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ISS計画は何カ国が参加しているのですか
1984年1月、レーガン大統領が一般教書において恒久的な有人宇宙基地を建設することを発表し、日本、欧州、カナダに対して参加を呼び掛けました。 1988年9月には政府間協定「常時有人の民生用宇宙基地の詳細設計、開発、運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府、欧州宇宙機関の加盟国政府、日本国政府及びカナダ政府の間の協定、Inter Government Agreement:IGA」が締結されました。
1998年1月には、ロシア、スイス、スウェーデンを加えた関係各国との間で政府間協定(正式名:民生用国際宇宙基地のための協力に関するカナダ政府、欧州宇宙機関の加盟国政府、日本国政府、ロシア連邦政府及びアメリカ合衆国政府の間の協定、Inter Government Agreement: IGA)が、またその後、NASAと各国の実施協力機関との間で了解覚書(Memorandum of Understanding: MOU)が締結されました。
国際宇宙ステーション計画への参加国は、政府間協定に定義されており、参加国は以下の通りです。 米、露、加、日、欧州11ヶ国(ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、スェーデン、スイス、イギリス)の15ヶ国です。
ISSの組立フライトのミッション番号(3A, 1J/A等)の付け方を教えて下さい
ISSの組立フライトは、以下のような意味でミッション番号が付けられています。
また1A/Rや1J/A、2J/Aという「/」がついたものはA/Rならアメリカとロシアのフライト、J/Aなら日本とアメリカのフライトという意味になります。つまり日本の船外実験プラットフォームなどが打ち上げられる2J/Aフライトは、日本とアメリカの飛行の2回目と言う意味です。
また、若田宇宙飛行士が飛行したSTS-92の場合は、3Aフライトと呼ばれますが、これはアメリカの3番目の組立フライトという意味になります。
ところが、このような番号の付け方は、ISS計画の初期段階に設定されたものであり、その後の見直しにより、どんどん変わっていってしまいました。先ほど説明した3Aフライトの場合は、その前に2A.1、2A.2a、2A.2bという追加の飛行が入り、アメリカによる6番目の組立フライトになってしまっています。さらに、先のフライトでは、13A、15A、10A、14Aという打上げ順序もあり、大変ややこしいことになっています。(注:これは2003年時点の情報です。実績としては、13A、13A.1、10A、1E、1J/A、1J、ULF2、15Aという順序になり、14Aは削除されました。)
これらの番号が、修正されないのは、開発や運用設計に携わっている技術者達が混乱しないように、順番が変わってもどのようなミッションのことかすぐに識別できるようにするために、このまま使われているのです。
ISSはどこから打ち上げられるのですか
ISSの打上げには、スペースシャトルを打ち上げるアメリカのフロリダ州ケープカナベラルにあるNASAのケネディ宇宙センターおよび、ロシアのロケットを打ち上げるカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地が使われます。
また、日本の種子島宇宙センターや、ケープカナベラル空軍基地、NASAのワロップス飛行施設からも、補給品などの輸送のための打上げが行われています。
ISSと地球の間をどうやって行き来するのですか
ISSは1日に地球を何周するのですか
SF映画のようにISSで重力を発生させることは出来ないのですか
ISSは、微小重力、宇宙放射線、広大な視野、高真空、豊富な太陽エネルギーなど宇宙という特殊な環境を利用して、様々な実験や観測を行うことを目的としています。よって、微小重力そのものを利用する施設です。
人工的に重力を発生させる装置として、ISSには、セントリフュージ(生命科学実験施設)という大型の研究モジュールが設置される予定でした。
セントリフュージは、重力環境が生物に与える影響について研究を行うための実験施設であり、装置を回転させ、遠心力を発生させることにより疑似重力を発生させます。人工重力を発生する重力発生装置の直径は2.5mありますが、生物や植物の実験に使われるものであり、人間用ではありませんでした。
なお、きぼう内に設置されている細胞培養装置(CBEF)には小型のセントリフュージが装備されており、軌道上で0Gと1G環境の同時比較実験ができるようになっています。
ISSはどのような姿勢で飛行しているのですか?
ISSの姿勢は、大きく分けてLVLH(エルブイ・エルエイチ)姿勢とXPOP(エックスポップ)姿勢が使われています。
以下の姿勢についての説明で使用する座標系は、下の図の通りです。
なお、ISSのモデルは、ISS組み立てフライト11A終了後のものを使用しています。
LVLH姿勢は、
ISSでは姿勢制御用のコントロール・モーメント・ジャイロ(CMG)を使って、Z軸を常に地球方向に向けるようにしています。
LVLH姿勢は、ISSの完成段階には最適な姿勢ですが、ISS組み立てフライト12A.1以前はISSがまだ十分な機能を持っていないため、太陽の位置によっては発生電力が不足してしまいます。このため、そういう時期にはXPOP姿勢という姿勢を取ります。
XPOP姿勢は、
この姿勢は、LVLH姿勢に比べて、
ISSの太陽電池パドルに関する用語で、Channel 2BやChannel 4Bとありますが、2Bや4Bとは何を表しているのでしょうか
ISSの太陽電池パドル(S4, S6, P4, P6トラスに取り付けられている)にはそれぞれ2つの電力供給チャンネルがあります。チャンネルは、1A, 1B, 2A, 2B, 3A, 3B, 4A, 4Bの計8チャンネルあり、奇数は右舷側(Starboard-side)、偶数は左舷側(Port-side)の太陽電池パドルからの供給系になります。また、Aは内側の太陽電池パドル、Bは外側の太陽電池パドルを表します。
