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宇宙実験サクッと解説:細胞は重力を感じるの?編


宇宙実験調査団のピカルがCell Mechanosensing実験を大調査!
実験提案者の曽我部先生とも仲良しの物知りハカセに聞きました。

物知りハカセ

ピカル

ピカル:

ハカセ、若田さんが長期滞在のために宇宙に旅立ちましたね。宇宙では、運動をたくさんして、筋肉の衰えを防ぐって話を聞いたことがあります。

ハカセ:

そうじゃな。宇宙ステーションにいる宇宙飛行士は、1日のうち2時間も運動に費やすんじゃよ。

ピカル:

どうして宇宙では筋肉が弱ってしまうんですか?

ハカセ:

おやおや、ピカルは前に勉強したことを忘れておるのう。ハイブリッドトレーニング実験やらMyo Lab実験の調査に来た時に、「ハカセ、よくわかりました」といっておったような気がするがのう・・・。

ピカル:

育ちざかりなんで、忘れてしまいました!すみません!

ハカセ:

筋肉の場合は鍛えればどんどん強くなるが、使わないとどんどん弱くなるのじゃ。地上では重力があるために意識せずとも体を支えるために、筋肉を使っておるわけじゃな。

ピカル:

なるほど、地上では意識しなくても、ただ立っているだけでも筋肉を使ってるんですね。

ハカセ:

うむ、この宇宙での筋肉量減少は、分子のレベルで考えると、宇宙では筋肉のタンパク質をつくるよりも、タンパク質が壊されるほうが割合として大きくなったということなんじゃ。Myo Lab実験では、宇宙で筋肉が萎縮するメカニズムを確認することができたんじゃよ。

ピカル:

へえ〜!でも、そもそも、筋肉ってどうやってここが宇宙か、地球か、わかるんでしょうか?

ハカセ:

さすがピカル、鋭いところをついてきたのう。われわれ人間は、個体レベルでは、目で見た方向や、耳の中の器官などを使って上下方向を知ることができる。一方、体は約六十兆個の細胞の集まりで、実は、細胞1個1個にも重力がかかっており、細胞自身が重力の有無を感じることができるといわれておる。しかしそれが本当かどうか試した人はおらんのじゃ。

ピカル:

細胞自身が重力を感じる・・・植物の実験でもそんな話があったような気がします。

ハカセ:

Resist Tubule実験じゃな。植物の場合は、細胞膜が重力の有無により、変形するのを「メカノレセプター」で感じる、という話じゃった。曽我部先生は、動物細胞が重力を感じる、より詳しいメカニズムを考えておるわけじゃよ。

ピカル:

ハカセ、もったいぶらないで教えてください。

ハカセ:

うむ、細胞の中には形を変えるワイヤーのようなものが張りめぐらされておって、それが細胞の表面にある膜につながっておる。そのワイヤーに核や、ミトコンドリアといった細胞の中にある、比重の重い小器官が乗っかっておるんじゃな。無重力で、ミトコンドリアが浮いてしまうと、ワイヤーに重さが乗っからなくなるから、ワイヤーが引っ張られなくなって膜が緩むことにつながる。


ピカル:

イメージがわいてきました!

ハカセ:

細胞膜が緩んでおるか、そうではないかによって、膜にあるいろいろな「チャンネル」(細胞膜の内外をつなぐ穴)の働きが変わる、と考えられておる。しかし本当はどうなのか細胞レベルで試した人はおらんのじゃ。

ピカル:

なるほど、それを宇宙で調べるわけですね。

ハカセ:

そうじゃ。細胞の一部を光らせたりして、最新の顕微鏡で細胞の様子を観察する予定じゃ。筋肉細胞などが重力を感じるメカニズムを明らかにする一方で、筋萎縮への対策も確認してみるんじゃよ。Myo Lab実験の結果、筋萎縮に効果があるとわかった薬剤を持っていき、細胞に与えて、宇宙での筋細胞への効果を確かめる予定じゃ。

ピカル:

それで、Myo Lab実験の二川先生も共同研究者になっているんですね。細胞は地上には持って帰るんですか?

ハカセ:

宇宙で観察をするだけでなく、最終的には、細胞に発現している遺伝子を比べるので、遺伝子を保存する薬剤を用いた上で冷凍して回収する予定じゃ。地球に帰還する宇宙船に乗る、小型冷凍庫も用意されているのじゃよ。

ピカル:

どんな結果が出るか、楽しみです!この実験の成果は、宇宙飛行士だけじゃなくて、寝たきりの人の筋肉が弱っていくことを解決するような薬の開発にもつながる研究ですね。ハカセ、ありがとうございました。


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