打上げから帰還まで
最終更新日:2009年1月30日
スペースシャトルの打上げから帰還までの過程は、大きく分けて、打上げ、上昇第1段階、上昇第2段階、軌道投入から離脱まで、着陸の5段階に分けることができます。
また、緊急時に脱出する方法や飛行を中断する方法についても手順が決められています。
スペースシャトルの打上げから帰還まで
|
 |
打上げ前準備 |
|
L+
0分 |
 |
打上げ |
|
L+
2分6秒 |
 |
固体ロケットブースタ(SRB)分離 |
|
L+
8分58秒 |
 |
外部燃料タンク(ET)分離 |
|
L+
38分 |
 |
軌道変換エンジン噴射 |
|
|
 |
軌道上運用 |
|
R-
約1時間 |
 |
軌道離脱噴射 |
|
R-
約32分 |
 |
大気圏再突入 |
|
R-
0分 |
 |
着陸 |
|
|
*: L:打上げ時刻、R:着陸時刻
*: 時間は各フライトによって多少異なります。
打上げ
アトランティス号の打上げ(STS-51-J)
打上げ時には、スペースシャトルは、各
固体ロケットブースタ(Solid Rocket Booster:SRB)のスカート部の4本のボルトで発射台に固定されています。まず、3基のスペースシャトルメインエンジン(Space
Shuttle Main Engine:SSME)に点火し、コンピュータがSSMEの推力が100%に達したことを確認した後、SRBに点火信号が送られます。SRBの点火の直前にSRBを発射台に固定していた計8本のボルトが解放され、スペースシャトルは打ち上がります。
▲ページの先頭へ
上昇第1段階
【動画】
アトランティス号の打上げ(STS-112)
[3分00秒] 28K/56Kbps / 256Kbps
[打上げ後に回転する様子やSRBの分離を見ることができます。]
打上げから約20秒後、スペースシャトルは回転して地上に対して逆さまの状態で飛行します。これにはふたつの理由があります。ひとつは、緊急時に操縦者(コマンダーとパイロット)がすぐに地上を見ることができるようにするためです。もうひとつは、発射台はもともとスペースシャトル専用に作られたわけではなく、スペースシャトルは南方向に背を向けた状態で発射台に載せられますが、必要な軌道に乗るためには東方向へ機首を向ける必要があるためです。
打上げから約26秒後、SSMEの推力が104%から67%に下げられます。これは、最大動圧(空気抵抗)を規定値以下に維持するためです。約60秒後には推力は再び104%に戻されます。
打上げから約2分後、SRBが分離されます。このとき、スペースシャトルは高度約45km、速度は時速4,800km以上に達しています。
▲ページの先頭へ
上昇第2段階
オービタから分離されたET
打上げから約7分40秒後から、加速度を3G(地表面での重力の3倍)以下に維持するため、SSMEの推力を徐々に下げていきます。そして打上げから約8分40秒後、SSMEが停止されます(Main
Engine Cut Off:MECO)。このときスペースシャトルは、およそ秒速8kmの速度で飛行します。
打上げから約8分58秒後に、空になった外部燃料タンク(External Tank:ET)が分離され、ETは大気圏に再突入しばらばらに分解して太平洋上へ落下します。
▲ページの先頭へ
軌道投入から離脱まで
軌道上のエンデバー号(STS-111)
MECOの後、スペースシャトルの軌道は楕円軌道となります。そこで、打上げから約40分後のスペースシャトルが遠地点に到達したとき、軌道制御システム(Orbital
Maneuvering System:OMS)のエンジンを噴射し、オービタは円軌道へ投入されます。
円軌道へ投入された後、ラジエータが起動され、ペイロードベイ(貨物室)のドアが開かれます。さまざまな点検や作業、食事が行われた後、クルーは初日に睡眠につきます。これは打上げ日の起床から16時間以内に実施されます。
軌道上のエンデバー号(STS-100)
帰還時は、まず準備として空力翼の動作確認や各種システムの点検が行われます。準備が完了すると、ペイロードベイのドアが閉じられ、姿勢制御システム(Reaction
Control System:RCS)を用いて、オービタの後部を進行方向に向けた姿勢に変更し、着陸約1時間前にOMSエンジンを噴射して減速します(軌道離脱噴射、デオービット・バーン)。
噴射終了後、オービタの姿勢は再び前部を進行方向に向けた姿勢に変更され、仰角40度で大気圏に再突入します。このとき、オービタの高度は約120kmです。
▲ページの先頭へ
着陸
ティスカバリー号の着陸(STS-105)
大気圏に再突入すると、高度約80kmから50kmまでは大気により熱せられ、その温度は翼の縁と船首部分で摂氏1,600度以上に達します。オービタの底面には、この熱からオービタを守るための断熱タイルが装備されています。また、この間の通信は、NASAのデータ中継衛星(Tracking,
Data and Relay Satellite:TDRS)を介して行われます。
空力学的な制御が可能になる大気密度になるまでは、RCSを用いて姿勢制御が行われ、大気密度が濃くなるにつれて、ラダーやエレボンが使用されます。また、減速するために片側に約80度傾き、さらに逆側に約80度傾く動作を交互に行います。そのため、このときのオービタの軌跡は、"S"の字を大きく引き延ばした形になります。
着陸地点から約40km、高度約15kmになると、速度は音速以下になり、オービタは滑走路に進入するための円運動を行います。この円運動で高度は約15kmから約3kmに下がり、進入/着陸誘導フェーズに入ります。高度約600mで着陸態勢に入り、車輪を出した後、時速約350kmで両翼の車輪が接地し、垂直尾翼下側に取り付けられているパラシュートを開きます。そしてパラシュートの補助を受けつつブレーキで減速し前輪が着地、完全に停止する前にパラシュートが外され、着陸となります。
▲ページの先頭へ