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「きぼう」での実験

「きぼう」日本実験棟初の燃焼実験装置「GCEM」が、日本燃焼学会から表彰されました!

最終更新日:2017年12月12日

日本燃焼学会が主催する、第55回燃焼シンポジウム(11月13-15日: 富山国際会議場(富山市))にて、「きぼう」日本実験棟搭載用(宇宙実験用)の液滴群燃焼実験供試体(Group Combustion Experiment Module: GCEM)の開発功績が評価され、平成29年度日本燃焼学会表彰として技術賞を受賞しました。表彰式は11月14日に行われ、GCEMの装置開発関係者(企業、JAXA、大学)に表彰状と盾が手渡されました。

この技術賞は産業界が対象者になるのが通例のようですが、GCEMは、大学研究者(山口大学の三上先生、日本大学の野村先生)の発想をベースに、JAXAと企業(株式会社IHI検査計測)が協力し、「きぼう」初の燃焼研究用の実験装置開発を達成し、軌道上での燃焼実験の成功に寄与した点が評価され、開発に関わったメンバー全員が対象者になりました。

平成29年度日本燃焼学会技術賞の発表画面

平成29年度日本燃焼学会技術賞の発表画面(出典:JAXA)

表彰式に参加した受賞者と日本燃焼学会の藤田会長

表彰式に参加した受賞者と日本燃焼学会の藤田会長(出典:JAXA)


このGCEM、大西卓哉宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在中に「きぼう」に取り付けてくれました。大西宇宙飛行士も、歴史ある日本燃焼学会で表彰されることを喜んでくれることでしょう。

GCEMの取り付け作業を行う大西宇宙飛行士

GCEMの取り付け作業を行う大西宇宙飛行士(2016年9月撮影)
(出典:JAXA/NASA)

意外と身近にある燃焼現象。

燃焼という現象は、生活の身近なところにあります。自動車や航空機のエンジンをはじめ、火力発電所や様々な工場などでは、動力や発電、加熱のためのエネルギー源として燃料を燃焼させています。その中でも乗り物のエンジンでは、パワーの大きさや使い勝手の点でメリットがある液体燃料を燃やすことが多く、自動車ではガソリンや軽油、航空機では灯油に近いジェット燃料、船舶では重油の燃焼を通じてエネルギーを得ています。

ちょっと専門的になりますが、これらの燃焼では、液体燃料を霧状の小さな粒にして、蒸発する表面積を広げて、空気との混合を促進させています。この場合、大きさが異なる多数の液滴の蒸発、混合、着火、燃焼が同時進行するため、メカニズムが複雑となります。自動車のエンジンなどでの燃焼を更に効率的に行うためには、こういった複雑なメカニズムの解明が必要で、燃焼現象の予測手法を確立させようという研究が進んでいます。

微小重力環境での燃焼実験は日本が初。

微小重力環境を用いた燃焼研究は、日本発祥のものだということをご存知ですか。1950年代に日本の研究者が世界で初めての落下実験を行いました。落下実験施設を使って、地上で微小重力環境を模擬して行われた地上での実験ですが、それ以降、微小重力を用いた燃焼研究は世界各国で行われるようになりました。日本でもこれまでに、6分間の小型ロケット、数秒から20秒の落下実験施設や航空機などで短時間の微小重力環境を地上で作りだして、実験を行ってきました。

宇宙で行う燃焼実験の魅力。

「燃える、燃焼」という現象は、きわめて高速に行われる複雑な現象です。とても高性能な高速度カメラでも、その真の姿をとらえることは難しいです。着火して、燃焼して、火が消えるまでの一連の過程が連続的に続いているのですが、そのメカニズムを正確に知るには、一つ一つのステップを細かく調査して、それがどのように連続してつながっていくのかを見ていく必要があります。微小重力環境では、地上と異なり対流が起こらないため、燃焼という現象そのものを対流に邪魔されずに詳しく観察することが可能になるのです。

GCEMを使った燃焼実験のすごさ。

GCEMを使用した燃焼実験は、これまでの地上研究で得られた1個、あるいは数個の液滴の燃焼研究の成果を受けて、多数の液滴から構成される噴霧燃焼の予測手法を実現するための実験となります。

スペースシャトルやISSでも、液滴の燃焼実験は、これまでにもNASAにより行われていますが、液滴の数は多くても数個でした。それに対し「きぼう」でのこの実験では、最大で150個以上の液滴を一度に作り、燃焼する様子を観察しました。多数の液滴間の燃え広がりが微小重力環境下で観察されるのは世界初であり、より実際のエンジンなどに役立つ成果や発見が得られるものと期待されます。

今までの液滴燃焼実験では、各液滴の位置は支持するための棒などに固定されていて自由に動くことができないのが一般的でした。しかし、エンジンなどでの実際の燃焼では、液滴は外力を受けて空間中を自由に動きます。この実験では、特殊な処理により表面の摩擦を非常に小さくした細い1本のファイバ上に液滴を複数作り、液滴間の燃え広がりを観察する実験も行いました。

火炎が燃え広がる際に、各液滴はファイバ上を制約されずに動くことができるため、液滴の移動が火炎の燃え広がりに与える影響を世界で初めて観察しました。液滴移動の影響を数値シミュレーションに正しく反映することにより、更なる高精度化につながると期待されます。

「きぼう」で初めての燃焼実験が始まりました。「ランダム分散液滴群の燃え広がりと群燃焼発現メカニズムの解明」 (JAXAと山口大学との共同実験)
 
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