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ULF4(STS-132)打ち上げ直前に、KSC(ケネディ宇宙センター)で射場作業にあたる高橋先生(左端)。 緊張感が漂います。

無類の山好きですが、海も大好きです。 サングラスと麦わら帽子がお似合いです。

予想外の発見とは。

「地上では、『主根』と呼ばれる最初の根は、重力の方向、つまり地球の中心に向かって伸びます。 この性質を『重力屈性』といいます。 その後、主根から『側根』と呼ばれる枝根が出てきて、横方向か斜め下方向に伸びていきます。 これも重力応答によって制御されていて、それぞれを『横重力屈性』、『傾斜重力屈性』といいます。 つまり地上では、根は必ず下か横に向かって伸び、けっして地上に向かって上に伸びることはありません。 ところが、98年の実験では、側根はバンザイするように胚軸の方向に伸びました。 無重力ですから上も下もありませんが、これは、水分の多い方向に伸びたものと思われました」

具体的に説明していただけますか。

「根の先端には、重力や水分などの刺激を感じる細胞があります。 つまり、根は重力屈性だけでなく、水分の多い方向に伸びる水分屈性を発現することができるんです。 ただ、ふつうは水分屈性よりも重力屈性を強く発現するため、根が水分の多い方に伸びることを科学的に証明するのは困難で、重力を感じない突然変異を用いたエンドウマメを使って初めて証明されたくらいなんです(注:1985年に高橋教授らが証明)。 私たちがキュウリを用いて宇宙実験を行うまで、宇宙で水分屈性を観察した例はありませんでした。 向井さんにやって頂いた実験では、円筒形のシャーレの天井にスポンジを置き、そこにキュウリの種を、スポンジの反対方向に伸びるように差し込みました。 そして、スポンジに水を含ませてやったんです。 種が発芽すると、まず根が出てきますよね。 最初に出てくる主根は、あらかじめスポンジとは反対の方向に伸びるように差し込んでいますから、ある程度そのように伸びます。 ところが、側根をみると、驚いたことに横へ伸びるのではなく、その多くがバンザイをしていたんです。

バンザイをした根は水を含んだスポンジの方向に伸びていました。 これは一体何が起きているのかと思いましたね」

何が起きていたのですか。

「先ほどもいいましたように、地上では重力屈性が水分屈性を覆い隠すように働いています。 しかし、スペースシャトルの中は微小重力といって無重力に近い状態ですから、当然、重力屈性という現象は起こりません。 したがって、宇宙では重力という障害がなくなり、根はスムーズに水の多い方向へ伸びていった・・・と、そういう仮説が成り立ちます。 この仮説を宇宙実験できちんと証明したいというのが、今回のHydro Tropi実験の大きな目的となっています」



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