鈴木先生がホルモン研究をはじめられたきっかけは。
「僕は富山市の出身で、家のすぐ近くに神通川という、イタイイタイ病で一躍有名になった川があります。子どもの頃はこの川でよく魚を捕って遊んでいました。
とにかく魚が大好きで、高校卒業後は富山大学の理学部に進み、魚の研究をしました。
そこで、たまたま指導教官の先生がカルシウムの研究もされていたので、そこからカルシウムに関わるホルモン研究に入っていったんです」
その頃は、ご自分が宇宙で実験をすると思っていましたか。
「魚の研究と宇宙がつながるなんて、まったく夢想だにしていなかったですね。
まだどこか夢をみているような気分です」
大学卒業後は大学院に進まれたのですか。
「はい。
修士課程に進みましたが、当時、富山大学には博士課程がなかったので、修了後は宝幸水産という会社の研究所に研究員として就職しました。
そこでは、バクテリアを使って、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などの脂肪酸を作る研究をしていました。
その後、かつての恩師に声をかけていただいて、富山大学に戻りました。
今は、金沢大学で研究を続けています」
先生にとって研究の原動力は何ですか。
「う〜ん、やっぱり実験の面白さでしょうね。
自分が思った通りの結果が出ることもあり、まったく違う結果が出ることもあります。
ただ、違う結果が出たらダメかというと、そういう訳でもなくて、逆によい方向に向くこともあったりしますね。
結果が出て、それが論文というかたちで世に出て、研究が進展していくのをみるのはうれしいし、何よりの励みになりますね」
研究を続けてきてよかったと思うことは。
「ようやく、研究成果を社会に還元できる可能性がみえてきた、ということですね。
現在使われている骨粗鬆症の治療薬は、破骨細胞の活性を抑える作用はありますが、骨芽細胞に対する効果、つまり積極的に骨を作り出す効果はないんです。
だから、高齢の方が骨折すると、寝たきりになってしまう可能性が高いです。
僕らが開発中の治療薬は、破骨細胞の活性を抑えるだけでなく、骨芽細胞の活性を高めることで、折れた骨を元通りにできる可能性があります。
現在はラットを使った試験を行っている段階ですが、一日も早く寝たきりにならないように骨を治療する薬を完成させて、研究の成果を社会に還元したいと思っています」
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