初期段階でZ1トラスに取り付けられていたP6トラスは、2007年10月のISS組立てフライト10Aで左舷の外側に移設されましたが、電力チャンネルは移設後の状態に合わせた2Bと4Bという名称で使われていました。
ISSに係わる規則などは誰が決めているのですか
この中にはISSの運営、利用、運用、輸送、通信、資金、損害賠償、関税、技術情報の取り扱い、知的所有権、刑事裁判権といった内容についても細かく規定されています。それ以外にも、国際間にまたがる事項は、必ず国際間で合意した各種運用文書等で規定されています。
トラス名称について、なぜS2トラス/P2トラスは無いのですか
ISSのトラスは、1988年頃に検討されていた国際宇宙ステーション「フリーダム」時代の設計を引き継いで開発されました。
従って、フリーダム時代には、S2トラス、P2トラスはありましたが、トラスの長さを抑えて開発費用を削減するために外された結果、その部分の名前が欠番になったものと考えられます。
S0トラスをP0トラスと命名しなかった理由はなぜですか
P1トラスより先にS1トラスを取り付けるため、S0になったのではないかと考えられます。P1トラスを先に結合する計画であればP0トラスになったかもしれません。
なお、フリーダム時代は、S0トラスではなく、この部分はM0トラスと呼ばれていました。
人工衛星には金色の断熱材が貼ってあるのに、ISSは白いけどどうしてですか
人工衛星に貼ってある金色の断熱材は、多層断熱材(Multi Layer Insulation: MLI)と呼ばれるものですが、ISSの軌道は330~400kmと低く、周囲に浮遊している原子状酸素によるMLIの劣化が激しいため、ベータクロスというガラス繊維にアルミ蒸着したものを使っています。その表面はテフロンコーティングされていますが、このベータクロスが白く見えるのです。(これは、主にトラスで使われています。なお、ロシアモジュールでは白色ペイントも多用されています。)
また与圧モジュールにはデブリバンパが取り付けてあり、素材であるアルミの色をしています。 なお、MLIはトラス構造物および与圧モジュールではデブリバンパと与圧壁の間に必要に応じて貼られています。
ISS内部の環境維持はどのように行うのですか
ISS内部は地上と同じ1気圧に保たれます。ISSの壁は頑丈なアルミニウム合金で作られており、ISS外部の真空の宇宙空間との1気圧以上の気圧差にも十分耐えられるように設計されています。ISSを構成するモジュールどうしの結合部にはO(オー)リングというパッキングが挟まれており、ここから空気が漏れることのないようになっています。
こうしてISS内部は1気圧を保っているのですが、宇宙船の結合時や船外活動時のハッチの開閉や実験運用で行う真空排気、除去した二酸化炭素の船外への廃棄などによりわずかづつではありますが、空気が逃げていきます。船外へ逃げる空気の量は通常活動時で1日に約3.6グラム(2003年の時点のデータ)と言われています。 この逃げた分は、主にプログレス補給船で運ばれて補充されます。またスペースシャトルがドッキングした際にも酸素と窒素ガスがISSのエアロック外部に取り付けられた高圧の酸素タンクと窒素タンクに補充されていましたが、スペースシャトルが退役した後は米国の商業補給船がその役割を担うようになりました。
地球上の空気は、約21%の酸素と約79%の窒素から構成されています。厳密にはその他の微量な成分も含まれていますが、この2つさえあれば十分です。 ISS内の空気は絶えず循環されており、人間の呼吸により発生する二酸化炭素を除去すると共に、ほこりや微量の汚染ガスを取除いてきれいにし、湿度調節なども行われ、人間が快適に生活できる環境が維持されます。ISS内の空気はこのようにして1気圧の呼吸できる環境に保たれています。
ISS与圧室ではどうやって温度制御するのですか
ISSの中では様々な部分から発熱します。ISSを制御するための装置や実験装置など多くの機器が搭載されますが、これらの多くはISS内の室温を上昇させる原因となります。また、搭乗員自身も発熱しています。ですから、何も対策を講じなければISS内の室温はどんどん上昇してしまいます。
従って、 ISS内を快適な条件に保つための環境制御の役割は、大変重要なものです。環境制御の一部として実施されている温度制御の方法は簡単に言えばエアコンと同じです。
ただし、宇宙では地上と違って熱の対流が生じないため、常に与圧室内ではファンを回して空気を循環させなければなりません。また特に発熱する装置については、コールドプレートと呼ばれる、内部に水を循環させた板に取り付けて温度上昇を押さえます。
このようにして集められた熱は、ISS外部に取り付けられた大型のラジエータから宇宙空間へ放熱されます。
ISSの電力はどのようにして供給されるのですか
ISSは太陽電池で発電する電力により運用されます。ISSには表面に無数の太陽電池を張り付けた板のような平面の構造物が取り付けけられています。このような構造物を太陽電池パドルと呼びます。太陽電池パドルはISSが太陽光に照らされている軌道上の昼間に電力を発生し、各システムへ電力を供給しています。この時の余剰電力が蓄電池(バッテリー)に蓄積されます。
夜間には太陽電池からの電力は得られないので、昼間バッテリーに蓄めて置いた電力を使います。ISSの軌道では1日に16回の昼と夜が繰返されますので、このように太陽電池とバッテリーの電力を交互に使って運用を行います。
ISSのモジュールのひとつである「きぼう」日本実験棟は太陽電池を持っていないため、それだけでは機能できません。母屋となるISS本体から直流120Vの電力供給を受け、「きぼう」日本実験棟内の各機器へ供給するのが「きぼう」日本実験棟の電力系の役割です。
「きぼう」日本実験棟やISSとは言っても特殊なことを行っているわけではなく地上の電力供給設備と同じように考えれば良いのです。発電所に相当するのが太陽電池で、そこから高圧電線が張られているのはどちらも同じです。
