1998年10月末から11月頭にかけてスペースシャトル(STS-95ミッション)で飛行した向井千秋宇宙飛行士は、宇宙でキュウリの種を使った、高橋秀幸先生が提案した実験を行いました。
キュウリの芽生えを観察するのがその実験の目的でした。
ところが実験中、本来の目的以外にもある興味深い事実が観察されたのです(図1)。
キュウリの種からは宇宙でも芽と根が出てきました。
それぞれが最初に出る方向は、宇宙であろうが地上であろうがあらかじめ決まっています。
しばらくすると、最初の主根(しゅこん)からさらに側根(そっこん)と呼ばれる根が出てきました。
地上では横方向に伸びるこの側根たちが、実験の途中から、それまで伸びていた方向でなく、水分のある方向に伸びるようになったのです(図2)。
地上では、根は主に重力によって伸びる方向を決めていると考えられています。
ところが、微小重力のスペースシャトルで、根が水の多い方向に伸びたと言うことは、重力によって地上では見えにくくなっていたことが、宇宙ではよくわかるということでしょうか?
これを確かめることは地上ではできません。
なぜなら地上では重力が強くはたらいていて、重力の影響を完全に取り去ることができないからです。
そこで微小重力の宇宙ステーションで、水分と根の関係を調べてみることにしました。
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図2 宇宙と地上での根の伸び方
a、bは地上で観察した側根の伸び方。 cは宇宙(STS-95ミッション)で水分の多い方に伸びた側根。
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