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「きぼう」での実験

「きぼう」日本実験棟において、神経細胞を使って宇宙放射線の影響を調べる実験が開始されました

最終更新日:2010年4月10日

※日付は日本時間

「きぼう」日本実験棟の細胞培養装置(CBEF)を使用して実施する、「宇宙放射線と微小重力の哺乳類細胞への影響(通称Neuro Rad)」(代表研究者:馬嶋秀行 鹿児島大学大学院教授)が開始されました。


実験に使用されるサンプルは、4月5日(月)にスペースシャトル「ディスカバリー号」(STS-131ミッション)で保温状態で打ち上げられました。国際宇宙ステーション(ISS)に到着後、4月8日(木)20時45分に筑波宇宙センターからのコマンドにより実験が開始されました。

Neuro Rad実験では、ヒトの神経細胞を使ってふたつのポイントから宇宙放射線の影響を調べる実験です。

ひとつめは、宇宙放射線がどんな遺伝子に影響を及ぼしているかを網羅的に調べます。2つめは、細胞の中にあるミトコンドリアを介したアポトーシス(プログラム化された細胞死)に関わっている遺伝子を突き止めようとしています。

宇宙では、細胞を微小重力区と1Gの重力区で37℃で培養します。実験開始15日目と29日目の細胞を、化学的に処理してその状態を保ったまま保存し、冷凍して回収します。

地上に回収した後は、遺伝子の発現状態を調べ、遺伝子の働きをを網羅的に解析します。特に、細胞内でエネルギーを作りだしているミトコンドリアの働きに関わった遺伝子、タンパク質についても調べます。また、宇宙放射線の影響は遺伝子に直接的に影響を及ぼすだけではなく、細胞内に活性酸素を発生させます。この活性酸素は、細胞の機能低下や老化を引き起こすと考えられています。今回実験した細胞を使って、活性酸素に攻撃された物質、活性酸素を退治する酵素についても調べ、宇宙放射線による間接的な影響も解析します。

この実験を通して、ミトコンドリア関連、アポトーシス関連の遺伝子やタンパク質の働きを解析し、宇宙放射線に長期間さらされた神経細胞が受ける影響について、具体的な情報を得ることが期待されます。

実験は5月6日(木)まで実施され、サンプルはスペースシャトル「アトランティス号」(STS-132ミッション)で回収される予定です。

Neuro Rad実験の詳細はこちらをご覧ください。

 Neuro Rad実験紹介ページ:「宇宙放射線と微小重力の哺乳類細胞への影響」


【代表研究者 馬嶋秀行 鹿児島大学大学院教授のコメント】

今まで、ケネディ宇宙センターで準備をして、最後の3日間で7時間の睡眠と、かなり大変でしたが、無事に滞りなくスペースシャトルの打ち上げを見守ることができました。今日、サンプルが「きぼう」に移され、実験開始ができて、うれしい気持ちでいっぱいです。この実験を支えてくださった方々に感謝の気持ちでいっぱいです。


馬嶋秀行 鹿児島大学大学院教授

筑波宇宙センターの実験管制室で実験開始の様子を見守る
馬嶋秀行 鹿児島大学大学院教授(写真右)

 
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