電力を使う各家庭に対してはさらに低い電圧で送電し、各家庭へは交流100Vの電力を供給します。「きぼう」日本実験棟の場合は、ここが直流120Vになります。さらに、各家庭では、電化製品内部に変圧器を内蔵しており、各機器に適した電圧まで下げて電気が使われています。「きぼう」日本実験棟の場合もそれは全く同じ事です。
各家庭にはブレーカがあり、過大な電流が流れた場合には電力を遮断し、電化製品を守る仕組みになっています。それと似たような機能が「きぼう」日本実験棟には装備されています。
宇宙用だからといって特別な理論があるのではなく、地上での技術を宇宙用に応用しているのです。
米国とロシアの太陽電池はどのような役割を果たすのですか
ISSは、元々アメリカが計画していた宇宙ステーション「フリーダム」とロシアが計画していた「ミール2」をまとめて、ひとつの宇宙ステーションとしたという経緯があります。そのため、両国が最初に設計していた自分たちの太陽電池パドルを搭載することになりました。
基本的には、ロシアの太陽電池からの電力はロシアのモジュールで使用し、アメリカの太陽電池からの電力は日米欧のモジュールなどで使用する方針です。しかしISSは段階を追って建設しますので、初期の段階では、相互に電力を融通することにしています。最初は米国の太陽電池が搭載されていないので、ロシアの電力をISS全体で使用しますが、アメリカの太陽電池が到着した後は、逆にアメリカ側からロシア側へ不足分の電力が送られるようになります。米露両国が太陽電池を持っているので、将来どちらかが故障した時に電力を互いに融通することもできます。
アメリカとロシアの太陽電池搭載方法には違いがあります。ロシアは各モジュールを無人で打ち上げてドッキングさせるため、それぞれのモジュールに太陽電池パドルがついており、分散型といえます。一方アメリカは、ISSの中央を進行方向に対し直角に横切るトラスと呼ばれる長い(数10m)の構造物の両端に8枚の大型太陽電池パドルを取り付けるので、大規模な専用の発電所を持っているようなものです。
アメリカの太陽電池パドル1枚の長さは約33mになり、約9.5kWの発電が可能です。組立完了段階では、アメリカ、ロシア合わせて約110kWの発電を行うことができる予定です。
最近の大型通信衛星でも、発電能力はようやく10kW程度ですので、ISSの発電規模がかなり大きなものであることが判ります。
宇宙用の太陽電池は地上用のものとどこが違うのですか
ISSで使われる米国のソーラーセル(太陽電池)は、米国のロッキードマーティン社が製造しています。
太陽電池に使われる半導体材料には、シリコン(Si)や、ガリウム砒素※(GaAs)などの化合物があります。現在、主流はシリコンですが、同じシリコンでも製造方法により、単結晶、多結晶、アモルファスがあり、材料によりそれぞれ異なった特長を持っています。
宇宙用には劣化が少なく変換効率の高い単結晶シリコンや単結晶化合物(GaAs系統)が使われています。純度については特に地上用と変わるものではありません。地上用では、これらも使われますが、量産しやすい多結晶シリコンやアモルファスも多く使われています。
宇宙用としては、エネルギー変換効率14.3%、単結晶化合物(GaAs系統)系で17%~18%のものが実用化しています。
地上用では、太陽電池内部で入射した光を反射させるなど工夫を凝らして、エネルギー変換効率20%を超える物も開発されています。
電力変換効率という点では、地上用太陽電池の方が優れているものが開発されていますが、これは宇宙と地上では太陽光スペクトルが違うということと、宇宙用太陽電池は電力変換効率だけでなく、耐久性についてもいろいろ工夫がされているからです。
以下に、宇宙用太陽電池に求められる耐久性などについて説明します。
太陽電池は、温度が高くなると発生電力が低下する特性を持っています。地上では空気による放熱ができますが、真空の宇宙空間ではそれができませんので、太陽光のうち発電に必要でない光を吸収しないようにコーティングしたり、放射により熱を逃がす工夫がされています。
宇宙用太陽電池は、宇宙空間において常に放射線にさらされるため、シリコン結晶基板に欠陥が発生し、それが移動中の電子を捕獲するため、徐々に電気出力が低下するという問題があります。
セルの基板を薄くすると、電子の移動距離が短くなるため、欠陥の影響を受けにくくなり長寿命化することができ、さらに軽量化も図れます。
現在、宇宙用太陽電池には単結晶シリコン系で厚さ50ミクロンのものがあります。しかし、薄くした分だけ光の吸収量が減り、電気出力は下がります。このためエネルギー変換効率の良い、単結晶シリコンや単結晶化合物(GaAs系統)が使われています。
宇宙用太陽電池に限らず、宇宙用部品には民生用とは比べものにならないほど厳しい試験に合格しなければなりません。
打上げから軌道上までの宇宙環境を模擬した、放射線、熱真空、熱サイクル(一定間隔で高温と低温を繰り返す)、振動、衝撃、紫外線などの耐久試験はもちろん、打上げまでの地上環境を模擬した耐湿試験などにも合格しなければなりません。
宇宙では容易に修理/交換ができないので、高い信頼性が必要です。特に太陽電池の故障は衛星の機能全てが失われる可能性があるため信頼性は重要な要素です。
人工衛星の太陽電池パドルは多くの太陽電池セルが敷き詰められていて、影になったり、劣化して発電能力が落ちたセルをバイパスさせることにより、電力損失を押さえるなど工夫がされています。
宇宙用太陽電池は、このような技術で設計/製造されているのです。
酸素の供給はどのようにしておこなっているのですか
ISSでの酸素供給方法は以下の4通りあります。
酸素と窒素は、スペースシャトルで高圧ガスタンクを運んでISSのクエストエアロックの外部に設置した他、各シャトルフライト時にシャトルとの間で配管を接続してISSの酸素タンクと窒素タンクに不足分を充填していましたが、シャトルの退役により、その役割はプログレス補給船や欧州補給機(ATV)に移されました。
プログレス補給船やATVでは酸素や空気を充填したタンクを積んで打ち上げ、必要時に手動操作でバルブを開けることでISS内に放出しています(ATVは2015年で退役しました)。
