早速ですが、マランゴニ実験の代表研究者が河村先生から西野先生に変更されたんですね。
「河村先生は東京理科大から諏訪東京理科大学に移られ、学生を率いて実験を遂行するのが難しくなりましたので、以前から一緒に研究をさせて頂いていた私が代表研究者を引き継ぐことになりました。
私は熱流体計測が専門ですので、今後は自分の専門をフルに活かして、MEIS実験をさらに発展させていきたいと思っています」
MEIS(Marangoni Experiment in Space)には1から5まで5つのシリーズがあって、MEIS-1は2008年10月に終了、2009年7月からMEIS-2が始まるとのことですが。
「MEIS-1では、地上では到底考えられないような、大きな液柱を作ることに成功しました。
地上ではせいぜい鉛筆の先くらいの大きさですが、宇宙では海苔巻きとかプリンくらいの液柱がいとも簡単にできてしまう。
私たちは、液柱内部の流れがどういう条件で振動流に遷移するのか(注)を調べようとしているんですが、MEIS-1で得た知見から、どうやら液柱の大きさにはよらず、ある一定の規則に則って遷移するらしいということがわかりました。
MEIS-2から5までの実験で、液柱の粘性や高さなど、様々に条件を変えながら、その規則についてさらに踏み込んでいきたいと思っています」
注:液柱の両端に温度差を与え、それを徐々に大きくしていくと、最初の安定した流れ(定常流)は振動流という周期的に変化する流れに変わり、さらにはカオスと呼ばれる状態になり、最後には乱流という完全に乱れた状態になってしまいます(詳しくはこちら)。
実際にそんなに大きな液柱をご覧になっていかがでしたか。
「必ず成功する、という信念をもって実験装置を作りあげてきたわけですから、うまくいって当然といえば当然なんですが、さすがに長さ60mmの液柱を見た時には、よくもまあ、こんなすごいものができたものだと(笑)。
設計上の配慮がすべて正常に働いて、地上からの指令に従って、400キロ上空の宇宙空間で液柱が形成されたわけですから。
なんというかもう、感無量で言葉になりませんでしたね」
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