このページは、過去に公開された情報のアーカイブページです。
<免責事項> リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。また、現在のWebブラウザーでは⼀部が機能しない可能性があります。
最新情報については、https://humans-in-space.jaxa.jp/ のページをご覧ください。
2008年12月8日、一橋記念講堂(東京都千代田区、学術総合センター2F)にて、第29回宇宙ステーション利用計画ワークショップ 「きぼう」利用が始まったを開催し、約350名の皆様にご参加いただきました。
今回のワークショップでは、まず初めに、「きぼう」日本実験棟の現状や今後の実験の予定などについて、映像による紹介が行われました。
その後、人類史的視点からの有人宇宙開発への今後の期待をテーマとした特別講演や、2009年5月以降に打上げが予定されている、「きぼう」船外実験プラットフォームおよび船外実験装置を紹介するプログラムが行われました。最後に、国際宇宙ステーション(ISS)および「きぼう」の利用により今後期待される科学成果や、日常生活に密接した利用成果を紹介するプログラム、宇宙医学研究がどのように地上の生活で役立てられようとしているかをテーマとした対談などが行われました。
2008年3月の「きぼう」日本実験棟船内保管室の打上げ、同年6月の船内実験室の打上げによる「きぼう」の組立て状況、2008年8月22日から開始された「マランゴニ対流におけるカオス・乱流とその遷移過程」など「きぼう」で行われた実験の内容、今後の実験の予定などについて、映像による紹介が行われました。
国立天文台の海部宣男名誉教授から、世界の有人宇宙活動40年の歴史と、これからの40年の活動予測、ISSからの宇宙観測に期待される成果についての講演が行われました。講演の中で、海部教授は「将来の太陽系外観測の結果、生命に関して、地球だけが特別ではないとの認識が現実のものとなると思われるが、地球文明は非常に珍しいに違いありません」と述べました。
理化学研究所の牧島一夫主任研究員から、2009年5月以降に打上げが予定されている、「きぼう」船外実験プラットフォームに取り付けられる船外実験装置のひとつである、全天X線監視装置(Monitor of All-sky X-ray Image: MAXI)の概要と、期待される成果の紹介が行われました。来場者から「MAXIのような最先端の研究を高校教育の現場で活用できないでしょうか、できるとしたらいつ頃からでしょうか」という質問に対し、牧島主任研究員は、「打上げ3ヶ月後以降、MAXIの観測データを一般のユーザに公開します。そのデータは高校生でも理解できるでしょう。現在そのための準備を進めています」と答えました。
海洋研究開発機構の秋元肇大気組成変動予測研究プログラムディレクターから、宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle: HTV)により、2009年9月以降に打上げが予定されている、超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(Superconducting Submilimeter-Wave Limb-Emission Sounder: SMILES)の概要と、期待される成果の紹介が行われました。講演の中で、秋元プログラムディレクターは「SMILESで得られる成果は、オゾン回復状況の監視や予測精度の向上、地球温暖化や気候変動における成層圏と対流圏の関係などの地球環境科学の新しい課題への貴重なデータを提供することにある」と述べました。
JAXAの田中哲夫宇宙環境利用センター長から、「きぼう」船外実験プラットフォームを利用した船外実験環境の特徴として、様々な用途に対応できる広大な視野や、電力・通信などの豊富なリソースを提供できること、大型の船外実験装置が取付け可能であることなどが紹介されました。また、第1期利用で予定されている船外実験の概要の説明や、第2期利用に向けた実験装置の開発の状況など、船外実験プラットフォーム利用の将来展望についても紹介が行われました。
欧州宇宙機関(ESA)のEric Istasse有人宇宙飛行局ミッション科学室室長から、ISSおよび「コロンバス」(欧州実験棟)の利用計画の紹介や、新しい材料の開発を目的とした材料科学実験、微小重力環境における植物の成長などを調べる生物学実験など6つの分野の研究における利用と得られた成果の概要、発泡金属など新しい材料の開発、植物ゲノムなどバイオテクノロジー産業利用への応用の期待について報告が行われました。また、JAXAとESAの協力の具体例も紹介されました。
株式会社丸和栄養食品の伊中浩治代表取締役(大阪大学客員教授)から、過去の宇宙実験で得られたタンパク質結晶の構造解析結果から、インフルエンザ菌などの感染症に対する薬剤開発への取組みの例(大阪大学及び横浜市立大学)や、環境負荷を軽減できる石油製品の分解や、食料を用いないバイオ燃料製造への取組みの例(兵庫県立大学)が紹介されました。また、将来的なエネルギー・環境問題解決に向けたタンパク質結晶生成実験の可能性などが紹介されました。
東京大学の浅島誠理事(副学長)から、宇宙環境と生命研究についての研究の現状と、今後の研究により期待される成果の紹介が行われました。講演の中で、浅島理事(副学長)は「「きぼう」での実験で得られる成果は、環境・エネルギー問題への貢献や、高齢者社会への貢献、医療・健康な生活への貢献、更に次世代の科学技術の発展を担う人材育成への貢献が期待される」と語りました。
松本俊夫徳島大学教授と、大川匡子滋賀医科大学教授による、宇宙医学研究がどのように地上の生活で役立てられようとしているかをテーマとした対談が行われました。
松本教授からは、宇宙滞在中の骨量減少(骨粗しょう症)や尿路結石防止対策の必要性が、宇宙滞在を経験した宇宙飛行士の実例をもとに紹介されました。また、宇宙飛行士への対処方法は、地上の人々に加齢とともに現れる症状にも適用が可能であることなどが紹介されました。
大川教授からは、宇宙滞在における睡眠障害についての問題が紹介されました。宇宙での過密スケジュールや、閉鎖環境下におけるストレスに起因する不眠症などの睡眠障害への対応として、適正な睡眠薬開発が必要であること、地上の運用要員についても、長期にわたる24時間交代勤務者への不眠症対策が必要であることなどが指摘されました。
対談の中で、松本教授と大川教授は、「宇宙医学研究は、宇宙飛行士という限られた人のためだけのものと思われがちだが、骨量減少や尿路結石、不眠症などへの対策の成果は、一般人の健康管理対策にも通じる重要な研究課題です」と語りました。
会場では、「きぼう」船内実験室の実験装置や「きぼう」での実験、宇宙ステーション補給機(HTV)などを紹介したパネルや模型の展示、映像の放映、パンフレットの配布などが行われ、多くの皆様にご覧いただきました。
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency | SNS運用方針 | サイトポリシー・利用規約 |