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第2回 航空機による学生無重力実験コンテスト 実施報告
開催時期:2004年12月、2005年2月、3月(コンテストは終了しております)
チーム名 | 大学名 | 日記 |
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前半チーム | 学習院大学・東京大学・東京藝術大学 | |
後半チーム | 福井大学・岐阜大学・日本女子大学・東京都立科学技術大学 |
※表の をクリックすると、対応する内容が下に表示されます。
テーマ選定委員会で選抜された6チームのうち、学習院大学チーム、東京大学チーム、東京藝術大学チームの3チームのメンバーが、飛行機に搭乗し、無重量(加重力)状態を利用した実験を行いましたので、その様子の一部分をお伝えします。実験は、2004年12月10、12、13日の3日間行われました。
午前中にラックにそれぞれの装置を取り付け、さらにラックを飛行機に据え付ける作業を行いました。13時半からはEMI試験(飛行機の電源だけで装置をオン/オフする)を実施し、学習院大学・東京大学の装置には問題がないことを確認し、東京藝術大学の装置には入力に13アンペアが必要であると判明しましたので、ダイアモンド・エア・サービス(DAS)社の担当者指導の下、対策を行いました。
飛行機に乗るための安全教育や最終の全体打合せを行い、その後最終の確認作業を行いました。特に、東京藝術大学チームは固定カメラで撮影する映像がそのまま芸術作品となるため、入念に光源の設置作業を行いました。
12月10日は、ふたつの高気圧にはさまれた低気圧と前線が太平洋上にあり、北上していましたが、実験の空域(日本海の能登半島付近)では、雲もあまりなく飛行に問題ないと判断され、11時半過ぎに航空機は名古屋空港を飛び立っていきました。
このフライトでは、各チーム担当者が1名ずつ搭乗し、実験装置の操作を行いました。無重量を体験した学生さんは、「3回目から酔ったが、最後は慣れてきて楽しめるようになった」「無重力状態は違和感なく楽しめた。過重力時に思考能力がにぶった」「ジェットコースターは嫌いだけどパラボリックフライトは大丈夫だった」と、初めての体験を興奮気味に語ってくれました。
次に各チームの初日の実験の様子をお伝えします。
この実験は、パラボリックフライトによる微小重力下で、線香花火を燃焼させ、その火花の飛び方を観察し、撮影した画像データから(1)線香花火の花火の量、(2)火球の大きさ、(3)火球表面の対流、(4)燃焼中の線香花火の温度、(5)花火の周りの空気の対流を解析するものです。
1日目の実験では、中国産の線香花火を用意し、実験を行いました。11回のパラボリックフライト中に10回のデータ取得に成功し、装置動作も良好でした。
実験では、無重力状態の間は、線香花火はほとんど火花を出さず、回復G状態(約1.5G程度)になると急にたくさんの火花が出たり、または火花が消えたりしました。
このチームの実験は、磁性流体という、磁界の影響で液体の形状が様々に変化するコロイド溶液を使用して、微小重力状態での磁性流体の形状を観察するものです。
磁性流体では、スパイク状の突起を生じたり、3次元的に奇妙な形をする「スパイク現象」というものが観察されます。
地上でのスパイク現象は、表面張力と静磁エネルギーの他に重力の影響も受けているため、微小重力下で磁性流体の形状変化を観察することで、磁性流体に表面張力と静磁エネルギーがおよぼしている影響について解析できると考えています。
実験では、11回のパラボリックフライトのうち9回のデータ取得に成功しました。10回目のパラボリックフライトでは、Gがマイナス方向に働いたため、液が実験容器から漏れましたが、今後はその対応を検討することにしました。また、微小重力状態では、上下コイルに付着している流体量が同じで形状も同じという面白い形が観察されました。
次回のフライトでは、流体の量とコイルの電流を変えて実験をする予定です。
音波による空気振動を利用し、シリンダー状の空間内に微粒子の模様を浮かび上がらせ音楽によって、異なる形や動きを作り出す様子を観察する実験です。
パラボリックフライトでは、電源オン時にアンプとスピーカーが故障し、フライト中に何とか修理を試みましたが、残念ながら修理できず、予定の作品データの取得ができませんでした。しかし、修理しながらも、持参した試料を小さなケース内で浮遊させその様子を観察しました。
実験終了後、地上に戻った後に、他大学チームの先生方にアドバイスを頂きながら、不具合対策を実施しました。アンプの出力を抑える必要があったため、抵抗を入れる工夫をしました。 しかし、アンプの出力をおさえると音波が小さくなり、試料が振動しない可能性もあるため、芸術作品としての良さを失わないための試行錯誤に大変苦労しました。
前日の航空機実験をふまえ、東京藝術大学チームは引き続き不具合対策を行いました。また、学習院大学チームは新たにメンバーが到着したため、メンバーに実験装置の使い方などの説明を実施、明日の実験に向けて万全の体制を整えました。
