つの遺伝子、c-fos, jun-B-like, pai-1, ddit4, tsc22d3の大幅な発現上昇を明らかにした。
個体レベルで解析できる生物(メダカ)を用い、無重力への生物個体の初期応答の一端を示した世界で初めての成果である。
●軌道上実験
2014年2月に無重力への骨代謝の初期応答を調べる実験を「きぼう」で行った。これは4種類の遺伝子改変メダカを用い、生きたままのメダカを8日間連続で蛍光顕微鏡観察する実験である。無重力下での骨芽細胞、破骨細胞の動態をリアルタイムで観察した。研究グループは、地上で右図1のようにしてジェルの中に生きた状態で孵化直後の遺伝子改変メダカを飼育した。そして、国際宇宙ステーションに輸送されたメダカの画像を、宇宙空間で下図3のようにして取得。「きぼう」日本実験棟内では若田光一JAXA宇宙飛行士によって、メダカが入った容器が蛍光顕微鏡内に設置され、その後の観察は日本の筑波宇宙センターの遠隔操作で行った。
このライブイメージング成功には以下の3条件が必要で、一つでも欠けると実験系は成り立たない、無重力下における骨リモデリング(骨が削られ、それを埋めるように骨が形成される)の観察実験系である。
この実験系で判明したことは、(ア)孵化直後は卵黄嚢が大きく残っており、餌がなくてもジェルの中で1週間以上の飼育が可能である。(イ)打上げの際に5Gの加重がかかるためジェルの中の魚は全て腹側を下へ向ける。(ウ)腹側からのみ咽頭歯骨(注3)の観察が可能で、メダカにおいて破骨細胞と骨芽細胞は、孵化直後という発生初期段階から骨リモデリングを開始している。
●実験に供したメダカ
骨量減少の原因解明のための研究には、ヒトやマウスなどの哺乳類と異なり、体が透明で生きたまま体外から骨の様子を観察しやすく、また細胞の動態を蛍光で観察できる遺伝子改変メダカが有効である。工藤教授の研究室では、骨芽細胞と破骨細胞の様子を同時に生きたまま観察できる遺伝子改変メダカを確立し、今回の実験に用いた。
2012年に行われた長期飼育実験で、無重力下においてメダカの骨量が減少することがすでに明らかになっている (Chatani et al, Sci. Rep. 5:14172, 2015)。
●今後の展開
新たに見つかった無重力の応答に関与すると思われる5つの遺伝子について、その分子機構の解明を行い、老人性骨粗鬆症への関与を明らかにする。
(注1)osterix: 骨芽細胞の分化制御を代表する転写因子。
(注2)TRAP: 酒石酸抵抗性酸ホスファターゼのことで、破骨細胞マーカーの一つとして用いられる。
(注3)咽頭歯骨:メダカののどの奥に500本以上ある咽頭歯を支える骨。歯の再生に伴ってこの骨が再生され、古い骨の上に破骨細胞が存在し、骨吸収を行っている。
雑誌名: Scientific Reports
論文タイトル: Acute transcriptional up-regulation specific for osteoblasts/osteoclasts in medaka fish immediately after exposure to microgravity
著者: Masahiro Chatani,1,✝ Hiroya Morimoto,1 Kazuhiro Takeyama,1 Akiko Mantoku,1 Naoki Tanigawa,2 Koji Kubota,2 Hiromi Suzuki,3 Satoko Uchida,3 Fumiaki Tanigaki,4 Masaki Shirakawa,4 Oleg Gusev,5,‡ Vladimir Sychev,6 Yoshiro Takano,7 Takehiko Itoh,1 and Akira Kudo1
1 Graduate School of Bioscience and Biotechnology, Tokyo Institute of Technology, Yokohama 226-8501, Japan
2 Chiyoda Corporation, Yokohama 220-8765, Japan
3 Department of Science and Applications, Japan Space Forum, Tokyo 101-0062, Japan
4 Japan Aerospace Exploration Agency, Tsukuba 305-8505, Japan
5 Institute of Fundamental Medicine and Biology, Kazan Federal University, Kazan 420008, Russia
6 SSC RF-Institute of Biomedical Problems RAS, Moscow, Russia
7 Section of Biostructural Science, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo 113-8549, Japan
✝Current address: Department of Pharmacology, School of Dentistry, Showa University, Tokyo 142-8555, Japan
‡Current address: RIKEN Innovation Center, RIKEN, Yokohama 230-0045, Japan
論文のWebサイト; http://www.nature.com/articles/srep39545
DOI: 10.1038/srep39545
(関連リンク)
(研究全般に関するお問い合わせ)
東京工業大学 生命理工学院 教授
工藤 明(くどう あきら)
E-mail: akudo@bio.titech.ac.jp
TEL: 045-924-5718 FAX: 045-924-5718
(「きぼう」を使った水棲生物実験に関するお問い合わせ)
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 広報部
TEL: 050-3362-4374 FAX: 03-3258-5051
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