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宇宙実験調査団のピカルが植物実験を大調査!
実験提案者の神阪先生とも
仲良しの物知りハカセに聞きました。
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ハカセ
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ピカル
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ピカル: |
こんにちは、ハカセ。
今日はSpace Seed実験の勉強にきました。
宇宙で植物を育てるって聞いたんですけど、どんな実験なんですか。
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ハカセ: |
うむ、簡単に言ってしまうと、高等植物が微小重力の宇宙船内で正常に生活環(ライフサイクル)を回すことができるかどうかを調べるのが目的じゃ。
生活環というのは、ある植物が種子から発芽して、成長して花を咲かせ、また種子をつくる、というサイクルのことじゃな。
宇宙で育った植物を固定して地上に持ち帰り、生活環に対する重力の影響を、遺伝子レベル、形態レベルで分析しようとしているのじゃ。宇宙でできた種も地上に持ち帰って、また育てるらしいので、本当に楽しみな実験だな。
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図1 植物の生活環
(提供:富山大学 神阪盛一郎客員教授)
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ピカル: |
ふ〜ん。
でも、どうして宇宙で実験する必要があるんですか。
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ハカセ: |
そうさのう。
では、逆にピカルに質問じゃ。
人間が長期間宇宙に住むとしたら、何が必要になると思うかね。
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ピカル: |
え〜と、ヒトが生きていくんだから、まず水と食料かな。
それと宇宙には空気がないから、酸素も必要ですよね。
今のところ、国際宇宙ステーション(ISS)には、スペースシャトルや無人補給機で必要な物資を運んでいるみたいだけど、もっと多くのヒトが長い間宇宙に住むことになったらどうなるんだろう。
そんなにたくさんの物資が運べるのかなあ。
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ハカセ: |
その通り。
必要な物資すべてを地球から運ぶわけにはいかんじゃろうな。
そこで何を利用するかというと、植物じゃ。
植物を育てればもちろん食料になる。
それに、植物は炭酸ガスを吸収して酸素を放出するから、環境の維持にも役立って一石二鳥じゃ。
今回のSpace Seed実験には、将来の宇宙での植物栽培にそなえて、基礎データを集めておこうという狙いもあるんじゃ。
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ピカル: |
え〜と、ハカセ、ちょっと待ってください。
さきほど、宇宙で正常に生活環を回せるかどうかを調べるって言ってましたよね。
植物が宇宙にいったら、地上と同じように成長できないかもしれないってことですか。
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ハカセ: |
うむ、ではもう一度ピカルに質問じゃ。
ヒトが宇宙に行ったらどんな影響がでるかな。
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ピカル: |
え〜と、微小重力なので自分の体を支える必要がなくなって、筋肉や骨が衰えるって聞きました。
それをできるだけ防ぐために運動するんですよね。
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図2 スペースシャトル「エンデバー号」のミッドデッキで、 自転車エルゴメータを使い運動をする若田宇宙飛行士
(提供:NASA)
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ハカセ: |
そうじゃ、よく勉強しておるな。
植物の場合もまったく同じじゃ。
植物は筋肉や骨の代わりに細胞壁で体を支えておる。
重力には細胞壁を固く、丈夫にする働きがあるのじゃが、重力がなくなると、逆に細胞壁は柔らかくなってしまう。
まあ、言ってみれば、必要のない機能は退化してしまうということじゃな。
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ピカル: |
へえ〜。
じゃあ、宇宙で野菜をつくったら柔らかくておいしいのかなあ。
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ハカセ: |
その可能性はあるな。
しかし、ISSで食料としてトマトやキュウリを育ててみるわけにはいかんじゃろうな。
なんせスペースも電力も水も限られておるからのう。
Space Seed実験では、シロイヌナズナ(アラビドプシス)を使って、細胞壁に関係する遺伝子の働きや、細胞壁の強度、形態の変化などを調べようとしているのじゃ。
シロイヌナズナは、よく田んぼのあぜ道や道端に生えているぺんぺん草(アブラナ科のナズナ)の仲間じゃよ。
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図3 シロイヌナズナ(アラビドプシス)
(提供:岡山大学資源生物科学研究所 坂本亘教授)
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ピカル: |
え〜、ぺんぺん草?!
