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シンポジウム・ワークショップ

国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」利用成果シンポジウム

シンポジウム内容の要約

最終更新日:2013年2月28日

2012年3月22日、東京秋葉原UDXギャラリーにおいて「国際宇宙ステーション/「きぼう」利用成果シンポジウム~上空400キロメートルから視た宇宙と地球、「きぼう」船外実験のはなし~」が開催されました。会場には中学生以上の約200名の方が集まり、実験の担当者自らが「きぼう」船外実験プラットフォームに載せられた3つの観測機器が見た世界、その成果を紹介しました。

第1部では船外実験の話の前に、JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部の上垣内茂樹が国際宇宙ステーション(ISS)と「きぼう」日本実験棟について紹介し、また、今後の船外実験――例えば、宇宙での作業を手伝うロボットの実験、地球と宇宙の境界の大気を調べる実験、軽くて丈夫で持ち運びも便利な宇宙用の梁の実験などについて触れ、数年後には高エネルギー宇宙線を観測して調べるための装置(CALET)が打上げ予定であると報告しました。

第2部では去年11月までISSに5ヶ月半長期滞在した古川聡宇宙飛行士と、モデレーターとしてサイエンス作家の竹内薫さんを迎え、パネルディスカッションと会場からの質問を中心にしたディスカッションが行われました。第2部開始前に沢山の質問が寄せられたため、急遽竹内さんが予定を変更、質疑応答の時間が長く取られました。ほぼ全ての質問を取り上げながら、実際に「きぼう」に滞在した古川さんの話を交えることで、「きぼう」の「視る」と「視た世界」について多様な側面を深く紹介する機会となりました。

シンポジウム終了後、竹内さんは、「サイエンス作家の私でも知らなかった研究成果があり、正直、驚きました。一般の方々が、マスコミ報道では知り得ない素晴らしい成果に触れる貴重な機会ですね。小学生から年配の方まで、会場も熱気に包まれ、つくづく宇宙っていいなぁ、と思いました。」と感想を残されました。

以下に第1部、第2部と会場を沸かせた3つの観測機器で視た宇宙と地球の話と、シンポジウム終了後の登壇者のコメントもあわせてお届けします。

「X線が見るダイナミックな宇宙(MAXI)」

上野史郎 (宇宙科学研究所・ISS科学プロジェクト室MAXIグループ)

MAXI(マキシ)とは、「全天X線監視装置」(Monitor of All-sky X-ray Image)の略で、巨大なX線デジタルカメラです。天体にはX線を出すものがあり、宇宙を飛び交うX線を待ち受ける「天体観測サイエンス」を行っています。X線は人体は通過できるのに、大気を通るのは難しいため、MAXIを地球大気の外を周回する「きぼう」に載せて初めて実力を発揮します。X線を出す天体として研究者が競争で探しているのがブラックホールです。MAXI打ち上げ後、世界中で見つけられた8個のブラックホール候補のうち、MAXIは4個の発見に貢献しており、世界1位タイ。かなり「いい線いっている」装置です。

「視る」工夫の鍵は「全天」、つまり、空のあらゆる方向を観測できることです。天体からのX線は突然出現し、その後弱まるため見逃さずに観測するのが難しいのですが、ISSが90分で地球を一周、機体が360度回転するので、MAXIは90分に1回ほぼすべての方向を監視できます。通常の天文衛星は望遠鏡を使って一点を細かく調べるのに対し、MAXIは望遠鏡を使わずに広範囲をパトロールすることでお互いを補い合っているのです。そのため、新天体の他の観測衛星で詳しく観測するために速報するのもMAXIの役目の1つです。

MAXIは巨大ブラックホールに星が吸い込まれる瞬間(その際に噴出されるジェット)を世界で初めてとらえるなど、宇宙を知る上で多くの成果を挙げています。また、視野は広いが1つ1つの天体については感度の低いMAXIでの成果があまり期待されていなかった普通の星についても、MAXIのデータを地道に調べた大学生によって、予想外に強いX線強度の増加(フレア)が捉えられていることがわかりました。MAXIは今後3年間観測を続けますが、MAXIや他の天文衛星では狙えなかった新しい研究分野(数秒から数十秒の間だけ大量の軟X線を出す現象の研究)を開拓するために、より広い視野で感度を上げたWide-Fieldワイルドフィールド MAXI(Wide-Field、意味は広い視野)計画も進行中です。

終了後のコメント:「聴衆の方が予想外の箇所に興味や関心があることが、シンポジウム中の反応や質問をとおして伝わってきました。生の講演会でしか得られない新鮮で貴重な発見でした。発表者である私自身勉強になり楽しめました。」「シンポジウム終了後、会場の外でも熱心な質問をいただき、関心の高さに驚きました。私の明日からの活力にもなります。ありがとうございます。」

「高精度なデータから知る地球大気とオゾン層の今(SMILES)」

塩谷 雅人 (京都大学・SMILESの代表研究者で専門は大気科学)