スペースシャトルとATVが退役した後は、米国の商業補給船や日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)を使って小型の酸素タンクと窒素タンクを運搬することで補給しています。
エレクトロンはズヴェズダ(ロシアのサービスモジュール)にある、水を電気分解して酸素と水素を取り出す反応を利用した装置です。水素は船外に廃棄します。
旧ソ連がミールで使用してきたエレクトロンの改良型です。
これに使用する水は、ISS内部の空気から除湿により回収した水(凝縮水)を利用します。
OGSはロシアのエレクトロンと同様に、水を電気分解する原理で酸素を生成する米国の酸素生成装置です。
副生成物の水素は船外に廃棄するか、2010年に設置されたSabatierという装置で、二酸化炭素と結合させて、再び水にリサイクルします。
OGSは、当初デスティニー(米国実験棟)内に設置されていましたが、その後、トランクウィリティー(第3結合部)内に、移設されました。
過塩素酸カリウム(KClO4)や過塩素酸リチウム(LiClO4)のカートリッジを加熱分解することにより酸素を製造します。これは"キャンドル(ろうそく)"と呼ばれています。
このカートリッジの小缶は、1日間1人のための十分な酸素(600リットル)を発生します。カートリッジを缶に入れ、点火ピンを引くと化学反応で加熱が始まり酸素が放出されます。
これは、旅客機の乗客用に用意されている酸素マスクと同じ技術です。旅客機では緊急時に酸素マスクが落ちてきて、乗客がぐいと引っ張ることで、点火装置ピンが作動します。
ISSの組立初期段階から比べると、徐々にリサイクル化が進んできたため、酸素の供給は以下のように変わってきています。
呼吸用の酸素は主に地上から運び、補助的にロシアの酸素発生装置エレクトロンを、故障時にSFOGを使用していました。
呼吸用の酸素は、プログレス補給船からの補給、ロシアの酸素発生装置エレクトロン、米国の酸素生成装置OGSを使い、故障時には必要に応じて補完します。非常時にはタンク内に保管してある予備の酸素、非常用のSFOGから酸素が放出されます。
二酸化炭素の除去はどのようにしておこなっているのですか
空気の循環が十分でない場合、宇宙では二酸化炭素が除去されないまま部分的に濃度が高くなり、二酸化炭素中毒の危険性が増します。このため、命にも関わる二酸化炭素の除去は重要です。
ISSでの二酸化炭素の除去方法は以下の3通りがあります。
CDRA(シードラ)は、米国の二酸化炭素除去装置で、デスティニー(米国実験棟)とトランクウィリティー(第3結合部)内に各1基が設置されています。
CDRAは、二酸化炭素の吸着部(反応層)を2式有しているため、片方の吸着部を加熱して二酸化炭素を放出する再生プロセス中に、もう一方で吸着が可能なため、連続運転ができます。
吸着した二酸化炭素は船外に排出されますが、2010年にOGS内に設置されたSabatierという装置で、二酸化炭素を水素と結合させることで、水にリサイクルすることもできます。
ヴォズドゥクはズヴェズダ(ロシアのサービスモジュール)にあり、再生式の吸着剤(ゼオライト)を持つ2式の反応装置が使用されています。
取り除かれた二酸化炭素は船外に排出されます。
水酸化リチウムを使用し化学反応で二酸化炭素を吸収する使い捨ての反応容器です。
スペースシャトルでは二酸化炭素除去のメイン装置ですが、ISSでは緊急時のバックアップなど補助的に使われています。
また、人間は二酸化炭素以外に少量のガスを排出します。腸で生成されるメタン、汗に含まれるアンモニア、尿や呼気に含まれるアセトン、メチルアルコール、一酸化炭素です。これらは活性炭フィルタによりISS内の空気から取り除かれます。
飲料水の供給はどのようにしておこなっているのですか
ISSでの飲料水は、プログレス補給船やスペースシャトルによって地球から運ばれていましたが、STS-126(ULF2)ミッションで、米国の水再生システム(Water Recovery System: WRS)が運ばれ、2009年5月にこの装置の使用を開始してからは、100%ではありませんがISS内の水をリサイクルできるようになりました。
スペースシャトルが退役した後は、日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)で飲料水をISSに運んでいます。
ロシア側の飲料水は、ズヴェズダ(ロシアのサービスモジュール)内に飲料水タンク「ロドニク」があり、プログレス補給船から運ばれた水をここに貯蔵することができます。
ISS内部の空気から除湿時に回収した水(凝縮水)は、米国とロシアの酸素発生装置で電気分解して、呼吸用の酸素を生成するのに使用されています。また、凝縮水の一部は、米国とロシアの装置でリサイクルして飲料水にすることもできます。
米国の水再生システム(Water Recovery System: WRS)は2台のラックで構成され、トランクウィリティー(第3結合部)内に設置されています。この2台のWRSラックは、尿処理装置(Urine Processor Assembly: UPA)と水処理装置(Water Process Assembly: WPA)で構成されており、UPAは尿を蒸留して処理水にし、凝縮水と一緒にWPAに送られて飲料水となる品質まで浄水されます。
米国、ロシアともに、飲料水には雑菌繁殖防止の処置が行われており、米国はヨウ素を、ロシアは銀を添加することで殺菌しています。
なお、スペースシャトルがISSとドッキングしている時は、スペースシャトルに搭載している3基の燃料電池から1時間に最大約11kgの水が生成されるため、これを水タンクに貯えてISSに運び込み飲料水として貯蔵していました。
排水の処理はどのようにしておこなっているのですか
ISSとスペースシャトルで排水の処理の方法が若干異なります。
初期段階では、尿などの不要な液体はタンクに貯蔵され、満タンになるとプログレス補給船に搭載して大気圏に突入させて廃棄していましたが、2009年からは米国のトイレで回収された尿は、米国の水再生システムWRS(Water Recovery System)でリサイクルして飲料水にまで再生できるようになりました。
