このページは、過去に公開された情報のアーカイブページです。
<免責事項> リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。また、現在のWebブラウザーでは⼀部が機能しない可能性があります。
最新情報については、https://humans-in-space.jaxa.jp/ のページをご覧ください。
国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに搭載した全天X線監視装置(Monitor of All-sky X-ray Image:MAXI)の観測により、はくちょう座方向に"極"超新星爆発の痕跡を見つけました。この爆発は、通常の超新星爆発の100倍も大きなもので、その規模から"極"超新星だと推定されました。我々の住む天の川銀河では、極超新星もその痕跡もこれまで見つかっておらず、今回が天の川銀河内での世界初の発見となります。
なお、銀河系外では極超新星は8つ程度、極超新星の痕跡は2つ程、見つかっています。(極超新星は爆発時に非常に明るく輝くため発見数が多いのですが、その痕跡は暗くて普通の超新星の痕跡との区別もつきにくく、発見が困難なため、痕跡の探索には精度のよいハッブル宇宙望遠鏡などが用いられています。)
MAXIに搭載されている、X線CCDスリットカメラ(SSC)は、MAXIの観測開始(2009年8月)以来、 全天にわたって広がっている高温度領域を観測してきました。その全天観測マップから、はくちょう座の方向に大きく広がった高温領域を確認し、これを解析した結果、およそ2~300万年前に爆発した"極"超新星の痕跡の可能性が高いとの結論に達しました。この成果は日本天文学会の欧文雑誌『Publication of Astrophysical Society of Japan (PASJ)』に受理されました。
(掲載論文のタイトル: "Is the Cygnus Superbubble a Hypernova Remnant?")
MAXIは、今も「きぼう」でX線観測を続けており、世界最速スピードでX線新星(ブラックホールの候補となる天体が多い)を発見するなど、多くの高エネルギー天体の監視によって興味ある成果をもたらしています。MAXI稼働以降に見つかったX線新星うちの大半はMAXIが発見したものです。見つかったいくつかの新星の詳細な観測データは、世界中の天文学者が研究しており、興味ある結果が得られています。それらの中には、これまでにないブラックホールの振る舞いを見つけたり、巨大ブラックホールに星がばらばらになって吸い込まれる瞬間を捉えた観測などがあります。また、2014年には、「高エネルギー電子・ガンマ線観測装置(CALET)」の打上げが予定されており、ますます、国際宇宙ステーションをプラットフォームとする観測が充実されます。
論文名:
"Is the Cygnus Superbubble a Hypernova Remnant?"
責任著者:木村 公(宇宙航空研究開発機構)
共著者:
大阪大学:常深 博、佐々木 将軍
宇宙航空研究開発機構:冨田 洋、上野 史郎
理化学研究所:杉崎 睦
宮崎大学:花山 喬則、吉留 幸志郎
MAXIチーム
【佐藤勝彦 自然科学研究機構長のコメント】
MAXIが、はくちょう座近辺にある半径1000光年にもなるスーパーバブルが一つの巨大な超新星の起源であることをつきとめた。このような巨大なバブルを作るためには、普通の超新星の 100倍もの爆発のエネルギーが必要で、これはハイパーノバの残骸と考えるのが当然だろう。そうだとすれば、初めてのハイパーノバ残骸の発見 となる。今後もさらに詳しい観測の解析によってハイパーノバの爆発メカニズムに関する情報が得られるかもしれない。ハイパーノバはガンマ線バースト天体を引き起こす大爆発であり、超高エネルギー宇宙線の起源天体としても考えられておりきわめて重要な発見である。また強い重力波を 放出すると考えられており、今後の解析から爆発についての情報が得られるなら、重力波放出についての示唆も得られるかもしれない。 MAXIは国際宇宙ステーションの日本実験モジュール「きぼう」の曝露部に設置されたものである。曝露部は日本実験モジュールのみに設けられたものであり、この特徴によって大きな成果が出たことは大変喜ばしいことだ。
【野本 憲一 東京大学 国際高等研究所・カブリ数物連携宇宙研究機構 特任教授・主任研究員のコメント】
極超新星は、発生頻度は高くありませんが、その巨大な爆発エネルギーによって、周囲のガスのみならず、銀河全体の進化に大きな影響を与えます。そのような珍しいイベントが銀河系内でも起きたという現場を確認できたとすると、大変重要な発見だと思います。
Copyright 2007 Japan Aerospace Exploration Agency | SNS運用方針 | サイトポリシー・利用規約 |