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「微小重力環境を利用した2次元ナノテンプレートの作製」(以下、「ナノテンプレート実験」)を開始しました。
ナノテンプレート実験は、宇宙でナノレベルの物質(ペプチド-PEG※1)を板状のプレート(基板)の上に規則的に配列させて、凹凸(マスクパターン)を作る実験です。この基板を地上に持ち帰り、化学処理して凹凸を固定化し、2次元ナノテンプレートを作製します。この2次元ナノテンプレートの表面の凹凸は、スタンプの要領で電子材料基板に転写され、半導体素子などが作られます。小型化・高機能化が進む半導体産業などに応用することを目指した実験です。
実験に使用されるサンプルは、4月5日(月)に、山崎宇宙飛行士が搭乗したスペースシャトル「ディスカバリー号」(STS-131ミッション)で国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げられ、ISSに到着後、「デスティニー」(米国実験棟)の冷凍・冷蔵庫(MELFI)で保管されていました。
宇宙飛行士によりペプチド-PEG溶液と基板を隔てたストッパーを外し、7月9日(金)19時43分から実験を開始しました。実験試料はMELFIで約3ヵ月成長を続けた後、次に打上げられるスペースシャトルにより地上に回収されます。
地上では、基板表面へのペプチド-PEGの供給が早く、ペプチド-PEG分子が基板上に整然と並ぶ前に次々に並んでいくため、並ぶ向きに乱れが生じてしまいます。また、基板表面上にたどり着く前にペプチド-PEG同士が合体し、基板上に沈降することでランダムな配列を形成してしまいます。
微小重力環境では、対流が抑えられるためペプチド-PEGがゆっくりと基板表面へ供給されて(拡散のみの供給となる)、ペプチド-PEGはゆっくりと並んでいき、広い面積にわたってきれいに並んだパターンが作られます。
半導体素子は、コンピュータや携帯電話など、様々な製品に使用されています。2次元ナノテンプレートは、これら電子機器向けの半導体素子を生み出す「もと」になります。
宇宙で作ったナノテンプレートは、地上に比べて良質であるため、そこから生み出される半導体も良質=高性能なものが得られると考えられています。これにより、コンピュータの高性能化、日本がトップシェアを誇る青色発光ダイオードへ、半導体を使った製品の製造コストの削減などといったところへの貢献が期待できます。
【研究チームのメンバー 田中正剛 名古屋工業大学助教のコメント】
私どもにとって初めての宇宙実験に携わる機会でした。まずは、宇宙実験の準備についてご尽力いただいたJAXAはじめ関係の方々に感謝いたします。普段は実験室で触れている高分子が、現在、宇宙ステーションに滞在中かと思うと感慨一入です。この宇宙飛行高分子が、微小重力場でどのような構造をとりたがるのか学術的な興味も尽きないところですが、本プロジェクトで最も重要な「産業に与えるインパクト」の観点からも、微小重力への期待感が膨らむばかりです。
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