このページは、過去に公開された情報のアーカイブページです。リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。また、現在のWebブラウザーでは一部が機能しない可能性があります。
サイトマップ

スペシャルインタビュー vol.1


クルートレーニングで実験を紹介する大西先生。

微小重力を加味した宇宙放射線の長期的影響を調べる。宇宙実験棟「きぼう」だからこそ実現できた。

Rad Gene実験は簡単にいうとどういうものですか。

「宇宙空間の特徴は、大きく分けて『微小重力』と『宇宙放射線』です。 私たちは、そのうち宇宙放射線が人体にどういう影響を及ぼすかを遺伝子レベルで明らかにしようとしています。 ヒト細胞を宇宙に打上げて長期間宇宙放射線に曝露し、地上に戻ってきた細胞の遺伝子を解析して、被曝の痕跡を調べようというのが最大の目的です」

被曝の痕跡というと・・・。

「自然界からの刺激によって遺伝子が傷つけられた場合、ヒトにはそれを治そうとする力があります。 たとえば、紫外線にあたったら、紫外線による傷を治す酵素が活躍します。 なかには、色素性乾皮症といって、紫外線で生じた傷を治せずにがんになってしまうこともあるのですが、そういう病気の存在を知って、我々は、ヒトには遺伝子についた傷を治す力があるということを学んできたわけです。 今回の実験で特に注目しているのが『がん抑制遺伝子』です。 ヒトにはがん化を防ぐ遺伝子が生まれつき備わっているのですが、宇宙に行ったらその遺伝子の発現がどれくらい活発化するのか、宇宙放射線の中で生き延びようとする努力の限界がどれくらいなのか、それらをぜひ知りたいと思っています。 将来、宇宙長期滞在によってその限界を超えるような状況になった時、どの種類の放射線をブロックしておけばがんになることを防げるのか、今回の実験がそうした研究に発展していくことを期待しています」

実験の期間はどれくらいですか。

「およそ3ヶ月間『きぼう』のフリーザーの中でヒト細胞を保存し、宇宙放射線に曝露させます。 それから、その一部を1週間ほど宇宙で培養してみて、その過程でどんな現象が起こるかみてみようと思っています」

それは「きぼう」だからできる実験なのでしょうか。

「はい。 スペースシャトルでは長くても2週間ほどですからね。 それに、今までは、微小重力と宇宙放射線が同時にある環境でしか実験ができませんでした。 今回我々が使用する細胞培養装置には、『微小重力環境の細胞培養セル』と遠心力で地上と同じ1gをかけた『1g環境の細胞培養セル』が同居しています。 宇宙放射線は両方のセルに降り注ぎますので、『微小重力×放射線のもとで生じる現象』と『1g×放射線のもとで生じる現象』の二つを比較して考えることができるのです。 さらに、地上でもサンプルを準備しますので、先ほどの二つに『1gのもとで生じる現象』も加わります。 この三つを比較すれば、微小重力が加わることで宇宙放射線の影響が増大するのか減少するのか、地上で宇宙空間と同じ放射線を浴びたらどうなるか、などいろいろなことがわかります。 このような装置をきぼうに設置してもらえたことは、我々のこれまでの実験をさらに発展させるうえで非常に重要であると大いに期待しています」



1 | 2 | 3 | 4

次のページへ


Rad Geneトップページへ | 「きぼう」での実験ページへ | ISS科学プロジェクト室ページへ

 
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency サイトポリシー・利用規約  ヘルプ