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「きぼう」での実験

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「きぼう」で生成したタンパク質結晶の顕微鏡観察速報!!(帰還3日後速報)

最終更新日:2015年9月17日

9月12日に国際宇宙ステーションから地上に帰還したタンパク質結晶サンプルは、宇宙での結晶化状況を把握するため、9月15日に早速、サンプルの取り出し並びに顕微鏡観察を実施しました。得られたタンパク質結晶は研究者に順次渡され、SPring-8等の放射光施設を利用した解析作業に進みます。

JAXAが行った顕微鏡観察したタンパク質結晶の一部を速報でご紹介します。

①ヒト・ペット用人工酸素運搬体(輸血代替物)の開発
代表研究者:中央大理工学部 小松晃之教授

【テーマ概要】
中央大学・小松教授の研究グループは、天然に存在するタンパク質を人工的に改変して、2013年に新しい人工血液の候補を開発しました。現在、宇宙実験を通じた詳細な構造データを取得し、製品化に向けた安全性・有効性に関する知見を獲得することを目指しています。
今回、宇宙実験で得られた結晶は 地上検討で得られた結晶と比較して、サイズの大きな結晶が得られており、これまでに地上研究で得られているデータより良好なデータが得られると期待できます(下画像)。
本研究の成果は大規模災害時の救急医療や少子化に伴う献血液不足を解決できる長期備蓄可能な人工血液の実現につながると期待されます。

地上検討で得られている結晶

地上検討で得られている結晶
(©中央大/JAXA)

宇宙で得られた結晶(顕微鏡観察画像)

宇宙で得られた結晶(顕微鏡観察画像)
(©中央大/JAXA)

矢印

人工血液の候補となるタンパク質の結晶画像

②ヒトiPSの検出・除去のためのプローブの研究開発
代表研究者:産業技術総合研究所 久保田智巳 主任研究員

【テーマ概要】
産総研のグループでは分化した体細胞の増殖や生存には影響を与えずに、未分化なヒトiPS/ES細胞を選択的に除去することが可能なプローブ(※)を開発しました。
ヒトiPS/ES細胞はさまざま疾病を根本的に治癒する再生医療に有用として大きな期待が寄せられていますが、全てのヒトiPS/ES細胞を目的の細胞に分化させることは現状困難であり、一定数の未分化な状態のヒトiPS/ES細胞が残存してしまう場合があります。その際、移植したiPS/ES細胞から後に腫瘍形成を引き起こす可能性があるため、移植用細胞に残存する未分化のヒトiPS/ES細胞を除去する目的でプローブが開発されました。このプローブは、ヒトiPS細胞を生きたまま可視化できるもので、移植用に作製された細胞に残存するiPS細胞を可視化し、除去することで、iPS細胞の再生医療への応用を加速することができると期待されているものです。
今回、宇宙実験で得られた結晶は 地上検討で得られた結晶と比較して、外形の異なる結晶が得られており、これまでの地上研究で得られていない良好なデータの取得が期待できます(下画像)。
本研究では、宇宙実験で得られた結晶から詳細な構造データを取得し、どのように結合しているかを調べることによって検出感度を高めるなど、ヒトiPS細胞の品質管理に有用なプローブの更なる高度化に寄与することが期待されています。

地上検討で得られている結晶

地上検討で得られている結晶
(©産総研/JAXA)

宇宙で得られた結晶(顕微鏡観察画像)

宇宙で得られた結晶(顕微鏡観察画像)
(©産総研/JAXA)

矢印

ヒトiPS細胞に特異的に反応するタンパク質の結晶画像

※プローブ:ある特定の分子や細胞を検出する際に用いる物質のこと。

③多剤耐性菌・歯周病病原菌の抗菌剤の研究開発
代表研究者:岩手医科大学薬学部 阪本泰光助教

【テーマ概要】
阪本助教らのグループは宇宙実験を通じて、タンパク質やペプチドを栄養源とする多剤耐性菌や歯周病原因菌の生育に重要なペプチド分解酵素の立体構造および基質認識機構をこれまで解明してきました。

今回、宇宙実験で得られた結晶は 地上検討で得られた結晶と比較して、外形の異なる結晶が得られており、これまでの地上研究で得られていない良好なデータの取得が期待できます(下画像)。

研究者グループは、阻害剤(薬の候補)の探索、合理的な開発を行うため、阻害剤候補化合物との複合体の立体構造解析を目指しています。これらの成果は治療が困難な院内感染症の原因となる多剤耐性菌に対する新たな抗菌薬や歯周病治療薬の開発につながると期待されます。

地上検討で得られている結晶

地上検討で得られている結晶
(©岩手医科大/JAXA)

宇宙で得られた結晶(顕微鏡観察画像)

宇宙で得られた結晶(顕微鏡観察画像)
(©岩手医科大/JAXA)

矢印

歯周病原因菌の生育に重要なペプチド分解酵素の結晶の画像

 
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