ロシア側モジュールでは除湿により回収した水(凝縮水)は、ズヴェズダ(ロシアのサー ビスモジュール)にあるエレクトロンと呼ばれる酸素発生装置で電気分解して呼吸用の酸素を得るために使われているほか、2002年秋からは一部をリサイクルして飲料水にもしていました。
米国側モジュールでは除湿により回収した水(凝縮水)は、以前は水タンクに詰めてズヴェズダ内に運び込み、エレクトロンや凝縮水処理装置で処理していましたが、2009年から米国の水再生システムWRSを使って、尿と共に飲料水にまで再生処理できるようになりました。
尿および除湿により得られた水などは排水として汚水タンクに貯め、定期的に船外へ排出していました(Waste Waterダンプといいます)。
スペースシャトルの場合、燃料電池から水が豊富すぎるほど生成されるので、水の再利用は行わず、余った水は水タンクから船外へ排出していました(Supply Waterダンプといいます)。また、ISSへの飛行の場合は、これらの余った水をISSに搬入して補給していました。
ISSでは尿を処理して飲料水にしているとのことですが、安心して飲めるのでしょうか
ISSでは、日本時間2009年5月21日から、水再生システム(Water Recovery System: WRS)により尿を飲料水にリサイクルできるようになり、若田宇宙飛行士を含む3人のISS長期滞在クルーが記念の乾杯を行いました。
尿から生成した水といっても、大型冷蔵庫2つ分もある装置で蒸留、精製を行っているため、普通の飲料水と変わらぬ水質で、普通の飲料水と同じように飲めます。 WRSは、尿処理装置(Urine Processor Assembly: PA)と水処理装置(Water Process Assembly: WPA)から構成されています。
具体的な処理プロセスとしては、UPAで尿を加熱して水蒸気にし、水に戻す蒸留処理を行い、得られた水をエアコンで生成された凝縮水などと共にWPAに送り、フィルタ処理や高温酸化触媒反応による有機物を分解、イオン交換膜を通して綺麗な水にし、最後に殺菌処理を行います。
飲料水タンクに送る前に水質検査を行い、問題ないことが確認できれば飲料水にすることができます。ここで行っている処理は、まさに、地上で行っている下水処理と上水処理を合わせたようなものですから、安心して飲める水質が確保されています。
なお、この再生された水は、飲料水に使うだけでなく、酸素生成装置で電気分解することにより、酸素にリサイクルすることもできます。このWRSの運用により、それまで地上からISSに運んでいた水の35%をリサイクル処理でまかなえるようになりました。
ISS内の言語表示は何語ですか
警告・警報パネル(C&Wパネル)の表示はどんな意味があるのですか
トラブルを検知した場合、警告・警報パネル(C&Wパネル)の該当するランプが点灯し、ATU(音声端末)か らクラス1,2,3に応じて異なるアラームが鳴るため、どのようなトラブルが発生したかを音と光の通知で即座に確認できます。
その後、滞在クルーはラップトップコンピ ュータで詳しく状況を調べていきます。
米国モジュールや日本モジュールにあるC&Wパネルは左から次のようになっています。
表示 | Fire | ΔP | ATM | WARNING | CAUTION |
---|---|---|---|---|---|
意味 | 火災 | 減圧 | 空気汚染 | 下記参照 | 下記参照 |
クラス | 1 | 2 | 3 |
「クラス1」と呼ばれる警報は、緊急度が高い状況です。このアラームが鳴ったらクルー全員で対応します。
「クラス2」の警報は、ISSコマンダーの指示により命令されたクルーが対応します。クラス2の警報とは次のような例です。
「クラス3」の警報は、地上の管制官が対応し軌道上のクルーは何かが起きているということを知るだけで特に対応はしません。クラス3の警報とは次のような例です。
右下の「TEST」は、このパネルの動作確認ボタンで、これを押すと全てのランプが点灯します。警報音は鳴りません。つまり電球が切れていないことを確認するものです。
なお、このパネルの意義はふたつあり、異常を発見したクルーがパネルのボタンを押すことで皆に知らせる通報用としての機能と、システムが自動的に異常を感知したときにクルーに知らせる警報としての機能です。システムが警報を鳴らしているときに該当するボタンを押すと音を止めることが出来ます。
音声端末装置(ATU)はどんな機能があるのですか
音声端末装置(Audio Terminal Unit: ATU)は通話機能と警告・警報システムからの情報を音で知らせるアラーム機能があります。
通話機能は、各与圧モジュール間、船外活動中のクルー、地上の管制センターとの通話ができます。
ATU は、クエスト(米国のエアロック)に3式、「デスティニー」(米国実験棟)に2式、「コロンバス」(欧州実験棟)に1式、「ハーモニー」(第2結合部)に1式、「きぼう」日本実験棟に2式、「トランクウィリティー」(第3結合部)とキューポラに各1式設置されています。なお、ロシアモジュールの通信装置との通信も可能です。
これら、特定の相手同士と通話したり、同時複数(最大5)との会議もできます。
ATUは電源を入れると自動的にスタンバイモードとなり、"PTT/ON"スイッチを押下することでフルパワーモードに移行して通話が可能となります。
フロントパネルのスイッチで相手先を選択して1対1の通話ができます。また、予め設定された会議ループを選択することで、同時複数相手との通話(会議)ができます。
受信については、呼び出し音が鳴ったときに"DIAL/ANS"スイッチを押すことで相手と接続されます。
"PAGE"スイッチによりISS内の全てのATUに対して同報通信(ページング)することができます。
船外活動中のクルーや減圧環境下のモジュールやエアロックとは、UHF無線を介して通信ができます。
警告・警報システムからの情報により警報音を鳴らします。この警報音はATU側では止めることはできず、警告・警報パネル(C&Wパネル)のスイッチで止めることができます。
