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スペシャルインタビュー vol.2


ケネディー宇宙センターの実験室にて、実験試料の準備を進める東谷先生(右)とチームメンバーの橋爪さん

準備した実験試料を蛍光顕微鏡で観察する東谷先生。 RNAiの効果が十分に見られるかどうか確認している。

先生は、実験試料としてなぜ線虫を選んだのですか。

「線虫を使いだしたのは98年頃だったと思います。 それまでは、おもに大腸菌などの単細胞生物を使った研究をしていました。 DNA→RNA→タンパク質という、いわゆる分子生物学のセントラルドグマの概念からいうと、大腸菌もヒトも共通の言語で読み解くことができます。 ただし、ヒトのように、1個の受精卵からはじまり60兆個の細胞にまで増える、という複雑な発生過程を考えると、やはり大腸菌のような単細胞生物では限界があります。 そこで、大腸菌とヒトの中間に位置する、モデル生物の線虫を選んだというわけです」

宇宙実験に線虫を使うメリットは。

「多細胞生物のなかで最初に全ゲノムが解読されたのは線虫なんです。 線虫には約2万個の遺伝子がありますが、そのうちおよそ4割がヒトに似ているため、ヒトのモデル生物として扱われています。 線虫を調べることでヒトへの影響を類推しやすい、というのがメリットのひとつですね。 あと、卵から大人になるまでが約3.5日と、ライフサイクルが非常に短いのも特徴です。 卵から赤ちゃんが孵化して、成長して大人になり、老化していく、という一生の過程はもちろん、世代交代も短期間でモニタできるわけです。 また、線虫はたいへん面白い虫でして、卵から孵化したての状態では、餌となる大腸菌がない状況でも2週間ほどは生き延びられるんです。 その間はじっと我慢していて、餌を与えられてはじめて成長を開始し、約3.5日で大人になります。 そのため、シャトルで打ち上げ、ISSにドッキングして実験が開始されるまでの間、餌の心配をする必要がありません。 こうした特長を考えると、さまざまな制約がある宇宙実験では、線虫は非常に優れた材料だと思いますね」

先生にとって線虫はどんな存在ですか。

「まあ、研究のよきパートナーといったところでしょうか。 線虫のおかげで今の自分があるわけですし、宇宙実験の機会もあたえてもらったわけですから。 もっと線虫に感謝しないといけませんね(笑)。 それはともかく、彼らの動きを見ていると、とても面白いですよ。 もちろん、線虫は何も語りませんが、溶液中の泳ぎ方や産んだ卵の数、あるいは産んだ卵が孵化しないとか、そういった目に見えるかたちでメッセージを伝えてくれる。 言葉は通じなくても、ときに語り合えているような気になります。 単純な多細胞生物ではありますが、たいへん奥の深い、面白い生き物だと思っています」

もしかして、個人的に線虫を飼っていらっしゃるとか。

「いや〜、さすがにそれはありませんね(笑)。 可愛いとは思いますけど、ペットとして飼おうとは思いません(笑)。 卵は肉眼では見えないくらいですし、大人でも体長1ミリほどの、本当に小さな虫ですからね」



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