このページは、過去に公開された情報のアーカイブページです。リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。また、現在のWebブラウザーでは⼀部が機能しない可能性があります。
 
JAXAトップページへ
 JAXAトップページへ宇宙ステーション・きぼう広報・情報センターサイトマップ
 

「きぼう」日本実験棟のモーダルサーベイ試験

船内実験室の認定モデル
ロボットアームのエンジニアリングモデル
 1999年 5月28日から6月4日にかけて、「きぼう」日本実験棟の船内実験室とロボットアームのモーダルサーベイ(Mordal Survey)試験が筑波宇宙センターで行われました。この試験の様子をご紹介します。

モーダルサーベイ試験とは
 モーダルサーベイ試験とは、どのくらいの加振(周波数)でその物体に共振が発生するかを確認する試験です。

試験の目的
 「きぼう」日本実験棟は3回にわけてスペースシャトルのペイロードベイ(貨物室)に搭載されて打ち上げられます。
 打上げ時にはシャトルに激しい振動が生じるため、「きぼう」日本実験棟も振動します。その振動がシャトルに伝わり、振動が大きいとシャトルの姿勢を乱す可能性があり危険です。
 このため、シャトルのペイロードベイに搭載する全ての荷物には振動して良い範囲が決められ、NASAは、荷物の振動の特徴を表す数学モデル(振動モデルと呼びます)を使用して、スペースシャトルが安全に打ち上がることをコンピュータで解析し確認します。
 今回の試験の目的は、船内実験室とロボットアームを加振してデータを取得し、「きぼう」日本実験棟の設計段階で作成した振動モデルを使ってコンピュータでシミュレーションした結果と今回の試験結果の差が、規定条件を満足しているか確認することです。

試験方法
 今回の試験は、船内実験室の認定モデル(Qualification Model)とロボットアームのエンジニアリングモデルを使用して行われました。
 まず、スペースシャトルのペイロードベイに荷物を搭載するための支持治具を模擬したものに、ロボットアームを取り付けた船内実験室を設置しました。次に、加振装置を使い15 kgrmsという力で0~100 Hzまでランダムに加振し、船内実験室とロボットアームに取り付けた400個以上の加速度センサーからのデータを取得しました。
 また、コンピュータ上で「きぼう」の設計段階で作成した振動モデルを使ってこの試験をシミュレーションして、シミュレーション結果と今回得られたデータ(実測値)を比較します。もし両者の値が大きく異なっていた場合、振動モデルを修正して実測値との差が規定条件を満足するようにします。試験結果の評価と振動モデルの修正作業におよそ半年かかります。
 こうして作成した振動モデルはNASAに提供して、打上げ時のスペースシャトルとペイロード(貨物)を統合した振動解析に使用され、打上げが安全に行われることを確認します。
試験全体の外観
ロボットアーム(手前)と船内実験室(奥)
加速度センサ加振装置

試験担当者のひとこと

宇宙開発事業団宇宙環境利用システム本部JEMプロジェクトチーム
三宅 薫



試験棟から総合環境試験棟への移送の様子
 なんといっても試験の準備が一番大変でした。まず、試験場所の確保です。ここ筑波宇宙センターでは、「きぼう」日本実験棟だけでなく、衛星の開発や試験、技術開発を行っています。ですから試験を行うため場所を確保するために、他の部署と調整から始まりました。
 やっとのこと、場所を確保してからは試験の準備です。船内実験室の中には実験を行うための実験ラックが搭載されます。船内実験室の認定モデルにその実験ラックの重さや重心を模擬した"ダミーラック"をいれて、スペースシャトルで運ぶときの状態を模擬しました。
 今度は、約15トンもある船内実験室とロボットアームの移送です。船内実験室が設置されている宇宙ステーション試験棟から、数百m先の総合環境試験棟まで動かすのに、フォークリフトで約4時間かかりました。
 総合環境試験棟に到着するとその中にある特性試験室まで運び込みます。ここからは、建物の中なので、人力で動かしました。15トンもあるものをどうやって運ぶのかというと、エアスケートと呼ばれる圧縮空気を吹き出す台の上に載せて「きぼう」日本実験棟を床から浮かせて押すのです。10人で押しながら6時間かけて汗だくになりながら運び込みました。
 こうして、やっと試験実施にこぎつけました。

「きぼう」日本実験棟船内実験室の棟内での移動手順

 重さ約15トンもある船内実験室の、建物内での移動はこのようにして行います。





1. エアスケートと呼ばれる圧縮空気を吹き出す台の上に乗せます。
 写真の青い台がエアスケートです。エアスケートは船内実験室の前後にふたつずつ用意されます。
 写真左が空気を出す前、右が空気を送出したところです。空気の圧力により約3cm持ち上がっています。



2. 床がタイルだと、タイルとタイルの継ぎ目から圧縮空気が漏れてしまい、浮きません。空気が漏れないようにアルミ板を床にひいてその継ぎ目をガムテープでつなぎ合わせて空気が漏れないように道を作ります。



3. 圧縮空気を送出し、浮かせた状態で人力により動かします。



4. アルミ板で作った道の手前まで船内実験室を動かしたら、またアルミ板を前にもっていき道を作ります。これを何回も何回もくりかえし、動かしていきます。

5. 30分でこれだけ動きました。
 エアコンは効いていますが、無塵衣を着ての作業は汗だくになります。



最終更新日:1999年 6月16日

 
JAXAトップページへサイトポリシー