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大学院時代 放射線医学総合研究所にて


ミトコンドリア研究者Douglas C. Wallace先生とのディスカッション

今回の宇宙実験の研究は、いつ頃から始められたんですか。

「もともと僕は基礎医学、なかでも放射線を使ったがん治療に興味があったんです。 その意味では、大学院に入学した時から放射線研究が始まっていたといえますね。 その後、放射線医学総合研究所(放医研)で、放射線のなかでも特に陽子線と中性子線の研究をしました」

宇宙放射線というのは、基礎医学で扱う放射線と同じですか。

「一口に宇宙放射線と言っても、実は1種類ではなく、何種類かの放射線が混在しています。 いちばん多いのが約7割以上を占める陽子線で、ほかに粒子線、ガンマ線などがあります。宇宙船内では、中性子線も多くなります。 僕が放医研でやっていた研究は、はからずも宇宙放射線につながる研究だったんです。 それから次第に、宇宙環境利用研究のコミュニティにも顔を出すようになりまして、自分の研究が宇宙にも通じることに気づきました」

馬嶋先生は、ミトコンドリアや活性酸素の専門家でもいらっしゃいますよね。

「ミトコンドリアというのは細胞の中にある小器官のひとつで、酸素を燃やすことでヒトが生きていくために必要なエネルギーをつくっています。 その際、一部の酸素が活性酸素に変わってしまうのです。 活性酸素が大量に発生すると、体中を酸化させ、老化やさまざまな病気を引き起こす引き金ともなります。 僕らは、放射線被爆後にミトコンドリアから活性酸素が生じることを発見しました」

ということは、強烈な宇宙放射線が飛び交う環境では、活性酸素が発生しやすいということですね。

「ええ。 僕らが危惧しているのはまさにそこなんです。 宇宙放射線に当たると、細胞に酸化ストレス障害を与える可能性があります。 今回の宇宙実験では、その点についてきっちり検証していきたいと思っています。 実は、細胞の中には活性酸素を無力化するための抗酸化酵素がもともと備わっています。 しかし、宇宙放射線などによって大量の活性酸素が発生した場合、それだけでは処理しきれず、細胞の致死率が高まるので、積極的に抗酸化物質を摂取するなどの対策が必要になると思います」



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