なんだかハイテクの宇宙実験と結びつかないなあ。
どうして、そのシロイヌナズナを使うんですか。
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ハカセ: |
まず背丈が小さいこと。
そして、種が発芽してから次の種をつくるまでの一生が約2ヶ月と短いので、宇宙実験にはもってこいじゃ。
さらにシロイヌナズナは、すべての遺伝情報にあたるゲノムが、植物ではじめて2000年に解読されておる。
これまでに多くの植物実験に使われてきて、研究成果もたくさん蓄積されておるから、宇宙実験の成果を最大限に活用できるはずじゃ。
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ピカル: |
なるほど、ちゃんとした理由があって選ばれているんですね。
ところで、シロイヌナズナの種は土にまくんですか。
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ハカセ: |
微小重力では、土のような細かい粒状のものはうまくまとめるのが大変じゃ。
そこで、土の代わりに、最初から固まりになっているロックウールというものを使う。
ロックウールは園芸店などで手に入るんじゃが、野菜や果物のハウス栽培のほか、住宅の屋根の断熱材にも利用されておる。
それで、種まきの方法じゃが、シロイヌナズナの種はゴマ粒より小さい(0.3 X 0.2 mmくらいのだ円形)ので、ピンセットを使って、水に溶かしたアラビアゴム(のり)を種につけて、一つ一つロックウールにくっつけていくんじゃ。
こうすることで、スペースシャトルの打上時に衝撃を受けても、種が外れないようにしておる。
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ピカル: |
いろいろ工夫しているんですね。
それで、宇宙にあがったらどうやって育てるんですか。
電気スタンドで光をあてて、宇宙飛行士が水やりをするんですか。
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ハカセ: |
ノンノン、もっとハイテクじゃよ。 日本が開発した植物実験ユニットは、まいた種をセットしてISSに打上げ、スイッチを入れると、自動的に給水を開始し、温度と湿度の調節、さらに光のコントロールもして、地上から成長の様子をビデオ画像で見られるという優れものじゃ。
言ってみれば、高度な科学技術を結集した植物工場のようなものじゃな。
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ピカル: |
そういえば、微小重力状態では、植物の茎があっちこっち勝手な方向に伸びるって聞いたんですけど、本当ですか?
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図4 STS95ミッションで育てたシロイヌナズナ(アラビドプシス)
上:地上対照実験、下:微小重力実験
(提供:大阪市立大学大学院 保尊隆享教授)
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ハカセ: |
ほう、よう知っておるのう。
それは、茎が重力の反対方向に向かうという性質のためじゃ。
重力がなければ、植物は茎をどの方向に伸ばせばよいのかわからなくなってしまうからな。
ただし、植物の茎にはほかにも、光の方向に向かうという性質(正の光屈性)があるから、たとえ微小重力でも光があれば、茎はその方向に向かって伸びていくんじゃよ。
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ピカル: |
へえ〜、そうなんですか。
自然の摂理ってすごいですね。
ハカセ、最後の質問ですが、微小重力で植物の生活環を調べたら、どんなことがわかりそうですか。
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ハカセ: |
さっきも言ったように、植物は、重力に負けない丈夫な体をつくるために、一つ一つの細胞の周りに細胞壁をもっておる。
そしてそのために、大変なエネルギーを消費しておる。
さらに、樹木のように大きいものは、その巨大な体を支えるために、細胞壁にリグニンという物質もしっかり蓄えねばならん。
一方、微小重力状態では丈夫な細胞壁をつくる必要がなくなるので、膨大なエネルギーが余ることになる。
さてさて、その余ったエネルギーは一体どうなるんじゃろうな。
実験してみないとわからんが、もしかすると、これまでにない特徴をもったよい種がたくさん採れるかもしれん。
とにかく、微小重力状態で植物の生活環を調べるなんてことはISSでないとできんからの、とても楽しみにしちょるんじゃ。
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ピカル: |
本当に面白い成果が期待できそうですね。
いつの日か、宇宙でできたおいしいトマトやキュウリが食べられるのかなあ。
ハカセ、今日はどうもありがとうございました。
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文責:
唐原 一郎 (からはら いちろう)
富山大学大学院理工学研究部
准教授
唐原研究室HP
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