ラベル・デカールにはどんな意味があるのですか
軌道上交換ユニットおよび軌道上で保全、交換または操作を行う機器および艤装品に貼るラベル
信号線、電力線、流体配管などに貼る識別ラベル
色やパターンで流体や信号の種類がわかるようになっている
潜在的に危険なものがある場合に“高温危険”、“感電危険”などを警告するラベル
保全、交換などで軌道上で取り外す必要のある配管やコネクタに貼るラベル。流れ方向を示したり、コネクタを外した後元に戻す場所を間違えないようにするためのもの
Inventory Management System(IMS)ラベルといって、ISS内の物品管理用に貼るラベル、機器識別ID、機器名称、バーコードで構成される
船内で火災が発生したらどうやって対処するのですか
各モジュールに携帯式消火器が備えられており、これは地上で使われるものと非常に似通っています。消火剤には二酸化炭素が使われています。
2種類のノズルがあり、船内で起きた火災およびラックの中で起きた火災に対応できるようになっています。与圧室内で起きた火災については直接火元を、ラック内部で発生した火災については、各ラックに消火器を接続するコネクターがあるので、消火器のホースをそこに繋いでラック内部を消火します。
消火器の近くには、可搬型呼吸器(Portable Breathing Apparatus: PBA)が設置されており、消火器を使用する場合は、この呼吸器によって呼吸を確保します。
また、ロシアモジュールに設置されているロシア製消火器は、蒸留水を主成分にしており、窒素を含んだ泡を噴射することで酸素を遮断するタイプです。
家庭用の電気製品は使えますか
ISSの運用はどのように行うのですか
ISSはその名のとおり国際協力により建設されるとともに、その運用も国際協力により実施されます。
日本、米国、カナダ、ロシアの各国およびヨーロッパの参加国を代表する機関である欧州宇宙機関(ESA)は、独自の運用施設を用意し、その施設を通じてそれぞれが建設に関与した部分の運用を実施します。
ISS全体の運用については米国が中心となってとりまとめています。ISS滞在クルーは毎朝、その日の作業を確認するために、Daily Planning Conferenceを行っています。これは、ヒューストン、ハンツビル(実験運用を取りまとめる米国のセンター)、筑波、ミュンヘン(ドイツ)、モスクワ(ロシア)の管制官と順番に簡単な調整を行い、英語、ドイツ語、日本語、ロシア語での挨拶が行われる国際色豊かな交信です。実際の作業の指示は、ロシアとの交信がロシア語で行われる以外は、英語で行われています。
ISSのフライトディレクタについて教えて下さい
国際宇宙ステーション(ISS)は、搭乗員と、搭乗員を地上から支える多数の人々の協力により運用されます。搭乗員との直接の連絡調整などは、これらの人々のうち管制センターに勤務する技術者が担当します。その技術者を取りまとめて運用の指揮をとる人がフライトディレクタです。
ISSの一部分である「きぼう」日本実験棟の運用は、筑波宇宙センターの宇宙ステーション運用棟にある「きぼう」運用管制室で、フライトディレクタの指揮のもと に行われています。
フライトディレクタには幅広い経験と知識が要求されます。JAXAでは、衛星の追跡 管制業務やロケットの打上げ管制業務を数年経験した人の中から選抜しています。
これらの人々がさらにNASAジョンソン宇宙センターや筑波宇宙センターで国際宇宙ステーション運用の実務を経験する中で、1人前のフライトディレクタとして養成されていきます。
フライトディレクタの専門は、航空工学、電子工学、人間工学などさまざまですが、どこの大学でどのような勉強をしたかということよりも、人工衛星の追跡管制やロケット打上げ管制の実務経験の方が重視されます。広い分野の知識や経験に加えて、決断力、リーダシップ、忍耐力、協調性など、人間性の面も重要です。
この点は宇宙飛行士も同じです。
またフライトディレクタの任務を遂行するには国外の人々の協力が不可欠ですから、意志疎通の共通手段としての英語力は大変重要です。
フライトディレクタの下で作業をする技術者は、JAXAの場合、運用管制員と呼ばれますが、JAXAの職員であるという条件はありません。その他の条件はフライトディレクタと同様です。
フライトディレクタや運用管制員は日本では新しい分野ですので、国際宇宙ステーションの運用を実施しながら試行錯誤を経て、職業の分野としての形が見えてくるものと思われます。
ザーリャ(基本機能モジュール)の発音はロシア語でザリャーではないのですか
ISSの組立イメージが見たいのですが(組立開始から組立完了まで)
以下の動画でISSの組み立ての経過がご覧いただけます。
上記の動画公開後に変更となった箇所も多いため、コロンビア号事故以降のISSの組立イメージの変遷はこちらのCGを参照下さい。
日本では、ISSのためにどんな設備が準備されているのですか
日本では筑波宇宙センターに、宇宙ステーション総合推進センター(SSIPC)が整備されており、「きぼう」日本実験棟の試験、宇宙実験の利用者支援、「きぼう」の運用管制、宇宙飛行士の養成や宇宙医学の研究などを実施できる環境があります。
ISS計画に日本が参加することになった経緯を教えて下さい
1984年にアメリカ合衆国レーガン大統領は、友好国および同盟国に対し、米国が国際協力で宇宙ステーション計画を進めようとしていることを表明し、同宇宙ステーションの開発および利用に参加して同基地から得られる利益を共有していこうと呼びかけました。
この呼びかけに対し日本は、この国際協力による宇宙ステーション計画への参加は、我国の材料科学技術やライフサイエンスなどの発展のみならず、産業、医療などの幅広い分野における新しい技術を創出するための絶好の機会であること、また、有人ロケットや有人宇宙船を持たない我が国としては、各参加国が様々な役割を分担して協力することにより、効率よく宇宙環境を利用した多大なる成果を得られるものと判断し、国際宇宙ステーション計画への参加を決定しました。
この国際宇宙ステーション計画への参加は、遅れていた日本の有人宇宙技術を飛躍的に発展させるきっかけになりました。
