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土井宇宙飛行士軌道上イベント
科学技術庁長官と交信 NHK共同企画番組 軌道上記者会見

飛行10日目の11月29日午後6時6分(日本時間)より土井宇宙飛行士は、NASDAとNHKの共同企画番組に参加し立花隆氏と交信を行いました。

土井 土井隆雄宇宙飛行士 立花 立花 隆氏 道傳 道傳 愛子NHKアナウンサー


道傳:土井さん。よろしくお願いいたします。かたずをのんで宇宙遊泳を見守っておりました。

土井:はい、どうもありがとうございます。非常にうまく宇宙遊泳、船外活動出来まして本当に喜んでおります。

道傳:立花さんも楽しみにしてらっしゃいました。

立花:あの、立花ですが、よろしくお願いします。

土井:立花さん、どうもお久しぶりです。コロンビア号へようこそ。

立花:あんまり時間が無いものでどんどん伺いたいのですが、やっぱり、宇宙空間に出るのと宇宙船の中では、同じ宇宙体験でも全然質が違う体験だと言われますけれども、やっぱり全然違うもんですか?実感として。

土井:そうですね。非常に違います。まず、宇宙線の外ですね、スペースシャトルの外へ出ると、すごいパノラマビューがあるんですね。すばらしく視界が開けますから、その分本当に宇宙の中に自分一人が存在してるという感じがします。それから、宇宙船の中も外も同じ無重量状態なんですけれども、宇宙船の外へ出ると、やはり自分が本当に無重量状態の中で浮いてるという感じが強くしました。

立花:それはやっぱり、宇宙船の中と外では、宇宙で浮いてるという感じが相当違うもんですか?実感的に。

土井:やはり宇宙船の中では閉鎖空間の中にいますから、宇宙に浮いてるといっても、壁に囲まれた室内にいますよね。外に出るとまわりの壁が取り払われてしまうわけで、本当に自分が宇宙の中で浮いてると、本当に自由に動き回れるという感じがします。

立花:今度の衛星回収では、まずスパルタンのところにシャトルで近づく1時間ちょっとの間、土井さんずっと宇宙の外で、宇宙を眺めながらいたわけですね。あの1時間あまりの時間って、僕本当にすばらしい時間じゃないかと思うんですが、あの間、何考えていらっしゃいました?

土井:本当に1時間半、自由な時間を持つことができて、最高だったと思います。あの間色々なことを考えてました。主には2つのことを考えてました。1つはやはり、このスパルタン衛星、どうやって捕まえようか、こういう風に回転していたら、こんな所を、こういう所をつかんで捕まえてやろうと、まず、そういう意味でスパルタン衛星のことを1つ考えてました。もう1つは、宇宙そのものを見つめる時間を持てたわけですね。宇宙空間、暗黒の、漆黒の壮大な宇宙と、それから地球を見ることが出来ましたし、それからもちろんスパルタン衛星を見ることが出来ました。また、私のEVA(Extravehiculur Activity:船外活動、通称宇宙遊泳)仲間の、船外活動仲間のウィンストン・スコットを見ることが出来ましたし、私自身見ることが出来て、そういう意味で、私自身の存在と、地球とか、宇宙とか、対比して色々な思いが浮かんできました。

立花:地上から中継の画像を見てるとね、向こう側の地球の映像がものすごく美しいのはわかるんですけれども、多分見てるに違いない向こうに広がる暗黒の宇宙ですね、特に夜の時間帯の暗黒の部分とかそういうところはこっちから映像で全然わかんないんですよね。あの辺りのそういった感じっていうのはどういう風なんですか。

土井:太陽が沈んでしまうと、本当に暗黒の宇宙空間が広がりました。ところが、私たちスペースシャトルのペイロードベイは明かりがついているので、そのためにほとんど星は見えなかったです。本当に明るい星ともう一つ月ぐらいしか見えませんでした。もう1つ、特に夜に入ってから感じたのは、非常に手を、手袋をしているんですけども、手が非常に冷たくなったことをよく覚えています。

立花:少し、宇宙作業のことを伺いたいんですけれども。終わってから、ものすごい疲れたという報道がありましたけれども、やっぱりものすごい疲れたんですか?

