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インタビュー風景

クルートレーニングの際の集合写真。 クルーに対してトレーニングを行ったときに、Fish Scalesで使用する機材を手に関係者で記念撮影をしました。 (左から2人目が鈴木先生)

Fish Scales実験ではキンギョのウロコを使うと伺いましたが。

「キンギョのウロコを国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げて、微小重力環境での骨代謝の機構を解明するのが僕らの実験の目的です。 なぜウロコを使うかというと、ウロコがヒトの骨の理想的なモデルだからです。 ウロコには骨を壊す細胞(破骨細胞)と骨を作る細胞(骨芽細胞)があって、ちょうどヒトの骨と同じような構造をもっています。 魚は、ウロコからカルシウムを出し入れすることで、カルシウム代謝をしているんです。 これまで宇宙で行われた骨の細胞培養に関する実験をみてみると、破骨細胞の培養が非常に難しいために、いずれも骨芽細胞だけが対象となっています。 その点、ウロコは破骨細胞と骨芽細胞の共存培養が可能であるうえ、4℃で保管すれば、10日後でも活性を示し、さらに重力にも応答することが確認されています。 ウロコは骨のモデルとして、宇宙実験に最適な材料なのです」

なぜキンギョのウロコなのですか。

「海産魚と淡水魚のカルシウム代謝をくらべると、淡水魚の方がはるかにウロコの活性が高いんです。 海水にはカルシウムが豊富に含まれているため、海産魚の場合は、あえてウロコからカルシウムを補う必要がありません。カルシウムは淡水中にも少しは含まれておりますが、海水と比較してかなり少ないので、淡水魚はウロコを使ってカルシウムの出し入れをしなければなりません。そのため、淡水魚では必然的にウロコの活性が高くなるのです。 淡水魚のなかでも、キンギョの場合は、ウロコが比較的大きくて扱いやすいうえ、一年を通じて同じサイズのものが購入できます。 実験試料ですから、同一条件のものが安定的に手に入る、という点は重要ですね。 ちなみに僕たちは、ウロコそのものではなく再生ウロコを使います」

再生ウロコとは。

「魚のウロコは抜けるとまた再生するという特徴があります。 そうしてできた再生ウロコは、普通のウロコにくらべて、破骨細胞と骨芽細胞の活性が非常に高いことがわかっています。 特に、普通のウロコと比較して再生ウロコには破骨細胞が多く、哺乳類の破骨細胞と非常によく似た性質をもっているので、解析もしやすいんです」

ウロコを準備するのは大変ですか。

「打上げ2週間前に、再生ウロコを作らせるために40匹のキンギョを用意して、合計で1700枚のウロコを取ります。打上直前にまたウロコを取らなければならないので、かなり大変な作業です。 念のために申し上げておきますと、ウロコを取る際は魚専用の麻酔薬を使いますから、キンギョに痛みはありません」

実験では骨の薬も試されるそうですね。

「僕たちは、骨粗鬆症の治療薬の開発にも取り組んでいます。 メラトニンというのはご存知でしょうか。 脳の松果体という内分泌腺から分泌されるホルモンの一種で、夜眠くなるのはこのメラトニンのおかげです。 実は、このホルモンには破骨細胞の活性を抑える効果があるんです。 僕たちは、メラトニンの構造を少し変えて新規化合物をつくりました。 この化合物は、メラトニンよりも破骨細胞の活性を抑える力が強く、骨芽細胞の活性を高める効果もあります。 実際、ラットを使った実験では、非常によい結果が確認されています。 この薬を宇宙で使ったらどうなるか、宇宙での骨量減少を阻止できるのか、それを今回の実験で確かめたいと思っています」



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