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教育

航空機による学生無重力実験コンテスト

過去のテーマ紹介 : メニュー第2回の概要 > 体験談 後半チーム

過去のテーマ紹介

第2回 航空機による学生無重力実験コンテスト 

参加した学生からの体験談
チーム名 大学名 氏名 体験談
前半チーム 学習院大学 市村 豊
後半チーム 東京都立科学技術大学(現首都大学東京) 渡 健介

※表の をクリックすると、対応する内容が下に表示されます。




【実験日記】 東京都立科学技術大学(現首都大学東京)工学部 渡 健介

ミルククラウン形成に及ぼす重力加速度の影響
チーム名:日比谷研

反省、トラブルシューティング

本研究を進めていく上で様々な困難やトラブルに見舞われた。その全てにベストな対応ができたとはとても思えないが、今後このコンテストに応募する方々に対し、少しでも参考になればと考え、以下に「今そこにある危機」について記載する。基本的に工学部的な視点であるが、学部学科を問わず、たたき台にしていただければ幸いである。



チーム運営に関して

基本的にチームを形成してこの実験に従事することを勧める。というのも、私は基本的にチームで実験準備を行っていなかったからである。しかし、全てに1人で対応することは不可能であり、また、実験実施に際しては、1人で行動することは不可能であると断言できる。そのため、実験実施時の意思の疎通、判断基準の統一を容易にするという観点からも、実験準備の段階から、チームで対応することが望ましかったと考える。

実験装置の製作について

実験装置の製作は、私の場合、以下のように行った。

概念設計(大まかなイメージおよび主要なメカニズムの考案)
プロトタイプ設計、試作(主要部分のプロトタイプ製作、および基礎原理の確認)
全体設計(CAD利用)
実験装置製作
運用試験、各部改善
本運用

上記の流れの中で、思い返せば全てに問題があった。まず、“1.概念設計”において、とても理想を高く持った。(理工系学生ならわかってもらえると思うが、「高性能」という言葉はとても甘美に聞こえる)その後の労働量を考察せずに行動する大学生は、ただ無謀と評されるだけである。もちろん必要な部分に必要な労働力を注ぐのは当然であるが、簡単なタスクマネジメントは必要であると感じた。結局は”simple is best”である。そして”試作”、これには約1ヶ月を投じた。私の研究は、過去にほとんど類似した実験がなく、実験の基礎原理から考案する必要があった。これには、宇宙科学研究所の簡易落下塔も利用した。しかし、50を超える種類のプロトタイプはどれもうまくいかず、結局「μgではなんとかなるさ」という根拠のない(その時は教授に切々と「何とかなる」工学的言い訳を並べ立てた。)言い訳によって、次の段階にシフトした。悪運強く、偶然にもデータの取得に成功したが、理工系学生としては失格である。時間的制約があるのは確かだが、プロトタイプの段階で少なくとも「うまくいく傾向」を確認しなければ、次の段階に進むべきではなかったと考える。そして“3.全体設計”。これはCADを利用して行った。これは工学の経験がある人は当然と考えるだろうが、後の”製作”を考えた設計をするべきである。これは確実に我が身に災厄として降りかかる。製作段階で何回後悔したか数え切れない。設計はシンプルに、わかりやすく。一度図面を引いてしまうと容易な変更は難しく、よりタスクを増やすだけである。よく考えて、ある程度時間をかけ、複数の人間で行うことを進める。“4.製作”はもっとも楽しい項目だが、前述したとおり設計の甘さが露呈する場でもあるので、とても疲れる。しかし、製作したパーツを組み上げるのは、もっともワクワクな作業である。これだけは誰にも譲りたくない。“5.運用試験、各部改善”は、「天国から地獄」の再現である。幾多の苦難を乗り越え完成した実験装置は当然のことながら?思うように動かない。特に私の実験装置では、電気回路、配線系統の簡素化が全く行われていなかった(上写真参照)ため、試料漏れ、回線ショート連発、搭載したPCが煙を吹く、稼動時の振動で構造が破壊、などなど、もはや目も当てられない状況が頻発した。残念ながら、この運用試験をほとんどクリアすることなく小牧に搬送されてしまった実験装置だが、それでも送り出すときは、我が子を送り出すような(子供はいないが)気分であった。



実験に際して

まず、このような機会が限定された実験を行う場合は、常に最悪の状況を考え、もしその「最悪の事態」が発生した場合の対応策を考える必要があると実感した。我々の実験装置は、以下の図に示すように、実験部、観測部とも、制御用PCに接続したコントロールボードによって制御される。すなわち、制御用PCがダウンした場合、実験の全てが頓挫することになる。その「まさか」が実際に成立してしまったために、今回の実験はより困難を極めることとなった。実験1日目のフライト直前に発覚したこのトラブルは、結局3日間の全工程に影響を与え、実験者に対する負荷を増大させる事態を招いた。さらに、構造的な欠陥は髄所に散在し、ビス一つから、搭載したCPUまで、ありとあらゆる場面で自分の浅薄が露呈した。今回は詳細な記述は避けるが、成果報告書の“2.実験装置、実験手順”に添付した“もしもマニュアル”のようなものは、かなり精細に作成し、実験のシミュレーションを繰り返すべきだと痛感した。また、実験に従事するものは、これを元に、判断基準を統一し、円滑な実験の実施を行うべきであった。我々もそのとき可能な限りの努力をしたとの自負があるが、控えめに見てもDASをはじめとする、実験を支援してくださった皆様のおかげであることは疑いようがない。



最後に

今回の実験を通して、短い期間に、実験準備からその実施に至るまで、様々なことを経験し、自らの未熟を痛感した。しかし、そのことを忘れさせてくれるほどに微小重力環境とは魅力的で、刺激的であった。次があるならば、より完成度の高い実験を行いたいと思うし、また、次がないならば次を獲得する努力をしたいと思う。そして、今回の実験を通して、高度100km以上の空間により魅力を感じるようになった。空から宇宙へ。硬く誓う。



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