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シンポジウム・ワークショップ

国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」利用成果シンポジウム

上空400キロメートルの苛酷な環境を知る、宇宙の百葉箱(SEDA)

最終更新日:2013年2月28日

古賀清一(JAXA研究開発本部)

宇宙の百葉箱とは?

宇宙環境計測ミッション装置(Space Environment Data Acquisition equipment-Attached Payload略してSEDA-AP(セダ・エイピー)もしくはSEDA(セダ))の役割は、宇宙環境を知り、宇宙機や宇宙飛行士の安全を守ること。SEDA には8つもの計測機器が詰め込まれ、国際宇宙ステーション(ISS)が周回する高度400kmの宇宙の様々な環境を監視しています。

宇宙の百葉箱としてSEDAが視ている宇宙環境とは、大まかに、宇宙に飛び交う放射線、宇宙プラズマ、原子状酸素、そして微小隕石やスペースデブリに分けられます。

放射線の環境とその影響

SEDAが視ている放射線には、超新星爆発によって太陽系の外からやってくる銀河宇宙線のほか、陽子や電子といった高エネルギーの粒子が地球の磁場によってとらえられている領域(バンアレン帯)からの放射線、そしてこの3月に、「太陽の活動が活発で通信機器に影響を及ぼすのでは?」と世間を騒がしていた太陽宇宙線があります。太陽宇宙線は太陽表面で大爆発(フレア)が起きると太陽風が吹き、中性子や陽子といった高エネルギーの粒子が地球に降りそそぐのです。

SEDAも今回の太陽フレアによる放射線を鮮明にとらえていました。今月3月1日から20日までの間にSEDAが計測した陽子の量を日にちごとに地図に書き込み、コマ送りで見ると、北極と南極付近で放射線量が上昇する(地図上では赤くなる)のが視て取れます。実は、両極地は、特に太陽フレアからやって来る粒子が入り込みやすいと言われている場所なのです。

放射線の部品に対する影響には2種類あります。放射線を浴び続けることで劣化する、総量との関係によるものと、単に一個の荷電粒子(イオンの状態になっている粒子)が通過するだけでもコンピュータソフトが誤作動する、一回限りのものです。実際に「きぼう」は、バンアレン帯の影響を強く受ける両極地と南大西洋磁気異常地域を飛行する際に、誤作動を多く起こしていることが計測によって確かめられました。

宇宙線の宇宙飛行士への影響としては、宇宙飛行士が船内で浴びる1日の量は地上で自然界より浴びる量の約半年分(約1ミリシーベルト)になります。船外活動時にはその量は数倍になります。そのため、安全に船外活動をするために、国際宇宙ステーション周辺の宇宙環境情報を監視します 。

宇宙プラズマとその影響

船外活動では放射線のほかに宇宙に飛び交うプラズマにも注意が必要です。プラズマはISSの機体を帯電(例えば静電気がたまった状態)させ、帯電状態に差(電位差)が生じると放電(静電気でバチッとなる状態)します。機体と宇宙飛行士の間に電位差があると、状況によっては宇宙服に穴が開くこともありえます。SEDAは一周回分の90分ごとに0ボルトから-30ボルトに電位が変化することを計測しました。ISSでは、これらをモニターし、宇宙飛行士が危険に会わないように電位差が調整されています。

原子状酸素による影響

400kmの軌道上は真空に近いものの、ごくごくわずかに酸素の粒が存在しています。地上では酸素(O2オーツー、つまり酸素の原子を表すOオーが2個くっついて)分子で存在していますが、400km上空の宇宙では紫外線によって分解されて原子一個ずつ(つまりOとO、と言った状態)で存在しています。この原子状酸素と呼ばれるばらばらになった酸素は、高速でISSに衝突すると、ぶつかった相手と何かしか結びつこうとして、その結果、ISSの表面を削ったり、酸化したりします。

その状況をよく知るために、SEDAでは材料暴露実験装置という装置を作って実験が行われました。実際にISSや衛星に使われているのと同じ材料を、1つの板に少しずつ取り付けたもので、その装置を直接宇宙空間にさらすのです。装置は宇宙飛行士が船外活動によって取り外し、すでに地上に戻って来ています。ある材料はネジで止めてあったところとそうでない所で色の変化が見られたり、また別の材料は削られているのが分かります。

微小隕石やスペースデブリなどによる影響

また、軌道上には、微小隕石や以前打ち上げられた衛星の破片などが存在しています。それに衝突すると、同じように材料の劣化が起きます。これら微小粒子がどのぐらいの速度で衝突するのか、その起源などを知るために、スポンジのような素材を取り付けた捕獲実験装置も、材料暴露実験装置と一緒に組み込んで船外にさらしておいたところ、実際に粒子の捕獲に成功しました。いずれの実験も現在詳細を分析中です。

囲み記事例<発表者から一言>

古賀清一さんとSEDA(SEDAの代表研究者)

SEDAのプロジェクトに参加したのは、1999年にJAXA(旧NASDA)でSEDAのミッション機器の中性子モニタ、重イオン観測装置、プラズマ計測装置を担当したことからでした。現在はSEDAのミッションのとりまとめをしています。

大学では、衛星データを使用した地球磁気圏の研究を行っていた関連で宇宙に興味を持ちNASDAに就職しました。衛星に比べて、SEDAでは有人活動によりサンプル等を地上に持ち帰れるほか、及び衛星ではあまり得られない400km高度の宇宙環境を長期に計測出来る醍醐味を感じます。

シンポジウムの感想

今日のシンポジウムは内容に非常に詳しい方が会場に多く、専門的な質問に驚きました。

シンポジウムの第2部で、モデレータの竹内さんからISSに5ヶ月半滞在した古川さんに、放射線の健康への影響を聞いたところ、古川宇宙飛行士によると「ISSでは1日に約0.5~1mSv(地上で自然に浴びる放射線量の半年分)を浴びましたが、宇宙で仕事をする許容範囲のリスクで、今のところ特に問題ない」そうです。色々な説によると、例えばがんになる確率が1%程度あがる可能性はあるというのですが、宇宙で仕事をすることと比較した場合に許容可能なリスクだと考えているとのことでした。

さらに「きぼう」内での放射線の意外な側面が紹介されました。例えば放射線では、中性子が船外よりも船内で多く飛び交うそうです。荷電粒子が外からやって来て船体をたたき、その材料を構成する中性子を船内にたたき出すと言った仕組みがあるためだそうです。一般的には船外よりも守られていると思われる船内ですが、船外よりも放射線が高くなることがあるのです。

この点に関しては第2部の質問対応コーナでは、会場からの質問をきっかけに奥深い話が展開されました。質問はSEDA の中性子を検出する機器が遠いところにあるのはなぜか、というものでしたが、先ほどと同じ仕組みによって、中性子はSEDAを作る材料自体からも出されるものもあります。そのため、機器内の中性子でなく、本来観測したい太陽からの粒子のみのデータを得る工夫であることなどが紹介されました。

各講演の詳細

シンポジウム内容の要約
日本の実験棟「きぼう」とは?
上垣内茂樹(JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部)
X線で見るダイナミックな宇宙(MAXI)
上野史郎(宇宙科学研究所)
高精度なデータから知る地球大気とオゾン層の今(SMILES)
塩谷雅人(京都大学)
上空400キロメートルの苛酷な環境を知る、宇宙の百葉箱(SEDA)
古賀清一(JAXA研究開発本部)
 
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