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サクッと解説シリーズでおなじみの物知りハカセが 宇宙実験のノウハウを徹底解説。
Space Seed実験を語り尽くします!
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その1 【シロイヌナズナ】
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シロイヌナズナが属するアブラナ科にはハクサイ、チンゲンサイ、ダイコン、カブ、キャベツなど、たくさんの野菜がある。 アブラナ科の野菜には、ワサビに代表される辛味成分や、独特の苦味成分が含まれているのが特徴じゃ。
わしゃ、春になると菜の花の炒めものが楽しみでのう。
このほろ苦さはオトナの味じゃから、ピカルのような小僧っこにはまだわからんじゃろうな。
ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。
おっと、話がわき道にそれてしまったわい。
なぜシロイヌナズナを宇宙実験に使うか、その理由は3つある。
ここでもう一度、おさらいしておこうかの。
1.背丈が小さい
ISSの限られたスペースでも栽培できるんじゃ。
2.種が発芽して次の種をつくるまでの一生が短い
水や電力などのリソースが限られておるし、他の実験も目白押しじゃから、できるだけ短期間で実験を行いたいんじゃ。
一生が約2ヶ月のシロイヌナズナはまさに宇宙実験向きじゃな。
3.シロイヌナズナはモデル植物の一つ
すべての遺伝情報にあたるゲノムが解読されているので、遺伝子レベルで微小重力の影響を解明できるんじゃ。
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その2 【受粉】
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そういえばピカルは、ISSには蜂がいない、どうやって受粉するのだろうと心配しておったな。
確かに、蜂が花のなかでゴソゴソ動き回ったり、花から花へ飛び回ることで、受粉が促進される。
しかし、蜂やヒトの手助けが必要なのは他家受粉(自分の花の雌しべに他の花の花粉がつくこと)の場合であって、シロイヌナズナのように自家受粉(自分の花の雌しべに自分の花の花粉がつくこと)をする植物には必ずしも必要ないのじゃ。
シロイヌナズナの場合は、花が開く前に雄しべと雌しべが触れ合って自家受粉を行う。
放っておいても受粉するから、できるだけ余計な手間を省きたい宇宙実験には好都合なんじゃ。
シロイヌナズナの花の拡大図
(提供:奈良先端科学技術大学院 橋本隆教授)
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その3 【植物実験ユニット(PEU:Plant Experiment Unit)】
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きぼうに取り付けられた植物実験ユニットは、給水、照明、温度と湿度の管理、成長の観察など、すべて自動的に行われる。
多忙なスケジュールをこなしている宇宙飛行士の手を煩わせることなく、長期間の実験が行えるよう、関係者が工夫に工夫を重ねてようやく開発したハイテク機器なんじゃ。
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● 給水
ピカルはジョウロで水をやると思っていたようじゃが、もちろんそんなことはできんぞ。
微小重力では水玉があっちこっちに飛び散って、大変なことになるからのう。
そうならないよう、ポンプを使って、ロックウールの隙間にじわじわ水を染みこませてやるんじゃ。
水は多すぎても少なすぎてもいかんので、植物が水を吸うのにあわせて、うまいこと水を与えることができるよう、常に湿度や水の量をモニターしておる。
● 照明
植物が、太陽光を使って光合成を行い、みずからデンプンをつくりだすことは知っておるかな。
太陽の光は、さまざまな色が混ざり合って白色(透明)に見えるんじゃが、植物が光合成のために使っているのは、そのうち赤色と青色の光なんじゃ。
植物実験ユニットでは、ISSの貴重な電力を無駄にしないために、赤色と青色の発光ダイオード(注)を使って、植物にこれらの光だけを照射しておる。
しかし、観察をする場合は、これらの光だけでは写真(ビデオ)写りが悪くなってしまうので、その時だけ白色の発光ダイオードを使って撮影するんじゃ。
な、まさに宇宙仕様のハイテク機器じゃろ。
(注)発光ダイオード(LED)とは、電流を流すと発光する半導体素子の一種。消費電力が少ないというメリットがある。
● ビデオ
シロイヌナズナの成長の様子は、植物実験ユニットに内蔵されたCCDカメラによって撮影され、地上でリアルタイムで観察できるんじゃ。どんな画像が得られるのか、本当に楽しみじゃなあ。
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文責:
唐原 一郎 (からはら いちろう)
富山大学大学院理工学研究部
准教授
唐原研究室HP
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