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若田光一飛行士 2001[4](参考資料)
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■参考資料:

2000年9月23日に、若田飛行士宛に以下のメッセージを送信した。
インタビューの中で言及されている「鯉のぼり」案などはこのメッセージに基づく()。


若田 光一 様

Sat, 23 Sep 2000

Research Group of "Artistic Approaches to Space"(AAS)
代表:福嶋敬恭(彫刻家、京都市立芸術大学教授)


打上げを目前に控えて、多忙な日々を送られていると拝察します。
先日のTV会議は思わぬことで実現できませんでしたが、若田さんから帰還後にお会いしましょうとのメッセージをいただき、とてもうれしく思います。

私たち「宇宙への芸術的アプローチ研究グループ」は、NASDAの方々と共に、宇宙環境の芸術的可能性を数年来研究し、"MUSE"という名のアートミッションを提唱していますが、何より大切に考えているのが、宇宙飛行士の方々との直接的なコミュニケーションです。なぜなら若田さんはじめ、宇宙飛行士の方々のあらゆる経験や行為に新しい芸術表現の種があり、それを花開かせることは、人類の文明の未来にも大きな貢献になりうると信じるからです。今回の若田さんのISSの組立て作業は、宇宙に人間が滞在する空間を押し開く画期的なミッションです。若田さんはRMSを操作されるわけですが、それをあやつるのが若田さんの手であるということ、これは私たち日本人にとって誇らしいだけでなく、より広く人間の創造性に思いをはせさせるものです。

そこで、今回のミッションに花を添え、さらに今後の人類の宇宙活動につなげる意味で、次のようなことを行うことはできないでしょうか。作業の重大性と緊密なスケジュールは重々承知していますが、若田さんの機知と想像力をみこしてのささやかなご提案です。

(1)ハンド・プリント:

hand.jpg組立て成功のあと、ISS入室の際に、ISS内のしかるべき場所に、若田さんの手形を残していただく。手に何をつけるか、どこに手形をつけるかは、前回コーヒーで宇宙書道をされた若田さんにおまかせいたします。できれば、若田さんの手形が長く残り、その周りにISSにやってくる宇宙飛行士の手形が次々と集まっていけば、文明の曙に人類が洞窟に残した見事な手形群が、史上初の宇宙ステーションの中で再現されることになります。手形は、個々人の記念というだけでなく、人間の創造性についてさまざまなことを物語ってくれると思います。 今回、最初の一手を若田さんがつけ、他の宇宙飛行士の方も一緒にやっていただけると楽しいと思います。

*参考画像をつけておきましたので、ごらん下さい。

(2)宇宙鯉のぼり:

不可能で馬鹿げたことかもしれませんが、若田さんが操作されるRMSのできるだけ先端で、EVA中の宇宙飛行士に支障のない位置に、1メートルほどの日本の鯉のぼりを取り付けることはできないでしょうか。鯉のぼりは、東洋・日本の自然観を表わすものですが、それが宇宙空間を泳ぐ構図は想像しただけでも心おどる出来事だと思います。
私たちはまた、微小重力空間特有の造形表現や身体表現の可能性に関心をもっています。それは人々の宇宙の理解を促進し、また地球や人間自身を見直す契機になると考えています。以下は、もし機会があればシャトル内で試みていただきたいと思うものです。

(3)糸遊び:

stringplay.jpg船内にある7つの任意の小物体(食品や食器、ヘヤピン、道具等)を糸ないし紐でつないで輪を作り、空間に浮かせる。7というのは宇宙飛行士の人数です。この輪や物体に動きを加えると、自在に変化する柔構造体ができます。今回、若田さんは軍配を持ってあがられるそうですが、輪が相応の大きさであれば、宇宙相撲の立体土俵となって内側で四股を踏むことができるかもしれません。糸や紐をひっぱりあえば、宇宙綱引きになりますし、小さなものなら宇宙ゲームの道具になるかもしれません。さらにそれは、宇宙での自在な空間構築のヒントになるかもしれません。

*これも参考画像をつけておきましたので、ごらん下さい。

(4)「マインドガーデン」の創作:

地球のすばらしい眺めを背景にしながら、それを借景として、若田さん自身の「心の庭」を自由に創作していただく。材料は、絵でも粘土でも、あるいは船内の物体を何かに見立てるかたちでも結構です。
古来、日本人は心のよりどころを自然に託し、独特な「庭」を創造してきました。そこで、若田さんに「若田流宇宙庭」を自由に創作していただければと考えたわけです。「庭」は、他のさまざまな文化においても、自然観や心の風景の象徴として作られてきましたので、同乗の宇宙飛行士の方にもそれぞれの「心の庭」づくりに参加していただければ、相互のコミュニケーションに役立つとともに、文化の違いを越えて人間の心を知ることにもつながると思います。
若田さんは、前回のミッションでRMSを操作しながら、その背景にある地球の美しさに感動されていました。私たちのMUSE計画では、宇宙環境での人の心の中の出来事をあらゆる方面から探り、その創造的展開をはかることを"KOKORO Project"と呼んでいますが、この提案は、若田さんの感動をこのプロジェクトに結びつけようとするものです。

(5)宇宙における二つの原姿勢:

一つは、「微小重力空間でもっとも楽な姿勢を実際にとる」。もう一つは「座禅を組む」。
両者は、ある意味で人間の姿勢の両極だといえます。微小重力空間でこれを実際に試み、映像で記録しておけば、今後の宇宙での身体表現の豊かなヒントになると思われます。

改めて申しますが、若田さんの今回のミッションのハードな内容はよく理解しておりますので、以上は無茶な点が多々あることは承知しています。ただ、私たちが、若田さんはじめ日本人宇宙飛行士の方々と共に、新しい宇宙時代の文化の創造に寄与したいと考えていることをお伝えしたいと思い、このようなメールを作成しました。どうかご寛容とご理解のほど、お願いいたします。

それでは私たち一同、次回は実際にお目にかかれることを楽しみに、地上から若田さんのミッションの輝かしいご成功をあおぎ見ております。どうかがんばって下さい!


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