宇宙庭 space
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1. 概要 | このプログラムは、国際宇宙ステーション(ISS)における日本の実験モジュール「きぼう」において、「庭」を創作するための研究と制作を行なうものである。これは、微小重力と閉鎖空間に規定された宇宙環境における宇宙飛行士の精神生活に寄与するだけでなく、地上の諸条件に規定された「庭」の概念と形態を宇宙という全く新たな角度から見直すことによって、「庭」という汎文化的営みに象徴される人間と自然の創造的関係を普遍的地平から考察し、芸術と文明への新たな視座の創出をめざすことを目的とする。 もとより、宇宙における食物用や観賞用としての植物栽培は、ロシアでの研究をはじめとして継続的に行われてきている。しかしわれわれがめざすのは、単なる植物鑑賞だけでなく、「庭」というかたちで宇宙における人間と自然のインターフェースを実現することである。 「庭」は、古来より各民族がそれぞれの文化的背景や自然条件にあわせて様々な形態で作り続けてきた普遍的な文化的営為のひとつである。その形態や機能、またそこに象徴される自然と文化の関係のあり方は種々多様であるが、共通しているのは、「人工的に限定かつ造形され、人間の働きかけを通して秩序化される自然」であること、そして地面の形状に沿い水平方向に拡がっているということである。これは地球上における重力というアプリオリな条件に規定されたものであるが、ISSのような人工的な宇宙居住空間においてこうした意味での庭を実現することは不可能である。それ故、宇宙環境において「庭」を実現するには、植物や培地のあり方を考えるだけでなく、例えば人間の身体や意識との関係や、三次元的形状のものなど、これまでにない観点から「庭」という存在を捉え直し、その概念や形態を根本的に再定義する必要が生じてくる。 と同時に、ISS内はさまざまな文化的・民族的背景をもった人間が共同で生活と作業を行なう空間であり、当然「庭」の概念をめぐっても相違がある。宇宙環境において、文化的背景が違う人々が、新たな「自然」の理解とともに、共同で「庭」をつくりあげていくこと、このことは、宇宙飛行士間のコミュニケーションや精神生活に貢献するだけでなく、人類に共有可能な生命的価値のよりどころを見い出すことにもつながるだろう。 |
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