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「きぼう」日本実験棟の空気調和/熱制御ラック保全性確認試験

パネルを取り外した状態ECLSS/TCSラック (左:前面、右:背面)

 1999年7月9日から12日の間、三菱重工業株式会社(MHI)神戸造船所で行われた、「きぼう」日本実験棟に搭載される空気調和/熱制御ラック(以下ECLSS/TCSラック:Environmental Control and Life Support System / Thermal Control System Rack)の保全性確認試験の様子をご紹介します。

試験の目的
 「きぼう」日本実験棟の船内実験室に搭載されるECLSS/TCSラックは、「きぼう」日本実験棟の船内実験室の換気や温湿度の調整を行う装置と、「きぼう」日本実験棟の船内実験室に搭載されている機器から発生した熱を冷却するための熱制御を行う装置の2つを搭載したラックです。
 この試験では軌道上で宇宙飛行士がECLSS/TCSラックの操作や保守を問題なく出来るかどうか、3人の被験者(試験実施者)が実際に装置を操作するなどして確認していきました。

試験方法
 ECLSS/TCSラックのプロトフライトモデル(実際に「きぼう」日本実験棟に搭載される実機モデル)を使用して、NASAの宇宙飛行士を含む3人の被験者によって試験が行われました。どんな体格の宇宙飛行士でもきちんと操作できるかどうか確かめるため、身長差のある被験者によって試験が行われました。

 試験は大きく分けて以下の4つの項目について行われました。

 (1)フィジカルアクセス試験:コネクタ等の把持対象物を把持するために必要な隙間があるか試験対象物にさわって確認する。
 (2)ビジュアルアクセス試験:コネクタ等の把持対象物とラベルが見易い状態であるか目で確認する。
 (3)ツールクリアランス試験:ラチェットレンチやトルクレンチなどの工具を使って作業するときに、工具を操作するための十分な隙間があることを確認する。
 (4)シャープエッジ評価:各機器に宇宙飛行士を傷つけるような鋭い角(シャープエッジ)が無いことを確認する。

 フィジカルアクセス試験
コネクタ脱着の操作性を確認
 この試験では、ECLSS/TCSラックに取り付けてあるパネル(ふた)や、空気調和/熱制御に使われる電気用と流体用のコネクタについて、手で脱着が問題なく行えることを実際にさわって確認しました。確認した箇所は50カ所以上です。
ビジュアルアクセス試験
ラベルの例。他にも様々な種類があります。

 この試験では、コネクタの差し込み口が全て目視できることを確認しました。もし、差し込み口が目で確認できないところにあると手さぐりで差し込むことになり、誤った向きに無理に取り付けようとして信号を伝達するためのピンやコネクタを破損する可能性があります。これを防ぐために、地上であらかじめ確認しました。
 また、ECLSS/TCSラックや軌道上交換ユニット(ORU)に張り付けられている注意書きなどのラベルが装置などの陰にならずにきちんと見えることを目視確認しました。

ツールクリアランス試験
 この試験では、ラチェットレンチやトルクレンチなどを使って、ORUなどの機器をラックに固定しているボルトの取り付けと取り外しが問題なく行えるかを確認しました。また、ボルトの頭にレンチのソケットを取り付けるために必要なクリアランス(隙間)が確保されているか、ボルトを緩めたり締めたりするときにレンチを操作するためのスペースが確保されているか確かめました。
 さらに、ECLSS/TCSラックからORUを引き出すときに、ORUに取り付けられるハンドホールドと呼ばれる取っ手の取り付けが出来るかどうかも確認しました。
 
ツール(工具)を使った操作性の確認
ハンドホールドの取り付け
シャープエッジ評価
 この試験では、機器の鋭い突起や角等により宇宙飛行士が作業中に怪我をするのを未然に防ぐため、布の手袋をしてパネルやラック内外をさわり、繊維が引っかかるような箇所が無いことを確かめました。

試験結果
  試験を実施した結果、ECLSS/TCSラックの操作と保守作業は、どのような体格の宇宙飛行士であっても問題なく実施できることが確認できました。また、今回の試験に参加したNASAの宇宙飛行士から「より良い操作や保守作業のために他のツールを使用したらどうか」といった意見を得るなど、有意義な試験データを取得することができました。

今後の試験
 今回の試験は2つあるECLSS/TCSラックのうち、 ECLSS/TCSラック1について試験を行いました。ラック2の保全性確認試験は1999年9月下旬頃に行う予定です。次回の試験では、ラック1と仕様の異なる箇所について試験を行います。


最終更新日:1999年 8月 5日

 
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