このページは、過去に公開された情報のアーカイブページです。
<免責事項> リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。また、現在のWebブラウザーでは⼀部が機能しない可能性があります。
最新情報については、https://humans-in-space.jaxa.jp/ のページをご覧ください。
「きぼう」で行われた小動物飼育ミッションでは、人工重力環境と微小重力環境で同時長期飼育を行いました。「きぼう」において長期飼育したマウスの骨と筋肉の変化を分析したところ、人工重力環境(1G)と微小重力環境(μG)とでは、マウスの骨と筋肉の量に顕著な差が見つかりました。「重力条件だけが異なり、それを同時比較できる」実験環境は「きぼう」ならではの特徴であり、重力という環境に起因したエピジェネティックな変化の発見が今後期待されます。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と筑波大学では、国際宇宙ステーション・「きぼう」日本実験棟において、世界唯一となる遠心機付き生物実験装置を用いて、平成28年7月から8月にかけて35日間、マウスの長期飼育を行いました。世界でも日本だけが持つ軌道上での人工重力環境(1G)と微小重力環境(μG)の飼育環境において、それぞれ6匹ずつ個別飼育するという純粋に重力影響を比較する世界初の宇宙実験です。
「きぼう」において長期飼育したマウスの骨と筋肉の変化を調べたところ、明らかな違いがみられました。
(1)骨組織の変化(東京医科歯科大学チームによる解析)
力学的過重の影響を受ける大腿骨組織のmicroCT解析を行ったところ、1G環境にいたマウスに比べてμG環境のマウスは、大腿骨内部の海綿骨(※)が劇的に減少していることがわかりました。海綿骨の構造解析や骨塩量を調べたところ、海綿骨の数や海綿骨部位の骨塩量の減少が見られ、重度の骨粗鬆症を発症していることがわかりました。
これまで宇宙滞在による骨量の減少が起こることはわかっていましたが、そのメカニズムについてはほとんど明らかにされていません。今後は、骨代謝を担う細胞における遺伝子発現やエピゲノム変化を明らかにし、微小重力に起因する骨量減少の分子メカニズムに迫ります。
(2)筋肉の変化(筑波大学チームによる解析)
抗重力筋の一つであるヒラメ筋(ふくらはぎにある骨格筋)の筋重量変化を見たところ、1G環境にいたマウスに比べてμG環境のマウスの筋重量は10%減少していることがわかりました。
更に、次世代シーケンサによる網羅的な遺伝子解析では、2つの重力環境の違いで、約4万の遺伝子のうち300の遺伝子で発現の変化がみられました(右図、発現の低い遺伝子から高い方へ、黒--赤--黃--緑で示して、発現の変化をわかりやすく示しています)。予備的な解析ですが、重力に対抗するために発達した抗重力筋に対して、筋萎縮がおきていることが判明しています。これまで、宇宙での飼育は地上と宇宙との比較対象が中心でしたが、今回初めて重力環境の違いだけを識別することができます。 ヒラメ筋は、宇宙に長期滞在すると機能低下が進む筋肉のひとつです。今回の遺伝子発現の変化が、エピゲノム的な変化による環境適応の反応からもたらされるものかを、今後、検証していきます。
○エピゲノム変化とは
DNAの塩基配列を変えることなく、遺伝子の働きを決める仕組みのことで、後天的な環境要因などによる。宇宙では、骨量減少、筋萎縮、前庭機能低下など、寝たきり・高齢者等に見られる生物影響が加速的に変化していますが、それが地上とは顕著に異なる微小重力という環境変化が影響しているのではないかと推測しています。宇宙飛行士の身体変化として、骨は地上の10倍、筋肉は地上の2倍の速さで減少することが知られています。
○関連リンク
・筑波大学 高橋研究室 http://www.md.tsukuba.ac.jp/basic-med/anatomy/embryology/ |
・東京医科歯科大学 浅原研究室 http://www.tmd.ac.jp/grad/syst/asahsyst/index.html |
・文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)平成27~平成31年度 「宇宙に生きる宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解~宇宙にいきる~」 篠原研究班 http://living-in-space.jp/public-research/A02-1/ |
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency | SNS運用方針 | サイトポリシー・利用規約 |