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「きぼう」日本実験棟の共通結合機構機能試験

 2000年6月27日~7月2日にかけて、「きぼう」日本実験棟の共通結合機構の機能試験が三菱重工業株式会社(MHI)名古屋航空宇宙システム製作所飛島工場で行われましたので、ご紹介します。

共通結合機構とは
共通結合機構
(アクティブ側とパッシブ側が結合された状態)
 共通結合機構(CBM:Common Berthing Mechanism)は、国際宇宙ステーション(ISS)の各構成要素間(ロシアモジュールは除く)を結合するために開発されたISS共通の結合機構です。CBMで結合されたモジュール同士は、与圧環境が保たれた状態で宇宙飛行士や物資を通過することができます。
CBM内の開口部は約1.3m×約1.3mありますので、実験ラックなどを容易に通過させることができます。

 「きぼう」日本実験棟では、船内実験室と船内保管室の結合および船内実験室とISS(ノード2)との結合に使用されます。

 CBMはモータの駆動で結合を行うアクティブ側と受動的なパッシブ側の2つで対になっています。この2つを結合させるには、まず、パッシブ側のCBMに取り付けられているモジュールをロボットアームでアクティブ側のCBMに接近させます。パッシブ側が十分にアクティブ側に近づくと、アクティブ側に設置されたリミットスイッチに接触して結合準備完了の信号が出力され、アクティブ側からキャプチャーラッチ(下図参照)と呼ばれる爪が4つ出てきてパッシブ側を引っかけて引き込みます。

 そして、アクティブ側からパワーボルトと呼ばれる電動式のボルトが16本出て、パッシブ側のネジ穴に入り、結合させます。
 与圧モジュール間の結合部では、アクティブ側とパッシブ側の間には気密を保持するために特殊なゴム製の巨大なOリング・シールが3重に取り付けられておりこれにより、しっかりと気密でき内部の圧力を保ちます。
「きぼう」におけるCBMの使用箇所(イメージ図)


キャプチャーラッチで引き込む様子

試験内容
アクティブ側CBM
 「きぼう」のCBMについては、「きぼう」から電源の供給を受け、米国実験棟(ディスティニー)にある制御装置でコマンドを送ることにより作動します。ただし、今回の試験は「きぼう」単体の試験であり、米国実験棟の制御装置を使用できないため、NASAから試験装置を借りて、機能確認を行いました。

 具体的にはまず、船内実験室に取り付けられたアクティブ側のCBMに対し、試験装置から電源を供給し、アクティブ側のCBMを動作させるための信号を試験装置から送信して、キャプチャーラッチとパワーボルトが正常に動作することを確認しました。

 次に、電源を本来と同じように「きぼう」のラインから供給させて動作確認を行いました。アクティブ側のCBMを動作させるための信号を試験装置から送信して、キャプチャーラッチとパワーボルトが正常に動作することを確認しました。
キャプチャーラッチの動作確認

今後の予定
 きぼうが米国に輸送された後、フロリダ州のケネディ宇宙センターで、CBMマスターツールと呼ばれる模擬のCBMリングを使用した結合性の確認を行います。
 「きぼう」を含むISS各モジュールは、微小重力下の宇宙空間で使用するように設計されているため、地上の重力下では実際にモジュール同士を結合させることはできません。そのため、アクティブ側のマスターツールとパッシブ側のCBMおよび、アクティ ブ側のCBMとパッシブ側のマスターツールを組み合わせて、正確に結合できることを部分的に確認していきます。

 また、若田宇宙飛行士も参加するISS組立ミッション(STS-92)では、CBMを初めて用いてISS(ユニティ)にZ1トラスとPMA-3と呼ばれる構成要素を結合させます。

試験担当者のひとこと
 今回のような日米共同で実施する試験は、国内だけで実施するものにくらべ試験開始以前に多くの準備/段取りが必要になります。試験そのものはほんの数日の出来事でしたが、それまでの細部にわたる米国側との調整も含め、今回試験を無事終了できた事で担当としては大変満足しています。
 一時は米国側から搬入した試験装置にトラブルが発生し、このまま試験続行出来るものかとひやりとする状況もありましたが、彼らの迅速な対応(代替の試験装置を2~3日で日本に搬入)によって大きなスケジュール遅延に至らなかった事について、ほっとしたと共に深く感謝しています。
 また、試験実施に向けた段取りやトラブル発生時の対応も含め、日米の文化の違い(良い面、悪い面両方)を今回の試験を通して肌で感じ取る事ができ、個人的には試験結果以上に有意義な経験となりました。
宇宙開発事業団宇宙環境利用システム本部JEMプロジェクトチーム
吉原 徹
最終更新日:2000年 8月17日

 

 

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