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宇宙航空研究開発機構(JAXA)、筑波大学、大阪大学は、国際宇宙ステーション・「きぼう」日本実験棟において、世界唯一となる遠心機能付き生物実験装置をもちいて、マウスの35日間の長期飼育を達成しました。
この長期飼育は、世界でも日本だけが持つ、軌道上での人工重力環境(1G)と微小重力環境(0G)の同時飼育によるもので、純粋に重力影響を比較する世界初の宇宙実験となります。そして、この35日間の1G vs 0G 影響比較の研究をすすめ、飼育全数の生存帰還に成功しました。
今回の長期飼育された12匹の雄マウスは、平成28年7月19日(日本時間)に米国フロリダ州より打ち上げられ、8月27日米国カリフォルニア州に全数健康な状態で地球に帰還いたしました。その後、筑波大学、大阪大学の連携により、宇宙マウス(宇宙の0Gと1Gの環境で飼育して帰還したそれぞれのマウス)を親とした次世代(仔マウス)が9月28日に誕生しました。
宇宙飛行士が宇宙に長期間滞在すると、重力が無い環境に慣れることで、前庭機能低下(バランス感覚の低下)・体液シフト(体液が上半身の方に過剰に供給される)、下肢筋萎縮・骨量減少など、高齢者の長期臥床(寝たきり)に似た症状がみられることが良く知られています。多くの研究者が高齢者の寝たきりによる身体の機能低下の原因解明に取り組んでいますが、まだ明らかになっていません。今回の飼育実験成功により、従来にない新しい視点での研究が生み出され、これらの身体の機能低下を抑える新薬が見出されることが期待されます。また、長期的に宇宙に滞在した影響が、親の世代から子供の世代にどのように受け継がれていくかなど、将来の遠い宇宙での人類の生活の足場となる基礎的な知見の蓄積が期待されます。
仔マウスの誕生に加え、宇宙滞在した親マウスの身体の変化の一次評価を終えました。脚の筋肉の減弱や身体の脂肪の蓄積、肝臓組織の変化など、高齢者の身体の機能低下(特にサルコペニア)に似た兆候が、宇宙飼育マウスで観察されています。今後、超高齢化社会である日本のもつ問題解決のきっかけとなるよう、宇宙に滞在したマウスの遺伝子レベルでの詳細な研究を進めていく予定です。
なお、宇宙での給餌や飲水用の水交換などのマウスの飼育とその支援について、宇宙飛行士と地上の運用管制チーム、獣医師を含むマウス健康管理チーム、実験装置の開発チームが一丸となって宇宙マウスの健康状態や装置の健全性を24時間体制で観察・管理支援し、世界初の全数生存帰還を実現しました。
※ 小動物飼育装置(MHU)について
※ 宇宙空間でのマウス映像について(動画)
※ 宇宙マウスを親とした次世代(仔マウス)誕生について
関連リンク |
・筑波大学 高橋研究室 http://www.md.tsukuba.ac.jp/basic-med/anatomy/embryology/ |
・大阪大学 伊川研究室 http://www.egr.biken.osaka-u.ac.jp/information/ |
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