宇宙庭 space garden -3
<< previous | next >>

s.gif
s.gif3. 予備実験・調査研究 s.gif

spacer.gif本共同研究の最終年となる2003年度は、「きぼう」内での「宇宙庭」実験を想定したモデル作りのための予備実験、その結果を踏まえて実物大のモデル制作、提案発表を目指した。

まずモデル制作に先立ち以下の項目を中心に予備実験、調査研究をおこなった。

(1)「きぼう」内で生育できる植物の調査
「きぼう」内の温度、湿度、日照条件、微小重力空間環境下で生育できる植物を調査し、選択する。

(2)植物の生育を保つ培地の開発、研究
「きぼう」内の自然環境化でそのかたちを保持し、同時に植物の保水能力と生育を保つための培地の素材研究、開発をおこなう。

(3)「宇宙庭」の形態の模索、研究
微小重力空間での人の動きや移動と、「庭」が空中に浮遊しているという条件を念頭に、視線をひきつけるようなフォルムを研究する。

これらの項目は平行して個別に調査、実験がおこなわれたが、選択された植物とその培地、浮遊する庭のフォルム等は当然のことながら関連している。最終的に、「宇宙庭」という統合されたものとして提示することを念頭に実験は進められた。

なお、JAXAからの「きぼう」内の環境に関する情報、過去の植物に関する実験資料の検討、植物の生態学的側面からの調査、実験などについては、京都大学農学部環境デザイン・森本研究室所属、萩原篤氏の全面的な協力を得て進められた。

s.gif s.gif

(1)「きぼう」内で生育できる植物の調査

過去に宇宙で実施された実験情報から、植物の生育に関わる条件としては、微小重力による影響よりも、地上と同様、湿度、気温や照度の影響の方が大きいと判断した。
従って、植物の選択に関しては以下の「きぼう」内の環境条件の情報に基きおこなうこととした。

・気温 18.3〜26.7℃
・湿度 25〜70%
・気圧 97.9〜102.7kpa
・酸素分圧 19.5〜23.1kpa
・二酸化炭素分圧 0.707kpa以下


照度については情報が得られなかったものの、照明が人工の光であることという条件を加え、生育する植物の条件は、

・日陰下でも生育するもの
・乾燥に耐えるもの
・環境変化に強いもの

とした。

なお、宇宙線の影響や空気の対流が無いことによる影響は微小と考え、上記の条件から以下が使用可能と思われる植物の例である。

 アジアンタム*
 アスパラガス
 グズマニア
 パキラ
 ポトス
 レフレクサ
 テーブルヤシ*
 ピレア
 ミリオンバンブー*
 フィットニア*
 ヘゴシダ
 ナンテン*
 シルクジャスミン*
 など
 (*は後にモデルに使用した植物)

spacer.gifs.gif agentum.jpg
アジアンタム

nanten.jpg
ナンテン

tableyasi.jpg
テーブルヤシ

millionbunboo01.jpg
ミリオンバンブー

 s.gif s.gif

(2)植物の生育を保つ培地の開発、研究

当初、きゅうりの発芽実験、ミールでの小麦の育成実験など、過去に実施された植物実験に使用された培地の情報を得て、「宇宙庭」にも同様のものを使用することを考えたが、昔から軒先にぶら下げ観賞されてきた、しのだま(苔玉)の技法を利用する方が、浮遊する庭の培地としては発展性があるのではないかと考え、以下の点について実験、研究をおこない検討することとした。

・しのだまを培地とする植物の生育実験
・しのだまの大きさ、かたちの成形に自由さをもたせる方法

しのだまは腐植した植物の繊維などを芯として、シダやコケが表面に付着したものだが、実験では手に入れやすい腐植土であるピートモスを使用した。
ピートモスを芯とする直径約10cmの玉にパキラ、アスパラを植付け、表面をハイゴケで覆ったものを使用したが、約一月の期間では、生育は良好と判断した。
ハイゴケについては、乾燥に強く、日陰でも育つ。成長が早く、剛健で環境への順応性が高い上に入手しやすいなどの利点がある。結果、これを「宇宙庭」の培地として応用することが、適当であるとの感触を得た。
また、しのだまの成形に関しては、金属のパイプ等を利用すれば、それを躯体とし、腐植土を麻紐を巻きつけ固定することによって、大きさ、かたちが自由になり、且つ、移動や振動に耐える強度が得られることがわかった。

s.gif  s.gif

(3)「宇宙庭」の形態の模索、研究

「宇宙庭」の形態の模索については、2003年3月末におこなった、微小重力環境下での物体の動きを記録することを目的としたパラボリックフライトによる実験の結果を踏まえ、それをさらに発展させることとした。
テトラポット状の庭モデルによる実験とそのビデオによる記録からわかったことは、質量が一点に集中する形状より、分散している方が、より視線を引き込むような振る舞いをするということであった。
また、その場合、ひと目で形状が把握できるものより、ある角度からは視線が遮られ、廻り込まないと全体像がつかめないような形状と、ある程度のスケールを持つ方が、見立てとしての庭の効果が上がるのではないかと想像された。

s.gif s.gif
s.gif
<< AAS 2001-2003 index [page: index | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |]
s.gif