雪の結晶の美しさ、自然の不思議さに魅了され、氷結晶成長研究の世界へ。
まず、氷の結晶研究を始めたきっかけをお聞かせください。
「私が所属する北大の低温科学研究所は、長年にわたって雪や氷の研究をしています。
私も、ここで最初に雪の結晶観察を行いました。
雪の結晶というのは、写真でご覧になったこともあるかと思いますが、とてもきれいですよね。
あんなに精巧で対称が整ったものが、どうして自然界でできるんだろうかって、不思議に思いませんか。
まさに、その疑問を解決したいと思ったのが、この研究を始めたきっかけです」
尊敬する人は、雪の研究者として有名な故中谷宇吉郎先生だそうですね。
「北大の中谷先生は『雪は天からの手紙である』という言葉を遺しています。 雪の結晶を地上で観察すると、雲の中の気象条件が推定できる、という意味ですが、これはまさに結晶成長の本質を突いた言葉だと思います。
結晶というのはあるかたちを持っている。 ある条件で結晶が成長して、その結果としてかたちができる訳ですから、そのかたちは、結晶が生まれてから一定の大きさになるまでのすべての履歴を持っているはずなんです。
雪だけでなく、我々の周りにある結晶すべてに対して、そういった隠された情報を読み取っていくことが非常に重要である、というメッセージが込められているように思います。
中谷先生は、結晶成長という概念が充分に確立する以前に、すでに事の本質を見極めておられたといえます」
中谷先生が生きておられたら、宇宙実験をされたでしょうか。
「多分そうされたでしょうね。
当時、雪は、研究対象としてはほとんど取り上げられていなかったので、先生の始められた研究はとてもチャレンジングなことでした。
宇宙実験というのも、ひとつのとても大きなチャレンジですので、中谷先生がおられたら、真っ先に手を挙げて実験をされたのではないでしょうか」
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