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「きぼう」船外実験プラットフォーム利用の必需品
「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームでは、宇宙空間に露出した状態で実験や観測を行うことができます。「きぼう」船外実験プラットフォームには、実験装置用に10箇所の取付け場所があり、実験に必要な電力の供給やデータ通信などを行うことができます。さらに、「きぼう」船外で実験装置を取付け場所まで運び、取り付ける役目のロボットアームも備えています。また、スペースシャトルに実験装置を搭載する船外パレットおよび宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)に実験装置を搭載する曝露パレットは、「きぼう」船外実験プラットフォームへ一時的に設置して、実験装置を移送する際の仮置き場所として使用されます。
地上の実験に例えると、「きぼう」船外実験プラットフォームは“実験室”、ロボットアームは“天井クレーン”、船外パレットおよび曝露パレットは“トラックの荷台”といえます。しかし、実験装置をトラックに積んで運ぶためには、実験装置を梱包して荷台に固定し、クレーンで運ぶためのフックをつけておく必要があります。さらに、トラックから降ろして実験室に装置を入れるときは、雨風に耐えられるような処置も必要です。実験室にやっと持ち込んでも実験室のコンセントに繋ぐためにはアダプタが必要です。
そこで、これらの役割を担うのが共通バス機器部(APBUS)です。つまり、共通バス機器部は船外実験プラットフォームの必需品なのです。共通バス機器部は以下の5種類から構成されます。
ミッションインタフェース構造部(Mission Interface Structure: MSTR)は、実験機器の入れ物として、打上げや回収時の厳しい環境に耐えられるように設計されています。実験装置の打上げには、曝露パレットや「きぼう」船外実験プラットフォーム上で運搬されるロボットアーム、実験時には「きぼう」船外実験プラットフォームと、多くの機器で組み合わされます。これらの機器と組み合わせるには、それぞれ質量や重心など条件が多くあり、実験装置はこれらの条件を全て考慮しなければなりません。ミッションインタフェース構造部は、これらの条件を全て満たしており、これを使用することで問題は解消されます。
「きぼう」では宇宙や航空関係で使用される特殊な通信方法を用いているため、地上で作成した実験機器をそのまま使用することはできません。そこで、実験機器と「きぼう」の間の通信を中継し、「きぼう」での通信を可能とするのが通信制御部(Attached Payload Remote Terminal: APRT)です。通信制御部は、「きぼう」特有の通信方法を地上で使用される通信方法に変換します。さらに、そのチャンネル数を選ぶことができます。
「きぼう」船外実験プラットフォームでは、実験装置に120Vの電力が1系統供給されます。この120Vの電圧はISSに特有な電圧です。電力分配器(Power Distribution box for Attached Payload: PDAP)は、この120Vの電圧を人工衛星などで通常使用されている28Vに変圧します。また、複数の系統への分配も行います。
「きぼう」船外実験プラットフォームでは、実験装置が宇宙空間に直接さらされるため、太陽光が当たらないときは実験装置の温度はどんどん下がってしまいます。そこで、実験装置を保温するのがヒータ制御器(Heater Control Equipment: HCE)です。ヒータ制御器は実験機器の温度を検知し、設定された温度になるとヒータに電力を供給して実験機器を保温します。
「きぼう」船外実験プラットフォームを利用した実験装置の中には、伸展した状態で実験を行うことが必要な装置があります。このような実験を可能とするために開発されたものが伸展機構(Extension Mechanism Assembly: EMA)です。
伸展機構は伸展マスト、伸展機構駆動回路、打上げ時に伸展マストが間違って伸展しないための固定装置(ロンチロック機構)から構成されます。伸展マストの先に実験機器を取り付けた状態で、1m以上伸展します。また、必要に応じて伸展マストを元の位置に収納することもできます。伸展や収納は地上からの信号により自動的に行います。故障した場合にも、宇宙飛行士が船外活動により手動で伸展や収納を行うことが可能です。
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