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「きぼう」での実験

水棲生物実験装置(AQH)

Aquatic Habitat: AQH
最終更新日:2021年2月3日

多目的実験ラック - 水棲生物実験装置(Aquatic Habitat:AQH)

魚から広がる宇宙
世代を越えて宇宙環境の影響を調べます

画像:装置概要図

AQH外観図



画像:飼育部概要図

AQH飼育部外観図



AQH外観

AQH外観(提供:JAXA)

飼育水槽

飼育水槽(提供:JAXA)

プレス公開時のAQH

AQH(提供:三菱重工業株式会社/JAXA)

最長90日間の宇宙実験ができる

3世代の継代飼育を行うことによって、地上の重力を経験したことのない宇宙水棲生物が誕生します。

画像:クリックして拡大

国際宇宙ステーション(ISS)用の装置開発

脊椎動物の基本的なつくりを備えている魚や両生類は、小型で飼育しやすく、成長が早いため、次の世代が早く得られます。また、卵や稚魚の体が透明なので発生や成長の様子を観察するのにも適しています。そのため、古くから実験動物として使われ、教科書にもよく登場します。

これまで水棲生物を用いた宇宙実験は、スペースシャトルで実験を行っていたため、長くても2週間の実験しか行うことができませんでした。そこで、長期間の微小重力の影響を研究するために、ISS用の装置開発の技術研究を進めてきました。本装置は2012年7月に宇宙ステーション補給機「こうのとり」3号機(HTV3)でISSへ運ばれました。

なぜ魚が宇宙に行くのか

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メダカ

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ゼブラフィッシュ

この装置ではメダカとゼブラフィッシュを飼育することを目標にしています。この生物は「モデル生物」と呼ばれており、地上での研究データが蓄積されているだけでなく、最近では遺伝子の解読も進んでいます。

また、メダカ、ゼブラフィッシュは多くの突然変異体が見つかっており、例えば、視覚、聴覚、心臓・血管系、消化器、顎などのヒトの疾患と共通する器官形成異常を持つものが見つかっており、ヒトの疾患モデルとして注目を集めています。このような突然変異体を用いて、どの遺伝子によって異常が引き起こされるのか、その原因遺伝子が何かなどの特定を行い、病気を引き起こすメカニズムの解明に役立てようと地上で盛んに研究が行われています。

※モデル生物

ヒトのように複雑で、解析方法が限られる生物は、実験の対象には向いていないため、
1) 飼育が容易、世代交代が早い。
2) 遺伝子を人為的に改変できる。
3) ゲノムDNAの塩基配列がわかっており、サイズが小さい。
などの条件を満たし普遍的な生命現象の研究に用いられる生物種を「モデル生物」と呼び、ショウジョウバエ、線虫、ゼブラフィッシュ、メダカ、マウス、シロイヌナズナなどが世界的に広く用いられています。

軌道上で長期飼育を行う

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宇宙での交尾の様子

小型魚類は3世代継代飼育を目標としています。このような継代飼育を行うことによって微小重力環境の影響がどのように世代を超えて伝わるのかを研究するためです。メダカやゼブラフィッシュは性的成熟が早いので、90日間で3世代目まで世代交代が進みます。一度も地上の重力を経験していない生物が宇宙でどのように成長し、行動するのか、また遺伝子はどのように変化するのでしょうか。

宇宙で魚を飼うために

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宇宙で誕生した子メダカ

画像:水槽概要図

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水槽のふた内部(奥にシート)

完全閉鎖系システム

微小重力下では、蓋がない容器を使用すると水が浮いてふわふわと外に飛び出してしまうので、水を完全に閉じ込める水槽が必要になります。周囲には様々な機械があるため、水がこぼれると処置が大変です。宇宙では使える水の量も限られているので、飼育水はバクテリアを使って濾過し、少ない水量でも健康に飼育できるようにしてあります。

自動給餌

宇宙では餌を水槽の上から撒こうとしても重力が無いため、餌は下に落ちていかず、魚の餌やりには特別なシステムが必要になります。そこで、餌を1回分ずつ封入した給餌テープを順番に開いて、水槽の下部から自動的に餌を与えることができる自動給餌機構を開発しています。

空気をキープ

魚は通常えら呼吸をしていますが、稚魚が浮き袋を膨らませるために、空気層が必要と考えられています。水をはじく撥水性の格子を水槽上部に取り付けて空気を保持し、上方向から照明を照らすことによって微小重力下でも地上と同じように、光の方向に浮上すれば空気を吸うことができるようになっています。

水漏れ防止

水槽内の魚を取り出すときに水が外にこぼれないように、取り出し口には特殊な形のシートをつけ、ふたを開けても水が出てこないようにしてあります。


水棲生物実験装置パンフレット(研究者向け) [PDF:906KB]
 
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