このプログラムでは、微小重力環境において生活する人間の身体的リファレンス喪失感を補完すると思われる「抱きしめる」「ふんばる」等の行為を補助するツールとして、微小重力環境の「ライナスの毛布」を提案します。
同時に、関連する過去の映像資料等を検証し、地上環境についての相対視を試みます。
微小重力環境における身体感覚の中でも特に本テーマが扱う内容は、「地球環境で育成された身体」をもって宇宙環境に臨むという状況においていわば「身体内にある地球環境の名残りを宇宙環境において代替・変化させる感覚」ともいえます。それはまた、宇宙飛行士が宇宙において口にする「望郷」に通じるものの一つでもあります。今後の有人宇宙飛行が長距離、長時間なものへと発展していく状況の中こうした内容について考察はさらに重要性を持つのではないでしょうか。
また、身体感覚と深く関連する本テーマはその現場において感じ確かめることによって深化していくべきものです。現時点でのツールの厳密な定義や効果は未分化ですが、むしろ手探りの知覚から或る環境についての「自発的なイメージを抱いていく行為を紡ぐ」ことに芸術的アプローチのゴールがあると考えます。
* ライナスとは、スヌーピーやチャーリーブラウンで知られるアメリカンコミック「PEANUTS」に登場するメインキャラクターの一人Linus Van Peltのことです。彼は片時もBlanketを手放すことがない男の子として描かれています。彼が常に携えているBlanketは彼にとって安心感を与える存在であり、Security Blanketと呼ばれています。
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