超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(Superconducting Submillimeter-Wave Limb-Emission Sounder、略してSMILES(スマイルズ))は、宇宙にありながら地球の大気を視る目で、今回はオゾン層観測の成果についてです。現在、世界中の大気研究者はオゾン層がいつ回復するのか、オゾン量の将来予測をしています。SMILESは、オゾンの存在に重要でありながら、微量なために観測の難しい大気成分(特に塩素と臭素)について、世界最高精度で地球規模に広範囲の分布を描きだしました。これは、ISSの大型太陽電池パネルで造られる電気により冷凍機の利用が可能になり、計測機器を-269℃に冷やすことができたためです。温度が高いと機器から生じる電気信号が観測の邪魔になるところ、他の衛星観測の場合よりはるかに高感度の測定が出来たのです。

オゾンは地上約30kmの層に多く、SMILESは地球大気の縁を斜めに透かすように視、高度2-3kmごとの細かい観測を広範囲に行えます。これによってオゾン層の立体的な構造がとらえられ、大規模な大気循環とオゾン濃度への影響が視覚的に裏付けられました。また、ISSの周回は、ある地点を異なる時間帯に通過するため、オゾンの1日の時間変化が観測可能になりました。2010年1月下旬、数日間で北極点の気温が30度も高くなる成層圏突然昇温現象が起こりましたが、SMILESの観測により、北半球でも南半球と同様なメカニズムでオゾン破壊が起こっていることが明らかになったのです。SMILESは観測開始から半年で故障してしまいましたが、予想以上の成果を得られました。

終了後のコメント:「ISSでは同時進行で多くのミッションがあり、譲り合いや予期せぬ困難もありました。しかし、他分野も利用する「実験室」だからこそ、自分達にはない発想に触れ、挑戦的な観測をすることが出来ました。」「会場の皆さんからのマニアックな質問には驚きました。立場の違う異なる視点を持つ方の前で話すのは、学会発表よりもある意味緊張し刺激を受けました。」

「上空400キロメートルの苛酷な環境を知る、宇宙の百葉箱(SEDA)」

古賀 清一 (JAXA・SEDAでは研究のとりまとめを担当)

宇宙環境計測ミッション装置(Space Environment Data Acquisition equipment-Attached Payload略してSEDA-APもしくはSEDA(セダ))の役割は、宇宙環境を知り、宇宙機や宇宙飛行士の安全を守ること。ISSが周回する高度400kmには、放射線、プラズマ、微小粒子など、危険につながる物質が多くあり、SEDAは8つもの計測機器を載せてそれらを視ています。

放射線の機器への危険には、放射線の粒があたる時に起きるコンピュータの誤作動と長期間の被ばくによる2種類があります。最近は太陽活動も活発で、SEDAは太陽表面で大爆発が起きた際に大量に地球に降って来る太陽宇宙線も鮮明にとらえています。また、意外かもしれませんが、船外よりも船内の方が放射線が高くなる時もあります。それは、強い放射線が船体に当たると、船体の材料内の中性子(放射線を出す)を船内にたたき出すためです。(会場で健康への影響を聞かれた古川宇宙飛行士によると、ISSでは1日に約0.5~1mSv(地上で自然に浴びる放射線量の半年分)を浴びましたが、宇宙で仕事をする許容範囲のリスクで、今のところ特に問題ないそうです。)

船外活動では宇宙を飛び交うプラズマにも注意が必要です。プラズマはISSの機体を帯電(例えば静電気がたまった状態)させ、近寄ると放電して宇宙服に穴が開くこともありえます。ISSでは活動にあわせて電位差を調整できるようになっています。さらに、400km上空の宇宙では、ごくわずかに存在する酸素が地上のように分子(O2)としてではなく、紫外線に壊されて原子(O)で存在していて、粒が高速でISSに衝突すると、表面を削ったり酸化します。SEDAでは実際にISSや衛星に使われているのと同じ材料のサンプルを、一定期間船外にさらした後、地上に持ち帰って変化を調べています。また、微小隕石や古い衛星の破片なども飛び、同様に材料の劣化を起こします。そこで、捕獲実験装置も取り付け、衝突する粒子の捕獲に成功しました。現在、捕獲した粒子の詳細を分析中です。

終了後のコメント:「プロジェクトには1999年にSEDAの機器を数機担当して以来参加しています。大学では衛星データを使用した地球磁気圏の研究を行いましたが、SEDAでは有人活動でサンプル等を地上に持ち帰れる他、衛星ではあまり得られない400km高度の宇宙環境を長期計測出来ることに醍醐味を感じます。」「会場には内容に非常に詳しい方が多く、専門的な質問に驚きました。」

各講演の詳細

シンポジウム内容の要約
日本の実験棟「きぼう」とは?
上垣内茂樹(JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部)
X線で見るダイナミックな宇宙(MAXI)
上野史郎(宇宙科学研究所)
高精度なデータから知る地球大気とオゾン層の今(SMILES)
塩谷雅人(京都大学)
上空400キロメートルの苛酷な環境を知る、宇宙の百葉箱(SEDA)
古賀清一(JAXA研究開発本部)
 
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