| プロフィール
| インタビュー | 土井宇宙飛行士の主要任務
|
| 打上げまでの土井宇宙飛行士 | 土井宇宙飛行士へのメッセージ
|
| 土井宇宙飛行士のステータスレポート |
軌道上イベント |
| 土井宇宙飛行士の本日の活動
|
土井宇宙飛行士へのインタビューとQ&A | |||||||||
|
日時:平成9年8月1日 場所:NASAジョンソン宇宙センター NBL(Neutral Buoyancy Laboratory:無重量環境訓練施設)にて行ったものです。 1)現在どの様な訓練を行っているのですか? 現在主に行っているのは主にスペースシャトル帰還時のシュミレーション訓練、スパルタンとのランデブ訓練、NASAマーシャル宇宙センターで行っている材料実験に関する訓練及びここNBL等で行っている船外活動に対応した訓練等です。忙しいですが、とても充実しています。 2)訓練の中でEVA(Extravehicular Activity:船外活動、通称「宇宙遊泳」)関連が占める割合は? 時間的に半分以上はEVA関連で、それが占める割合はかなり大きいです。 3)このプール(NBL)での訓練は重要なものなのですか? この訓練に力を入れて頑張っています。この訓練は、EVA(船外活動)中に各種のツールをうまく使えるようになる為の訓練で、クレーンの操作以外にも色々なツールの試験をします。
今回のEVA作業の目的というのは色々なツールの性能、使い方を検証することです。またEVA作業の手順は75%までは出来上がっていますがまだ完全には決まっていません。というのは手順の作成の際には、作業をどういう風に組み合わせていけば一番効率的に出来るか、ということを地上での訓練を通して練っていく必要があるためです。 5)これまでにNBLで行った訓練の時間数は? これまでに3回行い合計約20時間訓練を行いました。今後は40〜50時間の訓練を受ける予定です。またNBLとは別にジョンソン宇宙センターのプール施設でも15時間のEVAの訓練を受けています。 6)NBLでの訓練は難しいですが? EVAは6時間半。訓練では6時間だけどその間ずっと動き続けで、6時間ずっとマラソンをしているようなものです。その間水は飲めますが何も食べられません。肉体的にも精神的にも非常にきついものです。また宇宙服は動きにくいので安全性に気を遣います。そのような宇宙服の動きの体に覚え込ませる必要があります。また例えば自分の思い通りに体が動かずにイライラすることがあったりしますし、宇宙服という狭い空間に閉じ込まれることになるので訓練を通じて忍耐力を養うという目的もあります。このように訓練は厳しいですがやりがいがあります。 7)今回のミッションで特に重要な担当業務は? 船外活動が1番。2番目に重要なのが帰還時の運用です。 8)帰還時運用の主な仕事内容は? 帰還時にはコマンダー、パイロットそれぞれに順番に決められた仕事がありますが、それがうまくいっているかどうかについて、全体の仕事をオーガナイズする役割を担うことになります。また、シミュレーター訓練の時は色々非常事態を想定した状況が起こるので、サポートの作業も行います。 9)軌道上でゆっくりする時間はあるか? 今のタイムライン上にはありませんが、効率的に業務をこなせば自分の時間を作れると思います。 10)飛行中、仕事以外でしてみたい事は? 子供の頃から星に興味があり、またシャトルは性能の良い双眼鏡も備えているので星座を眺めてスケッチしたいです。 11)日本人最初のEVAを行うことになったことについては? 幸運だと思っています。EVAは今後より重要になってくる技術です。国際宇宙ステーション建設でも重要な技術でありますし、将来他の日本人宇宙飛行士も行うことになるでしょう。その意味で自分の経験が日本の有人宇宙活動に貢献できるのはとても嬉しいことです。 12)土井さんとともにEVAを行うウィンストン・スコット宇宙飛行士から何かアドバイスはありましたか? 彼はどんな時でも落ちついている人間で、イライラすることがありません。技術的なことでもとても参考になります。また肉体的にも若く見えるし非常に強靱です。彼を見習って着実に一歩一歩向上したいです。また彼は宇宙で地上と交信を行うとき、EV1、自分はEV2になりますが、普段はタカオ、ウィンストンと呼び合っています。 13)EVA中暑くなったり、寒くなったりしませんか? 宇宙服の表面の温度は変わりますが服の中は温度をコントロールできるのでそれはありません。ただし、1時間半で地球を1周するのでEVA中に5回昼と夜があることになり、明るくなったり、暗くなったりはします。 14)EVA中に色々なことを感じる余裕はあるか。 タイムラインには少し余裕があり、自分に与えられた仕事が早く終わってしまえば、次の作業に移るまでの間、ウィンストンの作業終了を待つことになるので、その間に自分の時間が出来るでしょう。 15)宇宙服の着心地はどうですか? 宇宙服を着てしまうと顔がかゆくてもかけません。もう少し自由に体が動かせればいいと思います。また閉鎖空間に入っているという感じが強いです。 16)船外に出ることは怖くありませんか? ここで訓練している限り怖くありません。NBLのプールでの訓練でも宇宙空間での危険は同じですけど、ここの訓練では危険を感じません。大事なのは訓練を通して宇宙服の機能を理解することだと思います。 17)EVAで期待することは? EVAでは360度のパノラマになり、宇宙を直接感じることが出来ます。何か新しい何かを感じた人もいましたし、何も感じない人もいました。自分がどう感じるのかは分かりませんが、新しい感動を感じたいです。 18)宇宙に関心を持った理由について教えて下さい。 