木下先生の子ども時代について教えてください。
「私は神戸の近く、といっても都会ではなく、六甲山の裏の自然豊かな場所で育ちました。
大都市が近いわりに、空気はとてもきれいでしたね。
よく満点の星って言いますけど、空一面に砂を撒き散らしたかのように星が輝いていて、天の川もそれはきれいに見えましたよ。
近くには川もありましたから、小学校の頃は、学校から帰ってきたらすぐさまランドセルを放り出して、魚釣りに行くのが日課でした。
フナとかハヤとかコイとか、いろんな魚が釣れましたよ。
釣った魚は大抵逃がしましたが、ウナギだけは食卓にのぼりましたね」
勉強はお好きでしたか。
「まあ、嫌いではないけど、ガリ勉とか秀才というわけでもなかったですね。
授業中はちゃんと先生の話を聞いていたし、夏休みの宿題なども真面目にやりましたが、放課後はとにかく暗くなるまで外で遊んでいましたから。
ただ、理科は大好きでしたよ。
中学生の時は理科クラブに入って、模型飛行機を作ったり化合物の実験をしていました。
物が変化するのを見るのは楽しくて、ワクワクしながら実験をした思い出があります」
理科を好きになったきっかけは。
「学校の授業でというより、遊びのなかから興味をもったのかもしれません。
たとえば、川面に対して平行に石を投げると、平らな石だったらポンポンポンと水面をバウンドしながら飛んでいきますよね。
ところが、丸い石でも上手に投げると、やっぱりポンポンポンと跳ねるんです。
丸いと、水面と接する面積は小さいはずなのに、なぜ沈まないんだろうと考えたりして。
それから、小学校までは2キロほどの道を歩いて通ったんですが、その途中にちょうど手頃な岩場がありましてね、毎日のように登って遊んでいました。
登る時は、どこに体重をかけたらうまく登れるかとか、自然と頭の中で計算していた気がします。
当時は、もちろん力学とか難しいことは何もわからなかったんですが、知らず知らずのうちに、自然科学的な考えを身につけていったんでしょうね」
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