それぞれの参加国が、お互いの得意分野を持ち寄り、役割を分担して、協力しあう国際宇宙ステーションは、世界の宇宙開発技術を大きく前進させるための重要な施設であると同時に、国際協力と平和のシンボルでもあるのです。
ISSに使用されているネジの規格は統一しているのでしょうか
ネジの規格は一般的にISOネジ(ミリネジ)とユニファイネジ(インチネジ)の2種類があります。
ISSではネジの規定は特に定めていませんが、ユニファイネジ(インチネジ)が多く使われています。ユニファイネジは航空機などに使われるネジです。
同じインチネジでも、ホームセンターなどで見かけるウイットネジは、建築関係に使われるネジであり、イギリスの規格です。このウイットネジ規格を基本にした米国のANSI(American National Standards Institute)規格ネジがあり、これをISO(International Organization for Standardization)で規格化したものが、ユニファイネジ(Unified screw threads)です。
ユニファイネジは、1インチ(2.54cm)あたりのネジ山の数を規定したもので、ISOネジ(ミリネジ)はネジ山の間隔が何ミリあるかを規定しています。
なお、これらの規格はネジ軸の直径とネジ山間隔(ピッチ)を規定するもので、ネジ頭部の形状を規定するものではありません。
宇宙機の開発段階で製作される一般的なモデルの種類を教えてください
宇宙機の開発には、いきなり宇宙へ打上げる実機を作るのではなく、試験用のモデルを製作して各種試験を行って設計の妥当性を検証してから、実機の開発へと進みます。
また、この試験用に製作したモデルは、訓練などに使用したり、実機が打ち上げられた後、地上でのシミュレータとして使われることもあります。
【 モデル名 】概要 | 備考 |
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【 BBM (ブレッド・ボード・モデル) 】 |
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【 EM (エンジニアリング・モデル) 】 基本設計に基づき製作し、機能・性能・環境試験に供することで設計の妥当性を確認し、次の詳細設計段階に移行するための設計を固めるためのデータを取得するためのモデル。 部品などの品質と信頼性を除いて打上げ実機とほぼ同一仕様を持つ。 試験の内容によっていくつものモデルを製作することもある。 |
モデル例 ・電気モデル ・構造モデル ・熱モデル |
【 GM (グランド・モデル) 】 試験や訓練の内容に応じてEMを機能改修したもの。 |
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【 PM (プロトタイプ・モデル) 】 詳細設計に基づき基本的に実機と同一仕様(部品、材料、加工)で製作されるモデル。 このモデルに実際の宇宙環境より厳しい環境を負荷し、試験することで宇宙機の設計が要求を満たしていることを確認する(認定試験:QT)。 |
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【 FM (フライト・モデル) 】 認定試験に合格したPMと同一の設計及び製造方法で製作されたモデルで、実際に宇宙に打ち上げるモデル。 このモデルに対しては、打上げ用としての品質を備えていることを確認するための試験(受入試験:AT)を行う。 設計は認定試験により確認されているから、受入試験においては軌道環境を模擬した試験を行い、製造工程に起因する欠陥が潜んでいないことを確認する。 |
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【 PFM (プロト・フライト・モデル) 】 PMとFMの性格を兼ね備えたモデル。設計に問題がないことを確認すると共に打上げ用の実機としての品質を備えていることを確認する(プロトフライト試験:PFT)。 このモデルに対しては、過剰試験によるストレスの蓄積で実機としての品質が損なわれることの無いように適切な試験計画が必要となる。 PMとFMを個別に製作するよりコストダウンが図れる。 |
ISSや人工衛星の地上軌跡が大きな波線のようにうねっているのはなぜですか
地球を周回しているISSなどの軌道を真下の地表に降ろしたものが地図上の軌跡で、グランドトレース(地上軌跡)と呼ばれています。
この地上軌跡は地球儀の上では円ですが、メルカトル図法の世界地図の上に表すとSの字を描いたカーブになります。
例えば、地球儀を使って、シンガポール-札幌-アラスカ半島-バンクーバー-ヒューストン-メキシコユカタン半島-パナマ-パラグアイ-ウルグアイ-インド洋・・・を結んでみると、地球の中心を中心とした円になることがわかります。同じ地点を、世界地図上に印を付けていくと、S字を描いていることがわかります。
このS字カーブは地球を1周する間に、赤道と必ず2回交わります。また、軌道傾斜角(軌道と赤道の角度)は、S字カーブの一番高い緯度と一致します。
軌道が、赤道上空を回り続ける場合は、世界地図上の赤道に一直線を引くことになりますが、スペースシャトルやISSは赤道面に対して一定の角度(軌道傾斜角といいます)を持っているため、平面の世界地図上では大きな波を描くのです。
ISS は約90分で地球を1周しています。もし地球が自転していなかったら、ISSは1周して元の位置上空に戻ってきます。しかし、ISSが1周する間に、地球も自転するので、もとの位置上空には戻れません。地球の自転は24時間で1回転(360度)ですから、1時間に15度、90分では22.5度西へずれることになります。
つまり軌道周期90分のISSは16周すると元の位置上空に戻ることになります。実際には、地球が完全な球体でないことによる重力場のひずみや上層大気の抵抗、太陽放射圧などから徐々に軌道は変えられますので、正確に16周で元に戻ることはありません。このような外乱により軌道がずれていくことを摂動といいます。ですから、何ヶ月も先のISSの位置を予測することはできないのです。