友人に誘われて太陽の黒点観測を始めたのが宇宙への興味の最初。それから星を見るようになり、中学生の頃自分で望遠鏡を手に入れました。1971年には火星の大接近、M13球状星団を直径20cmの反射望遠鏡で見ました。天体観測には今でも行きますが、球状星団のその時の輝きは今でも忘れられません。宇宙しかないと思い、宇宙の神秘を解こうとすることは自分の一生をかけるに値するものだと、この頃から考え始めました。EVA中は天文観測は無理で、かなり大きな望遠鏡でなければ見えないでしょう。 19)あの人のこの一言が自分を奮い立たせた、というようなことはありましたか。 一言、というものではありませんが、事業団の職員になる前、宇宙研を修了した後NASAのルイス研究センターにいた時、ここはNASAとの初めての出会いだったわけですが、職場の壁に"Benefit for All Mankind"という標語がかかっていて、その言葉には強い印象を受けました。というのもNASAというのはアメリカの政府機関であるので宇宙開発も国益の為にやっているのかと思っていましたが、人類全体の利益を考えているということを感じたからです。 20)初飛行までの12年間の気持ちを曲線で表すとどうなりますか? 85年、最初宇宙飛行士に決定した時に大きく盛り上がり、86年チャレンジャー事故の時には大きく落ち込みました。その後88年シャトルの再開で盛り上がり、92年の毛利さんのミッションでひとつのピークに達した。その後自分の目標がなくミッションに任命されるまでモヤモヤした状態が続きましたが、本ミッションの任命後訓練に入ってからは大きく上向きとなり、今は飛行士に決定した時以上の、これまでで一番充実した心境にあります。 21)12年を振り返ってみると? 思い返してみると色々ありましたが12年間はあっという間でした。これまでずっと日本の有人宇宙活動分野の先端で仕事をしてこれたことで常にやりがいを感じていましたし、また満足しています。 22)チャレンジャー事故の後やめようと思ったことはありましたか? それはありませんでした。子供の頃からの夢でしたし、大学でもそのためにロケット工学を勉強しました。宇宙に行くことはずっと目標でした。 23)夢を支え続けたものは? 色々ありますが、まず内因的なものとして子供の頃からの興味を持ち続けることが出来たことが大きいです。宇宙に関する仕事をするということに一番興奮を覚えますし、宇宙で何か新しいものを発見したいという気持ちをずっと持ち続けてきました。また外因的なものとしては妻や事業団の関係者の方々等まわりの人たちのサポートに因るところが大きいです。そういう色々な要因で12年間頑張ることが出来ました。 24)12年間待ったことについて。 14歳の中学生の時以来、思いを持ち続けてきました。宇宙への夢を持ち続けることが出来たことが大きかったです。また感じるのは宇宙飛行士といっても色々なバックグラウンドを持つ人がいて、みんな好きなことを一筋にやってきた人ばかり、ということが共通しています。それぞれの分野で最高のレベルに達して、それを宇宙開発の分野で活かそうとしています。また宇宙飛行は危険もありますし、長く待たなくてはいけない仕事なので、自分もそうですが飛行士は楽天的じゃないとやっていけないと思います。 また他の日本人飛行士の飛行は自分にとっても嬉しいことでした。みんなが飛んでいけば自然に自分にも順番は回ってくることにもなります。 次のミッションも頑張りたいですし、国際宇宙ステーションでも頑張りたい。その先には月、火星もあります。宇宙開発はなかなか面白い時代に入ってきていますし、その時代に活動出来るかと思うと待ったかいはありました。 25)火星には興味がありますか? 火星には興味があります。地球に一番近い惑星であるし生命の存在の可能性もあります。また人間が住める可能性もあります。ステップとしては最初は月で宇宙での生活技術を学んで、次に火星ということになるでしょう。 26)宇宙食について教えて下さい。 これまでの飛行ではカレーが一番人気でした。カレーは好きなので今回も持っていく予定です。他にも何かあれば持っていきたいです。
自分のミッションは非常に充実したミッションで、とてもやりがいを感じています。例えばこのパッチでは分かり易くミッションの内容がデザインされていますが、右側に宇宙、真ん中にシャトル、左側には地球が描かれており、全体で見ると宇宙服のヘルメットに地球と宇宙が映っている形になっています。シャトルの位置はまた、宇宙、地球両者の間の橋渡しとしての役割を表しており、宇宙のところの火炎は今回のミッションで行われる太陽風観測のSPARTANの実験内容をイメージしています。また船外活動を日本人として初めて行うことについても責任重大に思っています。 28)今後打上げまでの予定を教えて下さい。 8月の来週から本格的なEVA訓練に入り、9月からはクルー、地上の管制要員等関係者全てが参加するJIS(Joint Integrated Simulation:統合シミュレーション訓練)に参加します。この訓練は9月と10月に全部で5回予定されています。そのため8月後半から訓練はピークを迎えることになります。11月に入るとこれまでの訓練内容のおさらいが中心になり、最後は隔離されて打上げに備え、3日前にNASAケネディ宇宙センターへ行くことになります。 |
Last Updated : 1997.10.24
| プロフィール | インタビュー
| 土井宇宙飛行士の主要任務 |
| 打上げまでの土井宇宙飛行士
| 土井宇宙飛行士へのメッセージ |
| 土井宇宙飛行士のステータスレポート
| 軌道上イベント |
| 土井宇宙飛行士の本日の活動
|