土井:いや、帰ってきた時はそれほど疲れは感じなかったんですけども、やはり腕をよく使うので、腕っていうか、手のひらを良く使いますから、左手の握力はもうほとんど無くなるくらいですね。そういう意味で手の疲労が非常にありました。ただ体全体ですね、精神的にはあまり疲れていませんでした。

立花:水とか、お腹とか、あるいは例のおしっことか、そういうのは大丈夫だったんですか。

土井:7時間45分ですか、船外活動していましたけど、一回もおしっこはしなかったですね。水は袋ですね、船外活動の服の中にいっぱいつめて行ったんですけれども、それは全部飲んでしまいました。お腹自体はそれほど空かなかったです。船外活動中は軽いジョギングをずっと続けているような状態ですので、水はすごくとりますけども、お腹はあまり空きませんでした。

立花:水よりも何よりも僕見てて心配だったのは酸素の時間が確か7時間30分位の設定ですよね。あれ、もうギリギリだったと思うんですが。酸素は大丈夫だったんですか?

土井:はい、私自身、酸素がどのくらい残っていたのかチェックしなかったですけれども、酸素の量とかバッテリの残量っていうのは、全て地上で管理していますので、そういう意味で、彼らがずっと残量をモニタしていますから、あの時間まで十分残っていたと思います。

立花:シャトルの飛行をもう少し延長して、回収したスパルタンをもう一度宇宙に放出して、土井さんたちがもう一度EVAでそれを回収するという、そういう計画も持ち上がっているという話を聞きましたけれども、今どうなっていますか?

土井:私自身、NASAの方からそういう話があるということは聞いていますけど、まだそれを実際に行うかどうかということは決定されてないようです。私たち自身も実際これからスパルタン衛星どうするかということについて、はっきりした話をまだNASAの方から話を聞いていないです。

立花:気持ちとしては、もう一回出て、もう一回EVAをやりたいっていう気持ちなんですか?

土井:そうですね。チャンスがある限り、また是非船外活動やりたいと思っています。

道傳:宇宙に出ていらっしゃる時っていうのは、例えば日本のことですとか、御家族のことなども思い浮かべたりなさるんでしょうか?

土井:実際に忙しく仕事をしている時は、なかなか仕事以外の事を考えることは難しいですけれども、先ほど言ったように、スパルタン衛星を待ってる一時間半の間ですね、その時に色々と家族のこととか、日本にいる友人のこととか、色々考える時間がありました。

立花:スパルタンの回収は、地上でも一応訓練したし、それから実際に回収に入る場合にも、地上で色々なシミュレーションやって、その指令がいったと思うんですけれども、そういう地上での訓練と、自分で実際にやってみた時の違い、これはやっぱりシミュレーションじゃわからなかったな、っていう違いはどの辺りですか?

土井:そうですね。地上でやってましたのは、スパルタン衛星が非常に制御された状況で、非常につかみやすい姿勢で自分の所まで降りてきて、それをつかむということでしたので、非常に理想化された訓練でした。実際、今回はスパルタン衛星が回転しているかもしれない、ということとか、その回転方向もどっちに回転しているかわからない、ということなので、本当に色々な状態を考えて、捕まえる前の2日間ですね、クルー全員で本当に色々な事を考えて訓練をしていました。

立花:スパルタンは、地上でもし重さを量れば1.3tの重さがあるわけですよね。無重量の宇宙とはいえ、あそこの上でグルグル回したり、回っているのを止めたりと、そういう時は重さじゃなくて、相当の質量的な手応えというのを感じたと思うんですが、それは結構あるものですか?

土井:はい、ずいぶんあります。私自身、ジョンソン宇宙センターですね、あそこでいわゆるバーチャルリアリティーというシステム、コンピューターとロボットを組み合わせて、そういう大きなマスですね、質量の取り扱い方の訓練受けてたんですけれども、実際こちらに来てですね、実際スパルタンつかんでみると、やはりその1t以上の重さですね、ずっしりと手にきました。ただ、やっぱりゆっくりと回転したりですね、動かす限りにおいては、非常に簡単というか、きちんと思い通りに動かすことが出来ました。

立花:実際に作業をこう見てると、本当にこう数センチ刻みで物を動かしたりなんかしますね。あれを見てて、やっぱり宇宙での作業ってのはものすごい大変だなって思ったんですけれども、あれを見てて、これから宇宙ステーション作るのに実際にとりかかるのにね、5年ぐらいで本当に出来るんだろうかという気がしたんですが、実際にクレーンを操作したり、ああいう回収作業をしたりして、宇宙ステーションを出来るぞっていう、その実感はどうなんですか?

