先生は、そうした細菌の検出法を研究していらっしゃるんですね。
「今ここにいる、同じ研究室の山口さんと一緒に、環境中の細菌をきちんと検出しようというプロジェクトを始めたのが今から10年以上前。
さらに、リアルタイム、オンサイト、つまり現場ですぐに細菌を検出できるようにしよう、と考え始めたのが5年くらい前ですね。
当時、世界的にみても、そういったシステムは実現していなかったので、僕らが始めました。
そして現在、基盤はすでに完成しています」
リアルタイム、オンサイトの検出法とは具体的にどのようなものなのでしょう。
また、それが実現したら、どういった場面に応用できそうですか。
「たとえば、ミネラルウォーターの検査をするとしましょう。
現状では、水の中にいる細菌を寒天の培地で目で見えるほどまでに増やして、もともとの細菌数を算出するという手法をとっており、結果が出るまでにおよそ2、3日、長ければ1週間かかります。
僕らが考えているのは、たとえば1ccとかほんの少量の水を機械にセットして、30分程で『どれくらいの数の細菌がいますよ。危ない細菌がいるかもしれません』と教えてくれるようなシステムです。
飲料水の安全確保の手段としてだけでなく、たとえば、レジオネラ菌汚染が懸念される24時間風呂とか温泉、変わったこところでは半導体工場での超純水の微生物管理などでも利用できるでしょう。
最終的には、極限環境の宇宙で応用できたら面白いなと考えています」
地上の研究室から遠く離れた国際宇宙ステーション(ISS)で、そんなシステムが利用できたらすばらしいですね。
でも、なんだかSF小説みたいな気がします。
「10年前だったらまず不可能だったでしょうね。
でも今では、学問的にはすでに実現しています。
あとは、いかにその機械をコンパクトにしていくか。
所詮、僕らは機械の専門家ではありませんから、すべて手作りなんですね。
手作りなのでかなり大きいし、バラバラで一つにまとまっていないから、移動させるだけでも一仕事です。
それをJAXAなど、関係者の方にお話したら、やはりアタッシェケースに入るくらいの大きさにしないと、と言われました。
しかも、振動や熱などの負荷がかかっても故障しないようにしなければならない。
それはもう専門家にお願いするしかないので、今はプロトタイプの完成を目指しているところです。
ここまでくるともう学問の域ではなく、完全に応用と言っていいでしょうね」
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