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宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟による本格的な宇宙環境利用に先立ち、ISSのロシアサービスモジュール等を利用し、応用利用分野の宇宙実験として、3次元フォトニック結晶(3DPC)生成技術を開発しています。
3次元フォトニック結晶(3DPC)とは、光の波長程度の周期で屈折率が変化する物質であり、光の伝搬特性を3次元的に制御することが可能です。特定の波長の光の反射、閉じ込めといった光学特性を持つフォトニック結晶を用いることで、小型な素子を構築することができ、新たな光学機能素子としての応用が期待されています。
本プロジェクトで作製する3DPCは、コロイド結晶を弾性ゲルで固定し、圧縮により格子間距離を自由に変えることができます。すなわち、1つの素子でさまざまな波長に対応可能な素子の作製を行います。
本プロジェクトが目指す光学的に安定した3DPCの生成には、高屈折率(高比重)の微粒子を用いる必要がありますが、微粒子の比重が大きくなるにしたがって、地上では重力により結晶構造にゆがみを生じ、均一な大型結晶は生成できません。そこで、宇宙での微小重力環境を利用し、高屈折率(高比重)の微粒子を用いた大型の3DPCを生成します。
試料を充填した実験セルを打上直前に装置に設置します。その後、軌道上で電源をONすることにより、実験シーケンスを開始します。
結晶を一方向に成長させる手法は、地上におけるシリコンなどの半導体結晶の製造などでも用いられており、結晶を高品質に大型化するために必要な技術です。コロイド微粒子を用いたフォトニック結晶の作製においても必要な技術であり、この実験で、宇宙でコロイド結晶を一方向に成長させ、ゲルで固定して地上へ回収する技術を世界で初めて実証しました。
これにより、宇宙でできた結晶がフォトニック結晶としてどのような特性を持っているかなど、地上で詳細に評価することが可能となりました。地上と比較して結晶の均一性が向上することや、それまで地上では実現困難だった直径200ナノメートルのシリカ微粒子を使ったミリメートルサイズの結晶を作ることにも世界で初めて成功しました。
この実験では、無重力がフォトニック結晶の作製に有効に働くことが確かめられた一方、課題も見つかりました。結晶成長の速さを制御するための実験セル構造がうまく働かないなどの理由で、目標としたセンチメートルサイズの均一結晶はまだ得られておりません。結晶のもととなる微粒子の作製プロセスの難しさや、今回採用した結晶成長法では重力の効果に隠れて地上では観測できなかった重力以外の要因による結晶の不均一性が残ることも確認できました。現在は、これらの課題を克服する新たな結晶成長法などを確立し、「きぼう」での次の実験機会に向けて、実験提案の検討や地上での確認試験を行っています。
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