土井:はい。今回クレーンも宇宙ステーションで使うために、こちらに来て検証実験やったわけですけども、実際に動かしてみて、非常に正確に思い通りに動きましたので、非常に私自身満足しています。宇宙ステーション自身、非常に大きいですし、また許容量というか、いろいろな制御しなきゃ出来ないものっていうのは、非常に厳しいものですけれども、私自身、船外活動でかなり細かなところまで仕事できますので、そういう感覚を受けましたので、私自身はスペースステーション大丈夫、出来ると思っています。

立花:土井さん自身がもう一度、また宇宙に上がって、組立作業とかあるいは出来上がったステーションの常駐の船員の一人になるわけですね。

土井:はい、是非やりたいと思ってます。

立花:昨日(11月28日)、日本でH−IIロケットが上がって、NASAとの共同プロジェクトのTRMM(熱帯雨林の降雨観測衛星)を上げたんですが、ああいうのは上で話題になってるんですか?

土井:いや、初めて聞きました。本当に良かったと思います。

立花:ああ、そうですか。

道傳:宇宙ステーションの建設を前に、何かこれからもう一度、船外活動をなさるとしたらば、是非検証をしてごらんになりたいと思ってらっしゃるところはどんなところでしょう?

土井:そうですね。特に宇宙ステーションになると、あのスペースシャトルからですね。宇宙ステーション離れた場合、宇宙ステーション色々な場所があるわけですね。そういう意味で、NASAではSAFERといって、背中に背負ってですね、いわゆる個人用のロケットシステムですね、それで自由に飛び回ることができるようにそういうシステムが開発されています。私自身、それを使ってですね、実際にセーフティテザーですね、安全綱なしにですね、船外活動を一度行ってみたいなあと思ってます。

立花:地上でずいぶん船外活動のシミュレーションとか、そういうことを教育受けたりしたと思うんですけども、やっぱり自分で実際に宇宙に出て体験してみないと、”ああ、これは地上の教育ではわかんなかったなあ”と一番実感していることは何ですか?

土井:やはり、一番私自身難しいなあと思ったのは、腕を使って移動していくところなんですね。水中の訓練で何回も、何時間もその訓練していましたけれども、水中では水の抵抗があるために、体が安定します。逆に、水の抵抗があるためにあまり速く動けないわけですね。ところが宇宙に来ると、水の抵抗が無くなってしまいますから、その分、速くも動けますし、また体の安定を保つのが難しくなります。そういう意味で最初ですね、私、外出た時に、なかなか体の安定をうまくとるということに時間がかかりました。それが難しかったところです。

立花:作業で見てると、パワーツールを使う場合と、手動で、マニュアルでやる場合と、色々なケースがありましたけれども、結構マニュアルでも色んな事が出来るという感じなんですか?

土井:はい。マニュアルではほとんど全ての操作が出来ますね。水平に動かしたり、垂直に動かしたり、また腕を伸ばしたり縮めたり、色々な訓練の操作、全てマニュアルですることが出来ます。私自身、マニュアルですね、手動でやってみて、非常にどの動きも滑らかで満足しています。パワーツールを使う部分は、腕をこう伸ばしたり縮めたりする部分だけですけども、その部分にパワーツールを使った場合には、非常に滑らかな動きでですね、手動で行うよりも、振動がおきないように物を動かすことが出来るということがわかりました。

道傳:本当に、土井さん、どうぞ宇宙を満喫されて地球にお戻り下さい。ありがとうございました。

立花:まだまだ、フライトが続きますけど、お元気で頑張って来て下さい。土井:はい、どうもありがとうございました。


Last Updated : 1997.12. 5


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