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宇宙実験サクッと解説:不凍タンパク入り氷結晶編


宇宙実験調査団のピカルが氷の結晶成長実験を大調査!
実験提案者の古川先生とも仲良しの物知りハカセに聞きました。

物知りハカセ

ピカル

ピカル:

ハカセ、こんにちは。2008年に宇宙できれいな氷の結晶を作って話題になった実験の第2弾を実施するんですって?宇宙と地上では結晶の形の違いが歴然としてましたね!

(左:地上の氷結晶。右:宇宙で観察された、形の対称的な氷結晶)

ハカセ:

ほほう、第2弾の実験のことも聞いたかね。前回の実験はただの水じゃったが、今回は不凍タンパク質という混ぜ物を入れるのじゃ。ちなみに、前回の実験では新しい発見がたくさんあって、大成功じゃったよ(詳しくはこちらからpdfをご参照ください)。

ピカル:

宇宙ステーションでの実験成果のページも充実してきましたね。で、今回混ぜる不凍タンパク質ってのはなんですか?不凍ってことは、水が凍らないってことですか?

ハカセ:

そうじゃな、氷ができても、それが大きく成長することを阻害するタンパク質じゃ。

ピカル:

阻害?邪魔するってこと?

ハカセ:

そうじゃな。ところで、ピカルは魚のタラは好きかね?

ピカル:

なんですか、やぶから棒に。もちろん好きですよ。冬の鍋物には欠かせないですね。ぼくのお母さんは北海道の出身で、コマイという魚の話をよく聞きます。タラの仲間でしたっけ?

ハカセ:

うん、コマイはタラ目タラ科の魚じゃな。わしも好きでな。で、タラは北極や南極の海でも泳いでおるんじゃが、海水の温度が零下になっても、凍らないで生きておる。なぜなんじゃろうなあ。

ピカル:

確かに、どうして凍ってしまわないんだろう?もしかして、不凍タンパクが関係してるんですか?!

ハカセ:

そういうわけじゃ。魚の体液は通常-0.6℃くらいで凍ってしまうんじゃが、タラなんかはこの不凍タンパク質を体液に含んでおって、細胞の中に小さな氷ができても、それが大きくならないように邪魔をしておるんじゃ。もちろん、冷凍庫の中とか、極端に冷たい環境では、その甲斐もないがね。

ピカル:

へえ〜!それで、寒い海でも元気で泳げるんだ・・・。全然知らなかったです。人間とかだと、不凍タンパク質はもってないですよね。

ハカセ:

残念ながら、わしらは不凍タンパクをもっておらんから、寒さに対する防御がちゃんとできてないと、細胞の中の氷が大きくなって、細胞が壊れて、凍傷になってしまうというわけじゃな。

ピカル:

なるほど・・・。不凍タンパク質がすごいことはよくわかりました。それで、どうして宇宙で不凍タンパク質を混ぜた氷の結晶成長実験をするんですか?

ハカセ:

うん、その説明の前に紹介しておきたいんじゃが、代表研究者の古川先生や共同研究者の佐崎先生のグループでは、成長している氷の表面に、不凍タンパク質がどんな風にくっついて、氷の成長を邪魔しているのかを詳しく調べておる(詳しくはこちら)。その過程で、何とも不思議なことがわかってきたんじゃ。

ピカル:

えーっ、なになに?

ハカセ:

ただの水じゃと、ある温度に設定すれば、氷の成長速度は基本的には一定なんじゃが、不凍タンパクを混ぜた時だけ、同じ温度設定なのに、成長が速くなったり遅くなったりを繰り返すことが分かったんじゃ。成長速度が振動しているとでもいおうか。

ピカル:

へえー!それは不思議ですね。どうしてなんだろう。

ハカセ:

まさに、それを知りたいから、宇宙実験を行うわけじゃよ。地上の実験だと、重力のせいで対流が起こるじゃろう。対流によって成長速度の振動現象が影響を受けている可能性もあるから、現象をきちんと理解し、原因を知るためには、対流のない宇宙で調べる必要があるわけじゃ。宇宙ステーションなら、時間もたっぷりあるし、温度を少しずつ変えたり、実験を何度も繰り返して結果を確認したりすることもできて、有意義な実験ができそうじゃ。

ピカル:

よくわかりました。ハカセ、今までもいろんな実験を勉強してきましたけど、宇宙ステーションって、地上じゃ分からないことを明らかにすることができる、という意味で、本当にオンリーワンの施設ですよね。

ハカセ:

そうじゃな。どんどん活用していきたいものじゃな。

ピカル:

ハカセ、今日はどうもありがとうございました!


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