12月12日は、日本海に気圧の谷が接近しており、フライトには多少の揺れが予想されましたが、特に問題ないと判断され、12時過ぎに航空機は名古屋空港を飛び立っていきました。
このフライトでは、前回と異なる各チーム担当者が1名づつ搭乗し、実験装置の操作を行いました。無重量を体験した学生さんは、「気分が悪くなったが、最後まで実験データが取得できてよかった。」「日本製の線香花火は煙が多かった。少し酔ったが頑張った。」「試料の交換は大変だったが、きれいな映像が取得できてよかった。パラボリックフライトはとても楽しかった。」と、初めての体験を興奮気味に語ってくれました。
次に各チームの2日目の実験の様子をお伝えします。
1日目の実験では、前回と違う日本製の線香花火を用意し、実験を行いました。12回のパラボリックフライト中に10回のデータ取得に成功し、装置動作も良好でした。
実験では、国産花火のほうが多くの煙を出すためチャンバーの排気時間を十分にとるなどの対策がとられました。G(重力)の様々な状態で花火に点火し、G変化による燃焼状態も観察しました。
無重量状態の間は、線香花火はほとんど火花を出さず、燃焼が停止したように観察されました。また、2G状態ではよく燃焼し、無重量状態になると急に燃焼がとまることも観察でわかりました。
実験では、12回のパラボリックフライトのうち12回全部のデータ取得に成功しました。また、前回の経験より対策された結果、液もれも発生せず、無事動作しました。
今回のフライトでは、磁性流体の量の最小・最大の差を増やしました。また、電磁石の先に薄い円形状の磁石を貼りつけ、磁力の及ぶ範囲を変える工夫を行いました。
その結果、無重量状態時におけるスパイク形状が地上実験と比べて明らかに高く大きく、電磁石の中心軸付近のスパイクが更に大きくなったことが確認されました。
不具合対策により、スピーカを変えるなどした結果、今回のフライトでは無事データを取得することが出来ました。
実験試料として、「LED+真鍮(小)」を封入、途中で「鈴+発泡スチロール」に変更しました。音波により、真鍮と発泡スチロールの動きに差があり大変面白い映像を取得することが出来ました。
次回の最終フライトで、試料に工夫をしてさらによい画像を取るための検討をしました。
12月13日は、大陸からの移動性高気圧の影響でおだやかに晴れると予想され、ジェット気流の影響で多少のゆれが予測されるものの、飛行に問題ないと判断され、11時過ぎに航空機は名古屋空港を飛び立っていきました。
このフライトでは、1日目・2日目と異なる各チーム担当者が1名づつ搭乗し、実験装置の操作を行いました。無重量を体験した学生さんは、「データが無事取得できて本当によかった。最後のパラボリックフライトは実験を忘れて楽しみました。」「実験に集中したためか少し気分が悪くなりました。そのときのパラボリックフライトは実験に失敗しました。ごめんなさい。」「実験に集中したのでパラボリックフライトを楽しむ余裕は全くありませんでした。自分としては最大の努力をしたと思っています。」と感想を述べ、その様子から実験に集中し頑張ったことが伝わってきました。
次に各チームの3日目の実験の様子をお伝えします。
2日目の実験と同様に日本産の線香花火を用意し、実験を行いました。12回のパラボリックフライト中に10回のデータ取得に成功し、装置動作も良好でした。
フライトでは、国産花火はたくさんの煙を出すために、実験者が少し酔ってしまいました。実験では、U字型に曲げた花火がどうなるか観察しました。はじめに上から下に火が燃える区間では火の玉が下がっていき、突然火が消えるという現象が生じました。これについて、今後解析を進める予定です。
実験では、12回のパラボリックフライトのうち11回のデータ取得に成功しました。最後の1回で流体を補填する注射器が壊れてしまいました。
実験では、磁性流体の形状は大きく外側に広がるように展開しましたが、スパイクの先は丸くなりました。
1日目・2日目と異なるスピーカーを設置し、実験に挑みました。
実験試料として、最初は「発泡スチロール(小)+(大)」を使用しました。実験の途中でそのほかの様々な試料「鈴、真鍮(小)(大)、オブジェ、発光LED、ビーズ、お米、梅干など」に交換しました。音波によるスチロールと真鍮の動きに差があり、非常に面白い映像を取得することが出来ました。発光LEDも見事に光ったため、とてもきれいな映像になりました。
■実験結果(作品)
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3日間の実験フライトを無事に終了することができました。実験をおえて、第3回コンテストに応募したいというチームも出現するなど、有意義な実験となりました。今後は取得データの解析作業が引き続き行われます。
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