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2015年1月10日にファルコン9ロケットで打ち上げられたドラゴン宇宙船には「エピジェネティクス」と題された実験の材料が搭載されています。
東北大学の東谷篤教授によるこの実験は、生物が宇宙で世代を重ねることによって、突然変異(DNA塩基配列の変化)以外にも形質の安定した変化が現れるか否かを調べることを目的としています。その結果は、宇宙環境への適応メカニズムや、宇宙での長期滞在技術の開発に役立つと期待されます。この実験のためには、世代時間の短いモデル生物が適しています。小さな非寄生性の線虫であるCエレガンス(Caenorhabditis elegans)はその目的に適っています。
Cエレガンスは生物学や医学の研究に広く用いられています。20℃で飼育すると寿命は2-3週間、世代時間は4日程です。宇宙で初代の線虫を、液体培地と餌となるバクテリアを入れた培養袋の中で飼育します。4日後に子虫が生まれます。体長約1㎜の親虫をフィルターで除いて、ずっと小さな子虫だけを新しい培養袋に移します。第2世代は成長を続けて4日後に第3世代の子虫が生まれます。同じ手順を繰り返して第5世代の線虫を誕生させます。全ての世代の線虫を凍結して詳しく解析するために地上に回収します。第4世代と第5世代の線虫の一部は地上で更に飼育してその子孫と宇宙世代とを比較します。形質の変化が見つかれば、それが突然変異によるものかそれともエピジェネティックな変化であるのかを調べます。
遺伝子発現は、遺伝子の情報(DNAの塩基配列)に基づいて生体の活性物質を合成する過程であり、複雑で精巧なメカニズムによって制御されています。エピジェネティックな変化とはこの遺伝子発現制御の変化を意味します。DNA分子やヒストン等の結合するタンパク分子への安定な化学修飾は細胞の遺伝子発現能力に影響します。遺伝子発現は遺伝子をコードしていない領域の転写産物であるマイクロRNAによっても制御されています。エピジェネティック制御は発生や分化、環境への適応応答、老化等にも関係する重要な働きを担っています。
試料は2月12日にドラゴン宇宙船で地上に戻ってきました。どのような変化が生じているか、解析の結果が待たれます。
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