なお、地球観測衛星などで一定期間で必ず同じ位置上空に戻らなければならない衛星はそうなるような軌道に投入します。
なぜ船内実験室より先に船内保管室が打ち上げられたのですか
当初は、第1便で船内実験室とロボットアームを打ち上げ、第2便で船内保管室、船外実験プラットフォームおよび船外パレットを打ち上げる計画でした。しかし、国際宇宙ステーション計画の大規模な見直しが行われ、1993年から1994年にかけてロシアが計画に参加することに変更されました。その際に、ISSの軌道傾斜角が51度と当初計画の28度よりも大きくなり、打上げ時のスペースシャトルの搭載重量の制約が生じるようになったことから、船内実験室からシステム機器を含む相当数のラックを外して打ち上げなければならないことになりました。
そこで、船内実験室には起動するのに必要な最小限のシステムラックのみを搭載し、残りのシステムラック、実験ラック、保管ラックは船内保管室に搭載して船内実験室より先に打ち上げることになりました。
「きぼう」のシステムはA系, B系の冗長構成となっており、有人宇宙施設の運用上の安全基準を満たすためには両系を稼働させる必要があります。
「船内実験室を起動するのに必要な最小限のシステムラック」とは、このうちB系のシステムラックです。船内実験室が取り付けられた後、まずB系のみを起動します。
すると、早急にA系も立ち上げてシステムの冗長系を確保する必要があるため、船内保管室に搭載して打ち上げたA系のシステムラックを船内保管室から船内実験室に移設し、A系のシステムを起動します。
船内実験室を先に打ち上げて、起動せずに置いておくということも考えられますが、この場合、熱制御ができないため、結露が生じて故障する可能性があります。また、船内実験室を先に打ち上げてB系のみを起動してしばらく置いておくのも、片系だけでは停止した場合のリスクがあるために、やはりA系、B系の両方を揃えて稼働させる必要があります。
これらのことから、船内保管室、船内実験室の順で打ち上げました。
スペースシャトルの退役後、ISSへの輸送はどのように行われるのでしょうか
スペースシャトル退役後は、ISSへの宇宙飛行士の輸送手段は、ロシアのソユーズ宇宙船だけとなっています。また、2019年からは米国の商業クルー輸送船も使用できるようになる予定です。
補給船としては、ロシアのプログレス補給船、日本の宇宙ステーション補給機(HTV)、米国の商業補給船が使われています。
米国の商業補給船としては、SpaceX社がFalcon 9ロケットを使ってドラゴン(Dragon)補給船を、オービタルATK社が、アンタレスロケットを使ってシグナ ス(Cygnus)補給船を打ち上げています。
ドラゴン宇宙船は、将来的には物資の回収と人の輸送も狙っており、段階的に機能を拡張させながら開発を進めていく予定です。
Falcon 9ロケットは、2010年6月に初打上げに成功しました。2010年中に、ドラゴン宇宙船の機能確認のための試験飛行を行った後、2011年にはドラゴン宇宙船をISSに結合させる試験を行い、その後、民間による物資の輸送が実用化される予定です。
ドラゴン宇宙船もシグナス宇宙船も、HTVと同じように、ISSに接近するとISSのロボットアームで把持されて、ISSの「ハーモニー」(第2結合部)の下側(地球側)の共通結合機構に結合されます。つまり、HTV用に開発された機器や手順が、米国の民間宇宙機でも使われることになります。HTVは、このような点でも国際貢献に大きく寄与しています。
ISSはいつ完成したのですか
NASAの見解によれば、国際宇宙ステーション(ISS)に主要なモジュールや大型の軌道上交換ユニット(Orbital Replacement Unit: ORU)を輸送してきたスペースシャトルの最後のミッションが終了した時点で、ISSは完成したとされています。
最後のスペースシャトルミッションであるULF7(STS-135)ミッションは、2011年7月21日午後6時57分、スペースシャトル・アトランティス号のNASAケネディ宇宙センター(KSC)への着陸をもって終了しました。
なお、スペースシャトルミッションの終了によりISSは完成を迎えましたが、今後もロシアのプロトンロケットによる多目的実験モジュール(Multipurpose Laboratory Module: MLM)の輸送など、新たなモジュールの追加ミッションが予定されています。
ISSへ向かうロケットの打上げ時刻はどうやって決めるのですか
宇宙ステーション補給機「こうのとり」やソユーズ宇宙船がISSとランデブー、ドッキングするためには、ISSと同じ軌道面に投入する必要があります。
これは、軌道面を変更するには大きなエネルギーを必要とするからです。
そこで、最も少ない燃料で打ち上げられるように軌道変更エネルギーが最も小さくなる軌道への投入が行われています。
打上げは、種子島宇宙センターやバイコヌール宇宙基地などロケットの発射場が地球の自転によりISSの軌道面を横切るタイミングに合わせて、ISSを追いかける方向に向けて打ち上げます。
この打上げ可能時間帯のことをロンチウィンドゥと呼んでいます。
地球は24時間で1回転するので、ISSの軌道面は1日2回打上げ発射場上空を通過します。しかし、打上げ方向が大きく異なるため、安全性などを考慮してどちらかを選んで打ち上げます。
従って、ロンチウィンドゥは1日1回あります。
言葉にするとわかり辛いのですが、地球儀にISSの軌道を模したリングをかぶせ、赤道面から51.6度の角度に固定して、地球儀をぐるっと回せば発射場は地球が1回転する間に2回リングの直下を通過することがわかります。
もし、この時間帯を過ぎてしまった場合は、打上げは翌日以降へ延期となります。
打ち上げられたロケットは、搭載している補給船や宇宙船を分離し、軌道面の微調整、高度差を利用してのISSへの接近、そして高度をISSに合わせるための軌道制御を繰り返し、ISSにランデブーします。
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