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第2回 航空機による学生無重力実験コンテスト 実施報告
開催時期:2004年12月、2005年2月、3月(コンテストは終了しております)
チーム名 | 大学名 | 日記 |
---|---|---|
前半チーム | 学習院大学・東京大学・東京藝術大学 | |
後半チーム | 福井大学・岐阜大学・日本女子大学・東京都立科学技術大学 |
※表の をクリックすると、対応する内容が下に表示されます。
テーマ選定委員会で選抜された6チームのうち、後半の3チーム(福井大学・岐阜大学チーム、日本女子大学チーム、東京都立科学技術大学チーム)が、無重力(加重力)状態を利用した実験を行いました。ここで、その様子の一部をお伝えします。実験は、福井大学・岐阜大学チームが2005年2月24、26日の2日間、日本女子大学チームと東京都立科学技術大学チームが2005年3月1~3日の3日間行いました。
実験前日までに、実験装置が、各大学から名古屋の(株)ダイヤモンドエアサービスに輸送されました。実験前日には、輸送後の実験装置の組み上げ作業を行い動作確認を行いました。その後、ラックに搭載した実験装置を飛行機に設置し、実験装置と飛行機とのインターフェースを確認し、また、実験装置による機体への影響の有無を確認するための電磁干渉試験を実施しました。これらの確認をパスしないと実験することはできません。全ての実験装置が合格し、翌日の実験実施に向けた最終調整を行いました。
福井大・岐阜大チームは、機内の広さを確認し、上空での被験者の交代所要時間を短縮するため、手順の見直しを行い、繰り返しリハーサルを実施した結果、15分かかったところを5分程度まで短縮することができました。日本女子大チームは温度センサー1本が不具合をおこし予備品と交換しました。都立科技大チームの全て手作りのメカトロ実験装置に対しても、念入りに最終調整が行われました。
また、各チームメンバーは飛行機に乗るための安全教育を受講し、パイロットを含め関係スタッフが集まり最終の全体打合せを行いました。
重力の受容器官である前庭系が血圧調節に関与していることがラットの実験において見出されています。福井大学・岐阜大学チームは、ヒトにおいても前庭系を介した血圧調整系が存在し、それが重力変化時の血圧調節において重要な役割を担っているという仮説をたて、今回の実験で証明しようとしています。実験では、ヒトを対象としGVS(前庭系微弱電気刺激)を実施し、被験者の心電図・血圧のデータを取得しました。
飛行機の搭乗者の健康状態に問題なく、予定通りに実験を行いました。パラボリックフライトは、1日目は9回、2日目は8回行われました。フライトは両日とも気象の関係で、多少の揺れが生じたこともありましたが、実験に影響はありませんでした。1日目の実験では、動作確認済みの血圧計が実験中に動作しなかったことがあり、トラブルシュートの結果、2日目の実験では正常に動作しデータを取得することができました。予定のデータを取得でき、実験後のクイック解析によると、ヒトの前庭系が重力変化時の血圧変化に関与していることが示されました。新聞社の取材もあり、学生さんたちは緊張気味に実験内容についての説明を行いました。
パラボリックフライトを経験した感想としては、「緊張したが、いざパラボリックフライトが始まると楽しくて仕方がなかった。貴重な経験だった。」「大変面白かった。」「車酔いや船酔いとは、ちょっと違う酔いを経験した。」などのコメントを得ました。早速、次回のコンテストに応募するための作戦会議が始まっていました。
近い将来、人類が国際宇宙ステーション等の宇宙空間で生活を行い、生活空間を快適にするためには生活関連の技術開発が必要です。本研究は、地上実験では取得不可能な微小重力下での衣服材料と衣服デザインの最適化のための基礎データを取得し、飛行士の要求が高い温熱的な着心地を解明することを目的としています。実験では衣服素材のドレープ形状の変化や、衣服内環境および皮膚温を測定しました。
飛行機の搭乗者の健康状態に問題なく、予定通りに実験を行いました。パラボリックフライトは、1日目は10回、2日目は10回、3日目は11回行われました。その結果、当初の測定項目のデータを取得できました。1日目の実験後に、温度センサーの中の1本に接触不良気味のものが発見され、その後はフライト中の操作で対処することができました。ドレープ形状は、0~2Gの変化に応じて変化し、その映像が取得できましたので、今後の解析が待たれます。また、衣服内の温度・湿度データによると湿度データの変化が大きく、また皮膚温にも興味深い変化があり、今後詳細に解析する予定とのことです。
本研究は、様々な重力環境においてミルククラウンを形成し、その形成過程における重力加速度の影響を調べ、ミルククラウンの形成メカニズム解明に必要な実験データの取得を目的としています。実験は、液滴を射出する装置に試料(シリコーンオイル)を搭載し、CCDカメラで試料の射出からミルククラウンの消滅までの撮影を行いました。
飛行機の搭乗者の健康状態に問題なく、予定通りに実験を行いました。パラボリックフライトは、1日目は10回、2日目は10回、3日目は11回行われました。マザーボードとハードディスクの不調や、シリンジからのシリコーンオイル漏れ、液溜め蓋の故障など、数々のトラブルに見舞われ、スタッフの支援もあり、連日夜間まで必死のトラブルシュートが行われました。結果的に、3日間の実験が終わったところで、解析に使えるクラウン画像が取得できたことが確認されました。今後は、さらに地上で実験を重ね、比較検討して重力の影響を解析する予定とのことです。
0~2Gの連続的な変化は、実験操作をより困難にします。例えば、地上では簡単な操作が、2Gの下では腕の重さも2倍になり、とたんに操作が難しくなります。また、機内の座席周りの写真を掲載しましたが、モノが飛んでいってしまうので、筆記具なども固定しておく必要がありますし、限られた時間の中で手順を考えながら操作するとミスを誘いますので、実験操作の手順書を貼っておく必要もあるでしょう。
今回のコンテストでは、選定委員の先生方も現地に来られました。学生さんは先生方との会話を通して、色々学んだこともあったようです。
この実験は、飛行機を運航するスタッフ、本コンテストを運営するスタッフ、飛行機相乗りで実験を行う公募地上研究の研究者、それから複数の学生チームが、一体となり所定のスケジュールに沿って進められていきます。個人研究のように自分のスケジュールで進めることはできません。他の人に迷惑をかけないように、限られた時間と場所の制約の中で、チームワークを発揮し、準備や実験を進めなくてはいけません。学生チームは、実験装置の不具合発生など、それぞれの事情を抱えながらも、限界ギリギリまで最善を尽くして準備と実験に取り組みました。
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